街道筋の家 内観
こんぴら狗の事。
江戸時代。。日本橋から四国の金毘羅さんへ、人間の代わりに犬にお参りに行ってもらうという風習があったそうな。
犬は首にこんぴら参りと書いた木札と初穂料と餌代が入ったきんちゃく袋をぶら下げて、上方に向かう旅人に託されてこんぴら参りにでかける。
見知らぬ旅人から旅人に託されて、金毘羅さんに参る犬だとそれは大切にされたそうな。
中には悪い人もいたでしょうが、きんちゃく袋に手をつける人はまれだったとか。
金毘羅さんに着くと、金毘羅さんのお坊さんはきんちゃく袋から初穂料と願い事の書き物を取り出し、代わりに金毘羅さんのお札をきんちゃく袋に入れてくれる。
代参を済ませたこんぴら犬は、今度は江戸を目指す。
こんぴら帰りの犬はやっぱり旅人に大切にされて、旅人から旅人に託されてひたすら江戸へ江戸へ。
江戸にはこんぴら犬の帰りを今か今かと待ちわびる飼い主が、毎日西の空を眺めては愛犬に思いを馳せている。
無事にこんぴら参りを済ませて、ありがたいお札を首にぶら下げたこんぴら犬の愛犬が返ってきたときの喜びと驚きはいかばかりだったろう。
数年前に新聞記事になったこんぴら犬の存在を私も覚えていました。
新聞記事を前にして、当時小学生だった二人の子供たちにこんぴら犬の話をしてあげた。
すると「うちのポンちゃんは行けるかなあ」と遠い目をして言う。
彼らの頭の中に、きんちゃく袋と木札をつけたうちのポンちゃんが、江戸時代の旅人に連れられて旅に出る姿が浮かんでいるのが見えるようでした。
実際に存在していたこんぴら犬。江戸時代というのは、本当に文化の成熟していた時代だったんだとあらためて思う。
そしてこの本を読んで、私も「うちのアイちゃんはいけるかなあ」と遠い目になるのです。