「外壁タイル」はく離で訴訟
大分県別府市にあるRC造マンションの欠陥を巡り、17年にわたって争われた裁判が、1月29日に終結しました。最高裁判所が元マンションオーナーである原告と設計・施工者である被告の両者の上告を棄却しました。これにより2012年1月10日に福岡高等裁判所が下した、被告に約3800万円の賠償を命じる第2次差し戻し審判決が確定したことになります。原告の請求額は約3億5000万円であり、賠償額には大きな開きがあります。
この裁判では、瑕疵のある建物を引き渡すことが設計・施工者の不法行為に当たるかが争われました。
最高裁は2007年、第1次上告審において「建物は、建物利用者や隣人、通行人などの生命、身体または財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならない。このような安全性を『建物としての基本的な安全性』というべきだ。」との意見を付けて高裁へ差し戻し、それまであいまいに運用されてきた建築行為における「不法行為」責任の問い方を初めて整理しました。
福岡高裁は第1次差し戻し審において、「マンションには基本的な安全性を損なう瑕疵はない。」として原告の訴えを退けましたが、最高裁が2度目の上告審でも差し戻しを命じたため、第2次差し戻し審では原告の損害を限定的に認めたものとなりました。最高裁は第3次上告審となった今回、福岡高裁を支持しています。
第2次差し戻し審で福岡高裁が認めた損害は、欠陥現象の調査報告書が存在した2部屋のみに限定しています。原告側は建物全体の瑕疵を立証するためのサンプルとしてこの2部屋を調査しましたが、裁判所は調査が行われていない部分では故意・過失が立証できないとして、損害を認めませんでした。
庇のコンクリートが剥落、一見して鉄筋が露出して錆びているのがわかる個所ですら、福岡高裁は「当該部分は人の出入りが少なく、剥落の範囲も限定されている」として主張を退け、鉄筋の腐食で耐久性が損なわれた可能性などは考慮しませんでした。
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所