天龍寺
由比の林香寺にある立木観音。
このままでは観音さんが埋もれてしまうということで窓を大きくさせていただきました。
生木に彫刻されている観音様の窓を大きくするということは、生木にノミを入れるということで、始める前にはお祓いをしようねと大工さんと話していた。
朝私がまわりの草をとりあえず払ってしまおうと、エンジン付きの刈り払機で草刈りを始めた。
その間大工さんは足場を運んだりの段取り。
私が草刈をはじめて早々に刈り払機が振動しはじめ、それはだんだん激しくなった。
危険を感じて私はあわててエンジンを止めた。
エンジンが止まったら狩り払機の先端で回転していた刃がポロリと外れた。
どうしたんだ。何があったんだ。こんなことは初めてだ。刃を止めているナットは逆ねじで回転によって締め付けられるようになっている。外れるなんて考えられない。
こころがざわついた。しょっぱなこんなことが起こるなんて。
私は努めて冷静に何でもないように大工さんに言った。「ちょっと鎌取ってくるよ。お祓いの支度もしないとね。」
私はセブンイレブンに直行した。八海山の四合瓶を買って車に乗って出ようとして、ふと思った。
まてよ。四合瓶だなんてケチったことをして後で後悔したくないなと。
やっぱり酒は一升でなきゃ。エンジンを切り車から降り私は今度は正雪の一升瓶を改めて買った。八海山の四合瓶は返品しなかった。後で飲もうと思ったから。
塩と洗米と一升瓶をもって私は現場に戻った。
大工さんは足場を組んでいた。私はもう一度改めてまわりの草を刈り、きれいにしてから、足場の上に塩と洗米とお神酒を飾り大工さんと二人でお祓いをした。
「少々痛いかもしれませんが観音様が顔を出せるようにしたいのです無事に作業させてください。」
本当に神妙に祈った。心から。
そして何事も起こらずに作業は終了したのでした。