『良い商品』だけでは売れない!     売り手の「思考停止」から脱する実践的マーケティングとは?

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの営業戦略

良い商品を揃えているのに売れない――その原因は売り手の思考停止にあります。価格競争から抜け出し、“選ばれる売場をつくる”ための『実践的マーケティング・思考』を解説します。

良い商品を揃えています。
価格も極端に高くありません。
売場も、それなりに整えています。

それでも、なぜあなたの売場は
「また来たい店」ではなく
「どこでもいい店」になっているのでしょうか。

もしこの問いに即答できないとしたら、
問題は商品ではありません。
売り手の思考そのものにあります。

良い商品=売れる、という思い込みが売場を止めている

スーパーマーケットの現場では、
「良い商品を扱っているのに売れない」という声が多く聞かれます。

しかし、この現象を
「景気が悪いから」「価格競争が厳しいから」で片づけた瞬間、
売り手の思考は静かに止まり始めます。

鮮度が良いこと。
品質が高いこと。
原価が高騰していること。

これらは重要ですが、
今ではできていて当たり前の前提条件です。

多くの売場が同じ水準に達した結果、
お客様の目には
・似た商品
・似た価格
・似た売り方
としか、映らなくなっています。

そのとき、
最後に残る判断基準は「価格」だけです。

お客は商品ではなく「未来」を見ている

お客様は売場で商品を見ているようで、
実は商品そのものを見ているだけではありません。

見ているのは、
・今日の夕ご飯がどうなるか
・この買い物の先で家事や食卓がどう回るか
・失敗せずに一日を終えられるか

つまり、
この買い物がもたらす自分の未来です。

にもかかわらず、
売場が伝えているのは
産地、規格、価格、スペックばかりです。

この焦点のズレこそが、
「良い商品なのに売れない」最大の原因です。

◇事例①|青果売場(トマト)
 売れているが、指名されない状態

【Before】
売価は198円です。
月間販売数量は420パックです。
リピート購入率は28%です。
POPには「○○産」「高糖度」「鮮度抜群」と書かれていました。

品質は高く、一定数は売れていましたが、
毎週必ず買われる商品ではありませんでした。

【After】

価格も商品も変えず、POPにコメント(キャッチコピー)を追加しました。

「切るだけで、
美味しいサラダが出来上がり。
夕食の段取りが簡単です」

【結果】
期間の販売数量は420パックから560パック(+33%)に増えました。
リピート購入率は28%から46%に上がりました。

売れた理由は甘さではありません。
“楽になる未来”が伝わったからです。

「お客様目線」という言葉が、思考停止を生む

「お客様目線で考えよう」

この言葉は正しそうに聞こえますが、
現場では思考を止める言葉になりがちです。

・価格は高くないか
・欠品していないか
・売場はきれいか

これらは目線ではありません。
単なるチェック項目です。

今、売り手に必要なのは
もっと本質的な問いです。

売り手が本当に考えるべき問い

あなたの売場は、
誰の、
どんな未来を、
どう変える存在になるのでしょうか。

この問いに答えられない売場は、
どれだけ努力しても価格競争から抜け出せません。

そして、この問いは
現場任せにできるものではありません。

売り手自身が
明確な言葉として持つ必要があります。

◇事例②|惣菜売場(唐揚げ)
 「たまに買う惣菜」から「平日の

【Before】
売価は398円です。
平日平均販売数は32パックです。
POPには「店内仕込み」「自慢の味」と書かれていました。

味の評価は高いものの、
平日にはあまり選ばれていませんでした。

【After】
POPに次のようなコメント(キャッチコピー)を追加しました。

「今日は考えなくていい。
温めるだけで、家族が大喜びです!」

【結果】
平日販売数は、平均32パックから47パック(+47%)に増えました。
揚げ物の中の平日構成比は、28%から40%に上がりました。

選ばれたのは味ではありません。
“失敗しない未来”です。

◇事例③|精肉売場(豚こま肉切れ)
 価格訴求をやめて、粗利が


【Before】
売価は100g128円
平均購買点数は1.2点
値引率は12%
POPには「家計応援」「お買い得」と書かれていました。

【After】
POPに次のようにコメント(キャッチコピー)を追加しました。

「これがあれば、
平日のおかずが3品決まります」
そして、メニュー提案レシピーPOP(炒め物・丼・生姜焼き)を併設しました。

【結果】
平均購買点数は1.2点から1.6点に上がりました。
値引率は12%から約6%に下がりました。
粗利額は月18万円改善しました。

安さではなく、
“先が見える未来”が購買を後押ししました。

売場で「未来」をどう伝えるか【実践整理】

① 商品説明より先に“未来”を書きます。
② 部門ではなく「使われる場面」で売場を編集します。
③ なぜこの商品なのかを現場で、言葉で語る状態をつくります。

未来を語れる売場は、
価格ではなく理由で選ばれるのです。

売場の役割は「説得」ではなく「安心」

買い物は、小さな決断の連続です。
決断が多くなるほど、人は疲れます。

疲れた先で選ばれるのは、
たいてい「安い方」です。

売場が提供すべきなのは説得ではありません。
「これで大丈夫」という未来への安心感です。

言い換えれば“不安の解消”です。
これは、「買う理由」として、実践的マーケティング上、大きなインパクトを持っています。

変えるべきは商品ではなく、売り手の思考

「良い商品を扱っているのに売れない」

それは危機ではありません。
売り手の思考を進化させる合図です。

商品を変える前に、
売場を変える前に、まず――
売り手自身が
“お客様の未来を見る位置へ立つ”ことが必要です。

そこから、
『選ばれる売場づくり』は始まります。


そして何より、
このことを理解して、
即時テストを行う、
あなたの行動が結果を大きく変えることになります。




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新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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