パソコンの電源ボタンの正しい入れ方、押し方でスイッチON時のトラブルを回避しよう

古賀竜一

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テーマ:知って得するITノウハウ


普段パソコンを使用する際、誰でもまず電源ボタンを押すことから始めますよね。スイッチを入れるだけの簡単な操作なので何気なく押していると思います。ですが正しい手順や操作法があることをご存じでしょうか? ただ押すだけでしょ?そんなの本当にあるの?と思うかもしれませんが実はそんな何気ない操作にもちゃんとした「入れ方」があるのです。

最近、誤った電源スイッチの入れ方でトラブルになっているサポート事例が非常に多くなっています。例えば、電源ボタンを押しても起動しないとか、反応がないなどの相談です。そこで今回は、ただ押すだけのボタン操作でもトラブルになってしまう原因と、正しい電源スイッチの入れ方について述べてみたいと思います。



電源をつないですぐに電源ボタンを押すのはNG!

デスクトップパソコンに限らずノート型などパソコン全般に言えることですが、普段から使用後にコンセントやACアダプタのコネクタを抜いたり、テーブルタップのスイッチをOFFにするなど元から電源を切っているユーザーも多いと思います。

再度使う際には毎回ACアダプタをコンセントに挿したり電源コネクタをパソコンにつなぐ、またはテーブルタップのスイッチをONにしてから電源スイッチを入れていると思います。ところが、機器へ電源をつないだり投入した後に電源ボタンを押すタイミングがあまりにも早い場合、起動にトラブルが起きる可能性があります。

電源をつないですぐに電源ボタンを押したくなるのは理解できますが、実はこれは避けるべき操作なのです。その理由は、電源が元から切れて通電されていない状態の機器に電気を流した直後は、電源回路や電子回路の動作がすぐには安定しないからです。安定していない電源供給の下でパソコンのデバイスや電子回路が駆動しようとすると誤動作やエラーが発生する可能性が高まります。

本当にそんなことがあるの?と思うかもしれません。普段家電製品を使っていてそのような必要性を特に感じたことはないと思います。なのでそう思われても仕方がありません。しかし、パソコンなどの精密電子機器は家電製品のようなわけにはいかないのです。

それには以下のようなちゃんとしたテクニカルな理由があります。

すぐには安定稼働しない電源装置の問題

コンセントにつないだりテーブルタップをONにしたりしてパソコンに電源を投入すると、まずACアダプタや電源装置の基板、回路のコンデンサー(キャパシタ)、コイルなどへ電気が供給されます。これらの部品は電流を貯めたり安定させる役割をします。電源をつないだ直後ではこれらの部品はまだ安定性が不十分で、性能や機能が十分に発揮できる状態にありません。

ノートパソコンの電源のACアダプタも同様で、安定するまでにわずかですが時間がかかります。バッテリーの充電も同時に始まりますのでその際の制御も関係します。特に、長期間放置していたノートパソコンはバッテリーが完全に放電され、電源投入後のPOSTでバッテリーエラーとして検出されてしまうことがあります。そうなると「ロックしています」という表示が出てパソコンはそのまま終了してしまうことがあります。

長期間使用していなかったノートパソコンは、電源につないでいきなりスイッチを入れるような操作はトラブルのもとになります。あらかじめACアダプタをつないでしばらくバッテリーに充電してから電源を入れるようにした方が良いでしょう。

高性能なデスクトップパソコンになると電源ユニットの容量も大きくそれだけコンデンサの容量も大きいので、電源として安定した出力になるまでには数秒~1分程度かかると言われています。



まだ電源装置が安定していない状態でスイッチを入れるとパソコン内部のデバイスや回路にも安定した電源が供給されないため、誤作動を起こす原因になります。ですから、電源のスイッチボタン操作はすぐに行わず、安定するまでの時間的余裕(10~60秒程度)をもって操作すると起動トラブルを可能な限り回避できます。

特にゲーミングマシンやビデオ編集用の高性能パソコンはグラボなどへ大容量の電源供給を行う必要があるため、電源をコンセントにつないで通電後、数分間は電源ボタンを押さないようにした方が良いでしょう。


※デスクトップPCの高性能電源ユニット

特に古くなった機器ほど安定稼働になるまでの時間が長くなる

古いパソコンの電源ユニットは電解コンデンサが劣化している場合があります。電解コンデンサはパソコンを使用してなくても経年で劣化を起こす性質があります。劣化すると容量が少なくなったりESR(等価直列抵抗)が増加します。コンデンサの劣化によって電源の機能や容量が低下したり不安定になったりするため、回路が安定動作するまでの時間が長くかかるようになります。また、長期間電源を入れていない古めのパソコンも電源以外の各所の劣化による遅延が合わさり、電源投入後の安定稼働に時間がかかります。

ですから、特にパソコンが古い場合は使う前にあらかじめコンセントから電源をつないでおくことが推奨されます。また、放置していた古いノートパソコンはバッテリーも放電してしまっているため電源をつないでしばらくは電源ボタンを押さないようにしましょう。電源が入りにくいと感じるようになってきたパソコンは電源ユニットやACアダプタを新品に交換するだけでも症状が改善したりトラブル回避策にもなります。

電源ボタンを何度も続けて押すのはトラブルの元

パソコンの電源ボタンを押しても反応がない場合、おかしいと思って何度も続けて押したりしたことはありませんか?一発で起動しないとついイラついてスイッチのボタンを連打したくなるかもしれません。しかし、これは最も避けるべき行為です。なぜなら、その行為は深刻なトラブルを招いてしまうことがあるからです。


