使っていないIT周辺機器の電源コードはコンセントから抜いたほうがいいのか、そのままでいいのか?
目次
電源を根元から切るという習慣にメリットは?
●ノートパソコン、デスクトップパソコン、プリンタやモニタ、また他のIT周辺機器など数多くのIT機器を使っていると困るのがコンセント分岐です。トリプルタップやテーブルタップなどを使っている方も多いようです。最近では差込口それぞれに入切りのスイッチが付いた便利なものもあり、機器を個別にスイッチでON、OFFの管理ができたりするものまであります。
●そこでこれは便利ということでパソコンをシャットダウン(終了)したあとに、電源タップのスイッチをOFFにして通電を元から切るのが習慣になっている方もおられるようです。タップにスイッチがない場合でもコンセントから電源コードを引っこ抜いているという方も多いようです。このようなことをするのは、電源がつながったままではなんとなく不安とか待機電力の節約になるからという理由からそうしているのかもしれません。
●でも気になるのは、パソコンにとって電源を根元から切ることが本当にいいことなのか?ということです。毎回コンセントから抜いたり、タップのスイッチで元から切るということについてデメリットはないのでしょうか。
●省エネの観点から言えば待機電力の消費が無くなるので当然切ったほうが良いのは言うまでもありません。でも、パソコン自体にとってはどうか・・・ということになると待機電力節約のメリットを打ち消してしまうようなデメリットがもしあれば、一概に良いことだとは言えなくなってしまいます。
●そこで今回は、パソコン電源の通電管理についてお話します。
基板への通電がなくなるとBIOS設定用の内蔵電池が消耗する
●パソコンをシャットダウンすればパソコンのOS(オペレーティングシステム)の機能自体は完全に停止しますが、ACアダプター電源やパソコン本体の内部基板などには電圧はかかったままです。そのため、わずかではありますが電力を消費しています。
●これは家電製品なども同じで、機能が停止していても電源コードをコンセントから抜かずに修理のため分解作業などをすると、本体内部の通電電圧でショートを起こす危険性があります。
●パソコン本体のメイン基板にはBIOS(バイオス)という基板制御用のプログラムが搭載されています。このBIOSプログラムはROMという不揮発性メモリに書き込まれていますので、通電がなくなってもプログラム自体が消失することはありません。
●しかし、BIOS設定でカスタマイズしたり変更した情報はCMOSという揮発性メモリに書き込まれるため、通電がなくなると初期化されてしまいます。例えばカレンダーや時刻、その他のカスタマイズした設定がすべて初期値に戻されてしまいます。
●そうなるとPCの起動などに直接的な影響を与えてしまうことがあります。そこで一般的には、基板上にリチウムコイン電池などのCMOSバックアップ用バッテリーが装填してあり、基板の通電がなくなってもバッテリーのわずかな電流でBIOSのカスタム設定値が保持されるようになっています。
●ところがバックアップ用リチウムコイン電池は一次電池ですから基板への通電がない場合は、その電力だけで設定値を保持し続けなければならず数年で消耗してしまいます。消耗してしまうとBIOSのカスタム設定値は初期化されてしまいます。逆にその電池が消耗しても基板が通電されている状態、つまりコンセントからの電源が切れていない限りは基板へ通電されていますのでBIOSの設定は保持され続けます。
●ノートPCの場合、CMOS用電池は充電式の二次電池になっていることがあり、パソコンが通電されている間は常に基板から充電される仕組みになっています。ところが、電源をコンセントから外してノートパソコンを長期間放置するとメインバッテリーの電力も自然放電でなくなり、CMOS用の充電池も完全に放電してしまいます。
●このようにCMOS用電池が消耗したパソコンでコンセントからの通電を切ってしまうとBIOSのカスタマイズされた設定値が保持されなくなり、設定内容がリセットされて工場出荷時の初期状態に戻ってしまいます。その結果、パソコンが立ち上がらない、エラー表示が出る、動作がおかしいなどの症状が出ることがあります。
※デスクトップメインボードBIOS用リチウム電池 充電式ではないが、時間と共に消耗する。
※ノートパソコンの基板のBIOS用リチウム充電池。 基板から充電している。
●初期化されたBIOSを再設定する場合、一度も扱ったことがないという場合は無理に自分で設定するのは危険です。BIOS設定を誤るとPCの挙動にダイレクトに影響が出てしまいます。ですから、有償であっても専門業者や専門家に依頼したほうが良いでしょう。
●そういう観点から言えばパソコンの元電源、要するにテーブルタップのスイッチは入れたままのほうが良く、コンセントは挿したままのほうが良いということもいえます。
●ここまでは、電源ケーブルをつないだままにするメリットについて述べましたが、電源ケーブルを抜いておくことによるメリットもあります。雷対策の際には電源コードを抜いておくことがメリットになります。
雷の季節、電源コードを抜いておく場合の留意点
●雷被害の場合、家屋の電線からパソコンの電源コードを伝って雷の高圧電流がパソコンを直撃することがあり、基盤などが被害を受けます。ですから、電源コードを抜くことが落雷被害対策の一つになりますが、パソコン本体の電源コードだけを抜いていても対策としては不足しています。そのパソコンに接続しているモデムやルータなどのネットワーク機器、プリンタ、モニタなどの電源コードからも高電圧が突入してくることがあり、LANケーブルやUSBケーブル、モニターのケーブルなどパソコンに繋がっているあらゆるケーブルを伝わってきてパソコンに届いてしまうことがあります。
●このように、落雷対策で電源コードを抜くのであれば、パソコンに繋がっている周辺機器のケーブルや周辺機器自体の電源コードもすべて抜いておかなければ完全な効果はありません。
電源をつないだままでセキュリティーの問題はないのか?
●パソコンの電源ケーブルがつながったままだと、パソコンに何かが侵入したりセキュリティーの問題が起きるかもしれないという事で電源コードを外してしまう方もおられます。しかしシャットダウンしたパソコンはOSもソフトウェアも動作していない完全停止の状態ですから、外部から不正アクセスを受けたりウイルスが入り込むなどのセキュリティーの問題は起きません。
●最近のPCはUEFI BIOSとなり、BIOSレベルでネットワーク利用ができるようになっていますが、そのような機能を利用をしていない通常の家庭内でルータ以下で使用するPCでは乗っ取られるなどの被害は起きえません。パソコンの電源コードを抜いたからと言ってセキュリティーが安全になったり、ウイルス被害の防止につながることはありません。しかし、ルータなどではある程度の問題も出てきます。そのあたりの詳しいことは以下のコラムもご参考ください。
●関連コラム
「パソコン周辺機器の電源は毎回切ったほうがいいのか、それとも・・・」
https://mbp-japan.com/fukuoka/pc-pro/column/8486/
九州インターワークス 注目のページ
「パソコンの安定化対策」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/antei.htm