マウスカーソルが勝手に動く!飛ぶ!マウスやタッチパッドで起きるトラブル、その原因と解決方法
先日、取引先の会社の方から相談の電話があったときのことです。パソコンの画面がおかしくなったという相談です。事情をうかがうと、タブレットを使っていたらいきなりけたたましい警告音とウイルス感染の表示が出てきたそうです。そこでまず、タブレットを契約している携帯ショップに電話をかけたとのこと。それは手順としては正解です。電話に出た担当者に現状を知らせたところ、「すぐには対応できないので、来店スケジュールを予約してほしい、急ぎの場合は遠隔サポートへ電話してください」と言われたそうです。
そのため、タブレット画面に表示してある電話番号へ電話をしたところマイクロソフトのジェームズと名乗るたどたどしい日本語の人物が、「解決のためにはパソコンを操作する必要がある」と言って、パソコンを起動させてその通りに従ってしまったそうです。タブレットが問題なのになぜパソコンが関係あるのかと一瞬思ったそうですが20~30分もの間遠隔操作をされてしまい、その直後にパソコンのアイコンなどがすべて消えておかしくなったということでした。パソコンには顧客データや個人情報などが入っていてすべて消えてしまったとのこと。また、遠隔サポートの人物からサポート料金として6万円払えと言われたそうです。これはおかしいということで、相談が寄せられたという経緯です。
とりあえず、Windowsの復元機能で元の状態に戻すように操作してもらったところ無事元通りに回復し、事なきを得ました。今回のことを一通り経緯をうかがいましたが、疑問に思ったのが携帯ショップの担当者がサポート詐欺の画面に出ている連絡先へ電話を促したことです。たとえ、窓口の人が対応に不得手な人といっても、今業界でも大問題になっているサポート詐欺の内容や実態を知らないはずはありません。そこへ連絡しろと言ったというのですからこれは大問題です。そこで、対応した携帯ショップを聞き出し、直接私がその担当者に電話してその経緯を聞いてみました。すると、「すぐには対応できないので、来店スケジュールを3時に予約受付しました、どうしても急ぎの場合は携帯キャリアの遠隔サポート○○番へ電話してください」といったとのこと。
それを聞いて原因がわかりました。要するに、焦っているユーザーは、会話内容全部を把握できず、「遠隔サポートへ電話で連絡してください」と受け取ってしまったためにタブレットの表示画面にある電話番号に連絡すればいいと思い込んでしまったようなのです。ですから携帯ショップの担当者がサポート詐欺の連絡先へ電話しろといったわけではないことがわかりました。
タブレットに出てきた警告表示は、例のサポート詐欺であることは間違いありません。とりあえず契約している携帯ショップに相談したというところまではユーザーには何ら落ち度はありません。しかし、問題はここからで、携帯ショップの担当者はトラブル内容を聞いた時点でどのような状況になっているかを把握し、その画面内容にアクセスしないように促すなどの助言をする必要があったはずです。私なら真っ先にそうしています。しかし、担当者はマニュアル通りか配慮が不足していた、もしくは事務的な対応をしたために相手に伝わらなかったと思われるのです。確かに錯誤してしまったユーザーにも原因はありますが、担当者は不安に陥っているユーザーに寄り添った対応でなかった可能性があります。言葉や適切な対応が足りなかったために、結局は被害が出てしまいました。
その結果として会社のデータや個人情報が漏洩した可能性もあり、起きたことは重大インシデントに相当します。問題はかなり深刻です。再度、携帯ショップに電話をして今度は店長にお話を伺うことにしました。ことの経緯を説明して起きたことの結果が重大だったことを説明しました。店長は担当者の対応が良くなかったのは確かだと理解をしていただけました。今後、同様のことが起きないようにショップ全体で情報共有をお願いしておきました。
大きい警告音がしてウイルス侵入の表示が画面いっぱいに出てきたら、人によっては冷静な判断が難しいこともあるでしょう。そのようなパニックのような状況下にある人かもしれないと想定できないサービス業なら、それはもう既にサービス業ではありません。最近はモンスタークレーマーの話題が非常に多く取り上げられていますが、クレームを言う人全部がそうとは限らないと思います。「お客様とは対等の関係だ」という最近の風潮が行き過ぎているせいではないかとも思います。サービス業の側が本来の「サービス」という本質を忘れてしまっていては携帯ショップ自体がAIに置き換わる日もすぐにやってくるでしょう。
人の立場や気持ちになって考えることができなくなれば、今回のようなトラブルはなくならないどころかますます増えていくでしょう。値上げや増税が続き人のことなどかまっていられないという風潮の世知辛い世の中になりました。社会にも自己責任論や自然淘汰論が台頭してきて不穏な空気が漂い始めました。だからこそ、人に寄り添うサポートはこれから先もっと必要とされるようになっていくでしょう。