※ノートパソコンの電源ボタン

パソコンの電源スイッチを入れた直後、内部では様々なことが行われます。いきなりWindowsなどのOSが起動するわけではありません。OSが起動する前に以下のようなステップを踏みます。まずマザーボードのBIOSが起動しハードウェアの自己診断(POST)が行われます。UEFI_BIOSなどのファームウェアを読み込み、次にブートデバイスの選択、ブートローダーの読み込みなどのステップが順番に実行されます。各ステップが成功すると、最終的にオペレーティングシステムがロードされ起動し使用できるようになります。

このように起動には様々なプロセスが関係しているので、時には何らかの要因で画面がいつも通りに出てこなかったり起動に時間がかかることがあります。そういう場合「あれ?おかしい」と早合点して再度電源ボタンを押してしまう人がいます。そうすると画面には出ていなくても既に起動プロセスに入っていた状態が途中でキャンセルされたり強制停止されます。また、連打すると「起動ー停止」を繰り返すことになりそれがループ状態になってしまうことになります。

その結果HDDやSSDのブートにまで問題が起きるようになって事態をより悪化させてしまうことがあります。電源スイッチボタンを何度も押せばそのうち起動するだろうという考えは全く効き目がないばかりか、より事態を悪くしてしまいます。いったん冷静になってもう一度、元の電源を入れなおした上で一呼吸置いてから電源のスイッチ操作を連打することなく行うようにしましょう。

また、電源ボタンを長く押せば命令が行きやすくなって反応するのではないか?という勘違いもあります。電源ボタンを押しても起動しないというトラブル相談のサポート事例で、一度押したけれども起動しないのでずっと長押しをしていたという実例が実際にあります。電源ボタンの長押しは起動の問題が解決しないどころか、強制終了など別の機能が働くため永遠に起動しません。

電源ボタン長押しの機能的なものとしては、強制終了のほかに帯電で起動しなくなったパソコンを自己放電させて回復させることができますが、これにも手順があります。どうしても起動できなくなった場合は専門家に相談することがベストです。

電源ボタンを強く押すことは逆効果

電源ボタンを連打することで弊害が出ると言いましたが、それと同時に電源ボタンを強く押す人もいます。これも避けるべき行為です。強く押すことで電源ボタンの下にあるスイッチ機構が変形したり壊れたりして起動しなくなる原因となります。パソコンなどの電子機器類は、コネクタなどインターフェース類の物理的な耐久性が乏しい傾向にあります。例えばSDカードスロットは手荒に扱うと出し入れする機構が壊れたりして機能が失われやすく、USBポートとともに壊れやすいインターフェースの代表格です。


※ノートパソコンの電源ボタン下にあるスイッチ基板。非常に精密で破損しやすい

ある程度の耐久性が求められるノートパソコンのキーボードさえも最近では早期に故障するものが多くなっています。それは小型化や精密さなどの要因のほかに、低価格化による原価削減などの影響で過度な耐久性を持たせないようになっているからです。消耗品として割り切った仕様になっていると言っても良いでしょう。

電源などのスイッチ類についても丈夫に作られてはいないません。強く押すなど無理な操作を行えば奥に引っ込んで出てこなくなるとか、ボタンが外れてしまうなどして壊れてしまうことがあります。ですからイラついたからといって電源ボタンは強引に押し込まず、冷静になって適切な力で軽く押すようにしましょう。人間同士なら強く押せば言うことを聞かせられるという自信がある人でも、こういう場合機械には全く通用しません。

正しい電源スイッチの入れ方とは

では、正しい電源スイッチの入れ方とはどのような操作なのでしょうか?
それには以下の3つを守ることが大切です。

1. 電源をつないだら時間を空けて電源ボタン、スイッチを入れる

コンセントやタップから電源を投入したら、すぐにスイッチボタンを押さずに30秒~数分程度待ってから入れるようにしましょう。これにより、電源回路が安定した上で安全に起動させることができます。特に長い期間使用していなかったパソコンは電源をつないだらすぐに電源ボタンを押さずにしばらく放置(10分以上)して余裕をもって電源を入れましょう。

2. 電源ボタンを押しても反応がない場合は間隔をあけて入れなおす

電源ボタンを押しても画面に何も映らないという場合であっても、パソコンの各種インジケーターランプが点灯していれば既に起動状態に入っているかもしれません。そういう状態になっていたら電源スイッチの操作をしないようにしましょう。しばらくするとそのまま起動することもあります。何度も続けて電源ボタンを押すとループ状態に陥って逆効果になります。もし電源ボタンを押しても反応がない場合、焦らずに少し時間をおいてから再度試してみましょう。

3. 電源ボタンは強く押さず長押しせずに軽く押すようにする

電源ボタンを押すときは、適切な力で押すようにしましょう。過度な力はスイッチの機構に物理的な問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。連打したり強く押す、長押しするなど、普段と違うことをやればどうにかなるかもしれないというのは根拠のない自己流操作です。理屈をわかった上で適切な手順を踏まえて行う必要があります。やはり基本に従って操作することを心がけましょう。

これらのシンプルなステップを守ることで、パソコンの電源投入に関連するトラブルを最小限に抑えることができます。電源ボタンを押すという簡単な事でも以上で説明したような様々なことが関係してくる実は奥の深い問題なのです。

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古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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