心理的な安心を育てる 静かな職場に、やさしい言葉を灯すとき “だいじょうぶ”という空気が、挑戦を支える。
心理的な安心を育てる
安心して話せる職場をつくるには
あたたかいまなざしが、本音を引き出す。
はじめに
仕事をしていると、誰かと話すたびに
「これを言ったらどう思われるかな」
「余計なことだったかもしれない」
と、心の中で小さくため息をつくことがあるかもしれません。
人と関わることは、喜びでもあり、少し勇気のいることでもあります。
特に職場という場所では、立場や責任、空気の読み方など、
“安心して話す”ためのハードルがいくつもあるものです。
でも本当は、安心して話せる職場こそが、人が本来の力を発揮できる場所です。
失敗を恐れず、意見を出し合い、「ここにいても大丈夫」と感じられる場所。
そこに流れているのは、“あたたかいまなざし”という、目に見えない安心の光です。
今日は、その光をどうやって育てていけるのかを、
ゆっくり、やさしく見つめてみたいと思います。
「心理的な安心」がある職場は、なぜ強いのか
人は誰でも、「安全である」と感じたときに力を発揮します。
これは子どもでも大人でも同じです。
心理的な安心(Psychological Safety)とは、
「この職場では、自分の意見を言っても責められない」
「わからないことを聞いても、恥ずかしくない」
と感じられる状態のこと。
安心のある職場では、
・ミスが早く共有される
・新しい提案が出やすくなる
・人間関係が柔らかくなる
反対に、安心のない職場では、
「波風を立てないように」とお互いが黙り込み、
小さな誤解が積み重なっていきます。
安心とは、優しさと信頼でできた“土壌”のようなもの。
その上でこそ、人はのびのびと育つことができるのです。
1. あたたかいまなざしで「聴く」
誰もが安心して話せる空気を育てるために、まず大切なのは“話を聴く姿勢”です。
人は、「話を聴いてもらえた」と感じたときに、心がふっとほどけます。
相手の話を途中で遮らず、評価せず、ただ“その人の気持ち”に耳を澄ませる。
「そう感じたんですね」
「そう思うようになったのには、何か理由があったのかな」
そんな言葉があるだけで、相手の中の緊張がほどけていきます。
“聴く”とは、相手の世界に少し入ってみること。
そこには、批判ではなく、あたたかい好奇心があります。
2. 「小さなねぎらい」が人を安心させる
職場の中で、ねぎらいの言葉が少なくなると、人の心は少しずつ乾いていきます。
・「ありがとう」
・「助かりました」
・「無理しすぎてない?」
そんな一言があるだけで、人は「自分は見てもらえている」と感じます。
ねぎらいとは、相手の努力や存在を“見つけること”。
それは評価とは違い、もっと深く人の心に届きます。
誰かに優しい言葉をかけるとき、実は自分の心もやわらかくなります。
安心のある職場は、「与える」と「受け取る」が自然に循環している場所です。
3. 「間違えてもいい」という空気が挑戦を支える
失敗を恐れる空気の中では、人は自分を守ることにエネルギーを使ってしまいます。
でも、失敗を責めない職場では、人はのびのびと挑戦できます。
上司が「失敗から何を学べるかな」と声をかけるだけで、部下の表情は変わります。
間違いを共有できるチームは、強いチームです。
安心とは、ミスを減らすことではなく、ミスを受けとめて次に活かせる関係を育てること。
「だいじょうぶ、一緒に考えよう」
この言葉は、人を立ち上がらせる力を持っています。
4. 沈黙も、信頼のしるし
安心のある職場には、“静かな時間”があります。
言葉がないときも、「この沈黙は不安ではなく、安心の証」だと思えたら、関係は深まります。
焦って言葉を埋めようとせず、相手が考える時間を尊重する。
その余白の中に、信頼が息づいていきます。
安心とは、 “何かを言うこと”よりも、 “言わなくても受け入れられること”。
沈黙を恐れない職場には、おだやかな信頼が流れています。
5. 安心は、誰かひとりの仕事ではなく、みんなで育てるもの
心理的な安心は、上司や経営者だけの責任ではありません。
誰かひとりの言葉が、場の空気を変えることもあります。
・「どう思う?」と尋ねる
・「それも一つの考えですね」と受けとめる
・「大丈夫、やってみよう」と励ます
その一言が、「ここでは安心して話していいんだ」と感じさせます。
やさしい言葉が広がると、人はお互いを支え合うようになります。
それが、安心の連鎖です。
よくある心のQ&A
Q1. 職場で本音を言うのが怖いです。
怖いと感じるのは、あなたがまわりとの関係を大切にしている証拠です。
無理に本音を出そうとせず、まずは「小さな一言」から始めましょう。
“相談の形”にするだけで伝わりやすくなります。
Q2. 上司が怖くて何も言えません。
恐れの裏には、“信頼されたい”という思いがあります。
内容を整理してから、落ち着いたタイミングで伝えること。
「今お時間よろしいですか?」と一言添えるだけで、受け取る側の姿勢も変わります。
Q3. 意見を言うと否定されて、心が折れてしまいます。
否定された痛みは、あなたが真剣に関わっている証です。
相手の反応を“自分の価値への否定”と結びつけないことが大切です。
「これは考え方の違い」と区切ってみることで、心を守ることができます。
Q4. チームの雰囲気が重く、会話が減っています。
空気は“誰か”のせいではなく、関係の流れの中で生まれるものです。
まずは、明るい声で挨拶をしてみましょう。
たったそれだけでも、場の温度は少し上がります。
Q5. 安心できる職場をつくるために、今できることは?
難しいことは何もありません。
今日から始められるのは、“見守ること”。
相手の変化に気づいたら、「最近どう?」と声をかけてみましょう。
そのさりげない一言が、人の心を支えることがあります。
おわりに 〜安心は、あなたのまなざしから始まる〜
職場で安心して話せるということは、
「自分の存在が受け入れられている」と感じられること。
それは人が自分らしく働けるための、いちばんの土台です。
安心のある職場では、人が笑い、失敗を共有し、
お互いの強みを自然に生かし合えるようになります。
けれど、人間関係はいつも少しずつ揺れ動くもの。
ときに心が疲れたり、どうしてもうまくいかない時期もあるでしょう。
そんなときは、ひとりで抱え込まず、少し立ち止まって、自分の心をいたわってください。
「なぜこんなに苦しいのか」
「どうしたらもう少し楽になれるのか」
その気持ちを整理するお手伝いを、カウンセリングの場でご一緒することができます。
心を静かに整える時間は、人と向き合う力をもう一度取り戻す時間でもあります。
もし今、職場での人間関係に疲れていたり、「話を聴いてもらいたい」と感じている方は、
どうぞAmazing Graceにご相談ください。
安心できる空間で、あなたの気持ちをていねいにほどきながら、
これからの関係づくりを一緒に見つけていきましょう。
Amazing Grace 内田梓
やさしく整えるカウンセリングで、心が呼吸を取り戻すお手伝いをしています。



