PCが突然再起動する!電源が落ちる!熱伝導材の劣化がトラブルの原因だった事例

古賀竜一

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テーマ:ITサポートの事例と実例

グラフィックスボードでのトラブル

●先日のサポート事例です。パソコンが起動している際に突然画面がブラックアウトする・・・というご相談です。

●早速お預かりし診断してみました。診断中に確かにいきなり画面が真っ暗になったりいきなり再起動したりします。

●最初に考えられるのは電源ユニットの故障ですので、電源ユニットチェッカー「Dr・Power2」で確かめましたが異常はでません。どうやら原因は電源ユニットではないようです。

●電源のインジケータランプを見るとPC自体は稼働している様子もあり、とりあえず電源スイッチでシャットダウンさせることもできます。OSは起動しているようです。単に画面が出ていないだけとなると、次に考えられるのがグラフィックス関係です。

グラフィックスボードの挙動をチェック

●このPCにはかなり大きいグラフィックスボードが搭載されています。搭載されているのはnVidia、GeFoece 9800GTの外部電源非供給版です。

●グラフィックスボード、略して「グラボ」は別名ビデオカードとも言われていて、画像処理に特化したデスクトップPC用拡張パーツです。

●通常一般のPCはCPU内部にグラフィックス機能の回路が内蔵されていて、グラボを別途設ける必要はありません。ところが、ゲームや3Dコンテンツ、高精度画像・映像処理などを行う際には内蔵されているグラフィックス性能では間に合わない場合があります。そんな時に、デスクトップPCではグラボを搭載することで必要に応じた処理の強化ができます。

●しかし、グラボは高機能を発揮するために消費電力が大きくその分発熱も多いパーツです。ですから放熱するために大型のヒートシンクファンが搭載されています。その分、ファン関係のトラブルだけでなく酷使による故障が多いパーツでもあります。

ファンが回転せず放熱不良で保護回路が作動

●今度はグラボの状況を注視して再度電源を入れてみました。するとGPU冷却用のクーリングファンがほとんど回転していません。軸受けの潤滑が失われてしまっているようです。ハードウェアモニタを起動しソフト上で確認するとやはりファン回転数はほとんどなく、アイドル状態にもかかわらずGPU温度が100度をはるかに超えています。

●これで原因はほぼ確定です。ファンの回転不良で冷却が間に合わなくなっているためGPUが熱暴走。サーマルセンサによって保護回路が作動し機能が強制的に停止されたため、ブラックアウトの症状が出ていたと思われます。早速、PC本体からグラボを外し、冷却ファンの軸受け清掃と給油を行いました。

GPUの熱伝導材が劣化し機能を失っていた

●グラボをPCに戻して再検証してみると、ファンの回転が正常に戻ったため画面が落ちることはなくなったようです。ところがハードウェアモニタ上では、GPU温度が80度を超えています。通常はこの季節でもアイドル状態では45度から60度以内となるはず。

●このような場合、ファンの回転不良以外にまだどこかに異常があります。冷却が進んでいないということで経験上思いつくのは、GPUとヒートシンク間の熱伝導不足による冷却不良の疑いです。再びGPUをPCから外し、グラボのヒートシンクファンを外してみることにしました。

●案の定、GPUとヒートシンク間の接合部に塗ってある熱伝導材(熱伝導グリス)が劣化し機能を失っていました。普通ならグリスには粘性や弾力性があってGPUとヒートシンクファンの接合部の隙間を埋めることで確実に熱を伝えて冷却します。しかし、現状では経年劣化で熱伝導材の粘性が完全に失われて固体化し、粉のように変性していて熱をほとんど伝えなくなっています。

●今回のグラボに搭載してあるGPUはGeForce 9800GTで、外部電源供給が不要なタイプですが、元々電力大喰らいで発熱も半端ないGPUです。ですからちょっとした熱伝導不良でも影響はかなり大きく出てしまいます。

●劣化した熱伝導材をきれいに取り除き、サンハヤト製、トランジスタ用熱伝導シリコングリースをGPUとヒートシンクに塗りました。

●このグリースの特徴は、熱伝導性も良いのですが、経年劣化がほとんどなく粘性を長期間保ちますのでパーツの製品寿命を全うすることができます。

※ビデオカード(nVIDIA GeForce 9800GT)のヒートシンクファン

※ヒートシンクを外してみると、熱伝導材が劣化し、固体粉化している。熱伝導不良の原因

※劣化した伝導材を取り除き、清掃

※今回、高性能なサンハヤト製放熱用シリコングリスを使用した。

※GPU、ヒートシンク両方に塗布する

●再度、PCに取り付けて検証した結果、アイドル時の温度も劇的に下がり、ブラックアウトも改善できました。費用的にはアセンブリ交換した場合の3分の1程度で済みました。

同様の問題はGPU以外でも多い

●同様の熱伝導グリス劣化についての問題は、GPUはもちろん、CPU、チップセットでも起こっていることがあります。ノートパソコンでは、故障と間違われている場合があり、見逃されてしまうことが多いトラブルの一つです。

●特にCore i7や高価なグラボなど高性能、高発熱のチップでは影響が大きいので熱伝導材の劣化に注意が必要です。最近、やたらにファンの音が大きくなった、ノートパソコンの本体が異様に熱いなどの症状が出ている場合はチェックしておきましょう。年数が経過したパソコンは熱伝導グリスのリペアを行う必要があります。


※一体型PC(ノートPC仕様)パソコンのCPUとチップセットの熱伝導材が劣化している状況


※特にチップセットのほうは材質が固体化しひび割れて熱伝導が著しく悪化している

●メーカー、量販問わず、多くのサポート現場ではそのような知見がないために、製品寿命を全うできずに買換えを迫られたり高額な修理費になっている場合があります。

●このような見逃しがない専門家こそ、これからの時代には必要です。専門性の高い分野において、価格の安さだけとか看板だけが頼りという選択判断では質の高いサポートを受けることは難しいでしょう。

九州インターワークス 注目のページ
「パソコンとほこり」
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古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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