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データの「保管」と「保存」の違いとは
●データの保存媒体や保存デバイスも年々順調に進化し、高速化・高容量化していてその勢いはとどまることを知りません。スマホのフォトデータなど画像をはじめとして音楽・ビデオ動画などのデータも高品質になりデータサイズもこれまで以上に大容量化してきています。
●そこで必要になってきているのが「データの安全な保存方法」です。保存方法は媒体を含め様々ですが、企業などは費用をかけられる分、長期に安定した保存方法がとれる一方、一般ユーザーが使用する場合、一体どの方法が一番いいのか判断に迷うところです。
●データ管理には「保管」と「保存」があります。同じような意味に思えますがITで言うところの「保管」というのは「一時的に置いておく」という意味です。「保存」とは「長期間、良好な状態を維持しておく」という意味あいがあります。
●データを置く媒体には「保管」なら問題なくても「保存」には向いていないものがあるということは意外に知られていません。
●ほとんどの人は何となく使い勝手が良いということで、多くがUSBメモリやSDカードなどを使用しているかと思います。しかし、意外にこれらのようなフラッシュメモリ類はデータの「保存」には向いていないんです。その理由などをこれからこのコラムでは解説をしていきたいと思います。
●データの維持管理方法には媒体によってそれぞれに特徴があります。取り扱いの便利さだけで判断してしまうと、保存に適していない媒体に長期間データ保存をしてしまうということが起きます。知らぬが仏とはこのことで、保存したから大丈夫という安心の裏でデータロストのリスクを抱えこんでしまっていることに気付いていません。そのため実際にデータを取り出そうとした際に読み出せないという結果になることがあります。
●そこで、今回は様々な視点からみた汎用のデータ保存方法のベストをご紹介。
長期間保存に適している保存方法
●まず、長期間保存に最適な保存方法ですが、下記の順になります。
1位:DVD-RAM、MO、Blu-rayなどの光学ディスク
2位:CD-R,DVD-R等の光学ディスク
3位:外付けHDDドライブ
4位:USBメモリ、SDなどその他のフラッシュメモリ
5位:フロッピーディスク
●以下、媒体ごとに解説をしてみましょう。
「光学ディスク」に保存
●光学ディスクは上質なライティングと保管の方法さえきちんとしていれば、かなり長期間の保存が可能です。特にDVD-RAMやMOなどの光学磁気ディスクは長寿命です。
●CD-RやDVD-R、BD-Rもディスク品質に加えてライティング速度や保管方法がきちんとしていれば長期間の保存が可能です。
●上質なライティングというのは、早すぎない記録速度という意味です。できるだけ中低速でライティングすることが好ましいといえます。例えば16倍速書込可能のDVDメディアでは8倍で書込むとか、48倍対応CD-Rならば12~16倍速で書込むことで記録面への確実なデータ生成が可能になります。
●最高速でライティングすると、記録面が高速で回転するためレーザー光が当たる時間が短くなり生成される痕跡が薄くなります。要するに「焼きが甘く」なります。さらにそのような状態で経年劣化が加わると通常の耐久年数より早く読み出せなくなることがあります。特に書き換えが可能な「RW」は記録面の材質が「R」よりも書き込みにくい性質があります。「RW」を使用する場合は特に遅めの速度で書き込みをしたほうが良いでしょう。
●高速ライティングした光学ディスクは人に渡す時だけなど、データをとりあえずその場で移動させるだけの目的ならばメリットとなります。しかし、「保存」という観点からは方法としては高速ライティングは回避すべきです。
●また、100枚入りの海外製激安、格安メディアなどを使った場合は、記録層の材質や品質が粗悪な場合があり、ライティング速度が適正でも焼きが甘くなる場合があります。程度としては記録の痕跡が早期に喪失したり経年劣化が早いなどが原因となり寿命が格段に落ち、場合によっては1~2年程度で読み出せなくなってしまうこともあります。
「外付けHDD」に保存
●外付けHDDドライブは、長期間保存には向いていません。HDDは機械ですから長期間保存することで電源部やコントローラ部のコンデンサ、コネクタ端子などが劣化します。基板をはじめ各接続部が接触不良を起こしていることもあります。そのような不安定化した状態では通電したとたんに動作不良を起こし故障に陥ることがあります。
●また、USBバスパワードのポータブルHDDはポートの接触不良やUSBからの供給電源が不安定な場合などに誤作動を起こすことがあります。その原因でパーティションが壊れたり、ディスクヘッドが異常な動きをしディスクを傷付けたりして一瞬で故障する場合があります。
