パソコンにイライラ!サポート現場がかたるITとメンタルヘルスの深い関係

古賀竜一

古賀竜一

テーマ:専門家からの提言と考察

「ついパソコンを叩いてしまいました」


昨日、はじめてサポート依頼を頂いた方ですが、パソコンを診断をしている最中に「調子が悪いのにイラついて、つい本体を叩いてしまいました・・」と言われました。ここ何日か調子が特に悪く、仕事にも影響が出ていたそうで余程我慢ならなかったのでしょう。

私は精神科学の専門家ではないのですが、サポートの現場では時々ユーザーからそのようなことを打ち明けられることがあります。

典型的な例ではパソコンが起動しない、遅い、途中で止まる、固まる、ネットがつながらない、プリンタ印刷が上手くいかないなどの際に、ほとんどの人が不安やイラつきを感じています。そのため、冷静さが失われ、論理的に物事を考えられなくなりつい手荒な扱いになっているようです。

そうなると状況はさらに悪化して、ますますIT機器は正常に動作しなくなってしまいます。このようにこれまで20年以上のITサポート経験上からユーザーの利用実態を見ていると、ITとメンタルヘルスは非常に密接な関係にあるようです。

実際についイライラしてパソコンを叩いたり蹴ったり、キーボードやマウスを乱暴に扱ったりした経験がある方も多いのではないでしょうか?

そういうことを口に出して伝えていただくユーザーの場合はまだいい方です。中にはそうとは言わなくても、診断依頼のデスクトップパソコン本体がありえないほどボコボコにへこんでいて、どうしてそうなったのかが瞬間に理解できるような、とても怖い思いをすることがあります。

これは、単にパソコンの調子が悪いとか操作が上手くいかないことでそうなるということだけではなく、IT機器類が持つ性質が関係しているようです。



パソコンは普通の家電品や機械とは違う

パソコンやスマホなどのコンピュータ製品は普通の電化製品と違ってインタラクティブ(対話型、双方向性)という性質があります。どういうことかというとIT機器は人間からの入力に対して反応が返ってくる機械なのです。

近年の生成AIの登場により、以前より格段に自然な対話ができるようになりました。しかしそれでも機械は感情を持たず、こちらの意図を完全には汲み取れないことも多くあります。「こんなこともわからないのか」という苛立ちは、むしろAIが高度になったことで期待値が上がった分、以前より強くなっているケースも見られます。

また、機械ですから故障もします。コンピュータは間違わない、命令通り動くもの、それに故障しない・・という固定観念がそれを許せないと感じてしまって、苛立ちを感じる人は多いのです。完璧を求めたがる傾向にある人は特にそのような感情に走りやすいようです。

SNSをめぐるトラブルや犯罪はすでに社会に深く根付いた問題となっています。誹謗中傷による自殺事案や、軽率な投稿による炎上・逮捕事例は後を絶たず、もはや「起きうるリスク」ではなく「日常的に起きている現実」です。短文による誤解が激高につながる、逆に長文で送り付けるなど、感情を刺激されやすいために事件になったりして大きな社会問題になっています。

これは機器の問題ではなく単なる運用の問題ですが、コンピュータを介することで普通の対面会話とは違う状況になります。相手の表情を見ながらの会話ではないことによる弊害があるのではないでしょうか。

WHO(世界保健機関)は2022年にゲーム依存を正式な疾患として認定しており、スマートフォン依存も含め、年齢を問わないデジタル依存は今や医療分野の課題となっています。未成年者はもちろん、働き盛りの大人も例外ではありません。パソコンが上手く動かないときは一日中イライラしたり、不機嫌になってしまう人はたくさんいます。それだけメンタルへの影響が大きいということでしょう。

パソコンが上手く動かないときは一日中イライラしたり、不機嫌になってしまう人はたくさんいます。それだけメンタルへの影響が大きいということでしょう。



メンタル的な「依存」の 状態

また、逆にメンタル的な依存の状態に陥っている場合もあります。普段はそのことに気づいていませんが、故障やミスなどで大切なデータを失った場合に起きる「喪失感」で初めて気が付くようです。人によってはまるで恋人にふられたかのように何週間も立ち直れないくらいの喪失感に陥る人も出て来ます。



IT機器はあくまでも機械であり故障したりデータが喪失することもあるということが完全に頭から離れてしまっている人も多く、トラブルの際にその重大性に改めて気が付く方もいます。

IT機器は人によっては単なる機械やデータというわけではなく、データやソフト環境などが自分の手足の一部や仕事のパートナーとして存在している場合もあります。また、人生そのものが詰まっている「分身」のような存在になっていることもあります。自己実現を可能にしてくれる「盟友」として機能している場合もあります。



さらに近年は、生成AIに対する依存という新たな問題も出てきています。毎日AIに悩みを打ち明けたり、意思決定をAIに委ねるようになった結果、サービス停止や仕様変更の際に強い喪失感や不安を訴えるケースが報告され始めています。相手が「機械」であるとわかっていても、心理的な依存が形成されるという点では、従来のIT依存とまったく同じ構造です。

それだけに普通の「物」とは違ってメンタル的な「依存」の状態を形成しやすいのです。

たかがパソコンごときで・・と言う人もいますが、人によっては最も大切な存在になっている場合もあるのです。ですから、いつも言っているように人のパソコンを扱う際には慎重さが必要で、トラブル解決を依頼されても単なる優越感の対象で扱ってはいけないのです。



ITとメンタルについてはこれから様々な検証が行われると思いますが、サポート現場で見るメンタルへの影響は思っている以上に根深いと感じています。

筆者の実績 :http://www.kumin.ne.jp/kiw/#ss

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古賀竜一
専門家

古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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