●それから、長期間放置(保存)することでプラッタ(記録面)や磁気ヘッドの磁気が弱くなります。時々稼働させたりデータの上書きをすることで磁気を回復させることが必要です。
●外付けHDDは一時的にデータを「保管」するのには適している媒体ですが、意外にも長期間のデータの「保存」には向いていません。
「フラッシュメモリ(USBメモリ、SDカード、USB_SSD)」に保存
●USBメモリやSDカード、外付けのSSDなども同じで、端子の接触不良、静電気などで誤作動を起こした際にデータが飛んだ事例も実際にあります。また、フラッシュメモリのデータ保持の仕組みはとても繊細で、時間経過とともにデータの元になっている閉じ込めた電子が「蒸発」する性質があります。メーカーでは有効な保持期間を設けている場合もあります。
●フラッシュメモリは読み書きの頻度や時間とともに記録できる容量がわずかながら減っていきます。保存環境の温度が高ければより促進されます。
●高品質なフラッシュメモリーならある程度は長期の保存ができるかもしれません。しかし、通販で購入するフラッシュメモリの品質には相当の「ばらつき」があるのも事実です。また、有名メーカーで高額なものであってもコピー商品が出回っていたりするので価格だけで判断するのも難しくなっています。
●どうしてもUSBメモリやSDカード、外付けSSDに保存しておきたい場合は通販ではなく、量販店の店頭などで名の通ったメーカー製のものを購入しましょう。
●また、定期的なデータの「上書き」をお勧めします。上書きすることでデータの元となる劣化部分の誤り訂正が行われるなどして再構成され、データロストから守ることができます。
●このようにフラッシュメモリはその仕組み上、データの保存についても長期保存には向いていない性質があります。データの保持力としては非常に弱いので、やはり一時的な保管や移動に使用するためのものと考えておく必要があります。
「フロッピーディスク」への保存
●今時フロッピーディスクを使用している人は少ないと思いますが、最も不安定で故障が多い記憶媒体といえます。ディスクやドライブ内部のほこりなどを磁気ヘッドが噛みこんだ場合一撃で盤面が傷つきデータがお終いになります。また、熱や経年劣化、強力な磁気など外部環境の影響で磁気データの保持力も低下することがあり長期保存には不向きです。
取り扱う環境も安全な保存に影響する
●以上の媒体に共通していることは取り扱いの際に「高温多湿」を避けるということが第一です。車の中や日の当たる場所への放置は光や熱によってデータはロストしやすくなります。また、塵埃も大敵。ほこりや塵などでディスクの記録面に傷が入ったりします。HDDやフラッシュメモリは端子の接触不良の原因ともなって回路が異常な動作を起こしパーティションが壊れたり保存データにまで悪影響を及ぼします。
●強い磁気はフロッピーディスクには大敵です。昔ネットにあった面白画像で、冷蔵庫に磁石でフロッピーディスクとメモを挟み込んで止めているというのがありました。これが本当なら笑えないことですが、悪い冗談かネタだと思いたいですね。
●記録時の品質確保と高温多湿や強い磁気、ホコリなどを避けて保存することが長期保存の条件だということです。保存環境はデータの保持力を左右しますので、できる限りの好条件で保存すればそれなりに長期間保存できると思います。
コストと使いやすさでベストなデータ保存とは?
●では、コスト的にはどうでしょうか?
単位容量当たりの低コストランキング
1位:CD-R、DVD-R
2位:DVD-RAM、MO、Blu-ray
3位:HDD
4位:フラッシュメモリ
5位:フロッピーディスク
となります。
光学ディスクは比較的低コストなデータ保存方法ですが、前述のようにあまりに安いメディアを使用すると一気に信頼性が落ちますので注意が必要です。それからUSB、SDカードなどのフラッシュメモリも、トラブル耐性は低いので保管中の定期的な内容確認とリライトが必要です。
使いやすさランキング
1位:フラッシュメモリ
2位:外付けHDD
3位:光学ディスク
の順です。
●フロッピーディスクは容量の問題などを考えると今では逆に使いにくい保存方法になりました。光学ディスクは"ライティング"という儀式をしなければ作成できないところが使いにくさとなっています。USBメモリ、SDカードなどのフラッシュメモリは挿すだけで使えますので使いやすさで言えば便利なのですが、誤消去やトラブルに弱く貴重なデータの保存先としては不向きです。USBメモリに依存して失敗した例は、サポート事例でも枚挙にいとまがありません。
クラウド、Webストレージはどうか?
●最近ではクラウドなどでWebストレージサービスを利用するのがトレンドとなっていますが、容量の大きさや手軽さなど使い勝手としては良好なものの、設定を誤ると意図しない共有や公開を引き起こすことがあります。
●また、絶えず同期を行うためネットワークトラフィックの負荷が増大したりPCのバックグラウンドで余計な処理やサービス常駐、メモリ占有を行うものもあって、パフォーマンスに影響を与えるものもあります。何らかの原因でネットワークがダウンした場合はデータにアクセスできなくなってしまうことも考えられます。
●運営側の不手際などでデータが全消失しても保証されない場合もあり完全依存は危険です。ある程度のリスクを想定して利用する必要があります。このようにデメリットを考えると一概にクラウドが「優れている」とはいえない傾向にあります。
●そういうことでクラウドには主にデータの共有を目的としたものや、一時的な保管が目的でそこまで重要でないデータを保存するのに適しています。機密情報や絶対に消失してはいけないもの、アクセスできなくなると大問題になるようなものは保存に適していません。
●こうして見ていくとそれぞれ一長一短ありますが、できるだけ複数の方法で同じデータを分散保存していくことが安全であんしんなデータ保存方法となります。以上の方法に共通して言えることは、保存環境、作成時の品質が長期保存の要であるということです。
セキュリティー面で安全性の低い保存方法は
セキュリティー面など安全性が低い順位は以下の通り
- USBメモリ、SDカードなどのフラッシュメモリ
- 外付けHDD
- クラウドストレージ
●セキュリティー面の安全性が低い順では、一番低いのがUSBメモリやSDカードなどのフラッシュメモリ類です。これは、持ち運びが簡単であること、サイズが小さいことなどが要因で紛失しやすい面があり情報漏洩の可能性が高くなるからです。また、データ書き換えウイルスなどの被害やデータの持ち出しなどに利用されるなど手軽さが逆作用してしまうことがあります。
●外付けHDDなども、データ書き換えウイルスの被害や紛失などの可能性があります。また、廃棄や譲渡の際にデータの消去作業が不十分だと復旧されてデータが漏洩してしまいます。これも安全とは言えない部分です。
●クラウドストレージは、前述したように予期しない共有設定で情報漏洩につながったりします。また、IDとパスワード管理が十分でないと不正アクセスの被害にあう可能性もあります。インターネットを使用するクラウドはセキュリティー面で厳重な運用管理が必要です。
安全性が高い保存方法はライトアットワンスの光学ディスク
●セキュリティー面で安全な保存方法はライトアットワンスの光学ディスクです。追記や書き換えができないようにした光学ディスクのことですが、書き換えられないのでデータ書き換えウイルスの被害にあうことも、データ上書き消失のおそれなどもなく安全な保存方法といえるでしょう。前述したようにコスパも優れていますから、本当に重要なデータはできればライトアットワンスの光学ディスクに保存したほうが賢明かと思います。
最も安全なのは分散保存、ただし条件がある
●以上、データの保存について述べてきましたが、最も安全で効果的な保存方法は「分散保存」です。例えば、光学ディスクとフラッシュメモリ、HDDとクラウドなど同じデータが必ず複数の媒体に存在している状態にして保存する方法です。
●ただそれだけでも安全とは言い切れません。例えば、1台のPCでHDDとフラッシュメモリを同時に接続していた場合、ランサムウェアの被害や火災、水害、落雷、盗難などで同時にデータが喪失する可能性もあります。
●また、媒体が別でPCに接続していなくても同じような環境に同時に隣接して保存していた場合、同時喪失の可能性が高くなります。かといって重要なデータをあちこちに分散しすぎるとデータ漏洩の可能性も高まりますので、自己管理ができる範囲と方法で行う必要があるでしょう。
●データ保存を完璧に行うためには、管理できる範囲において同時喪失の可能性をできるだけ排除できるように分散保存するというテクニカルな思考が必要です。
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