生産性を上げる、戦略的人事考課 【商人舎magazine12月号】原稿
業績がなかなか上向かない。新商品を入れても売れない。売場を変えても反応が鈍い。
そんな悩みを抱えるスーパーマーケットは少なくありません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
「商品」や「売場」以前の、もっと根本的な“共通点”があるのです。
それは、組織の“基本”ができていないことです。
本コラムでは、業績が伸びないお店に共通する「3つの基本」—思考・知識・スキル—を、現場目線で解説します。
① 基本思考:「やってくれる」ではなく「自らやる」といいう経営姿勢
まずは経営や現場リーダーの“思考のクセ”が、業績の壁になっているケースが非常に多いです。
「指示を出しているのに現場が動かない」
「やる気がないスタッフが多い」
「言っているんだけどな・・・」
こう感じているとすれば、それは「現場任せ」になっているサインです。
業績を動かすのは、日々の売場とスタッフの行動。
しかし、それを動かすのは、「上司の言葉と態度」です。
たとえば、
•売場に「お客様目線」で立っていますか?
•新人の目線で「分かりやすい指示」を出せていますか?
•一度決めた方針を「ぶれずに継続」していますか?
基本思考の要は「自責で考え、先頭に立って示す」ことです。
この姿勢がなければ、どんな施策も続かず、業績は上向きません。
② 基本知識:「売上の成り立ち」を数値で理解していない
業績の改善には、現場の判断力を支える「数字の知識」が不可欠です。
ところが実際には、以下のような基本数値すら理解されていないケースが目立ちます。
•売上高は、【客数 × 客単価 × 来店頻度】
•売上原価は、【期首・棚卸原価高 + 期中・仕入れ高 - 期末・棚卸原価高】
•粗利益高は、【売上高 - 売上原価】
•荒利率は、【(売上高 - 売上原価)÷ 売上高】
これらの関係を知らずに「もっと売れ」と言っても、
現場は、「何をどうすれば良いか・・・」判断できません。
たとえば、
「売上が落ちている」=「客数が減っているのか?」「単価が下がっているのか?」「来店頻度(回数)が落ちているのか?」と分解できれば、対応はまったく違ってきます。
また、
•商品の回転率
•値引き・廃棄ロス率
•特売の利益インパクト
こうした「現場で役立つ数字」の理解があるかどうかで、指示の質も現場の判断も大きく変わるのです。
③ 基本スキル:「売れる現場」を再現する力が弱い
現場やバイヤー・チーフに問われるのが「再現性のあるスキル」です。
たまたま売れた商品や一発屋的な販促では、継続的な業績にはつながりません。
売れるお店には、必ず「再現できる型」があります。
たとえば、
•売場づくりの基本動線(マグネット展開)
•プロモーション(POP、試食販売、チラシ、SNS投稿など)
•販促カレンダーの組み立て方
•重点商品の育て方
•スタッフ指導マニュアル
•発注と在庫の考え方
こうした「ルール・型・手順」を、誰がやってもできる形に落とし込んでいるかどうか。
逆にいえば、「うちの〇〇さんじゃないとできない」は、危険信号です。
お店全体で、「誰がやっても一定の成果が出る仕組み」を持てるかどうか。
それこそが業績を安定させる“現場力”なのです。
これらのことが、標準化であり。時間の経過とともに、そのレベルを向上させる(スタンダードレベル・アップ)の考え方が重要なのです。
業績が上向かないのは、「商品」や「売場」が原因ではない
業績が伸び悩むと、どうしても「商品が悪い」「レイアウトが古い」など、目に見える部分に原因を求めがちです。
しかし実際には、「基本思考」「基本知識」「基本スキル」のどれかが欠けているケースが大半です。
この3つを現場全体で磨き直すことで、
売場も商品も活きてくるのです。
それが「売れる売づくり」の第一歩です。
経営者・幹部の皆さん、
まずはこの3つの「基本」、自店ではできているか?
見直すところから始めてみませんか。
そして、これらの基本原則に対して、思考、知識、スキルを学び、実践経験を積むことが重要であり、最も優先すべき行動となるのです。
とはいえ、
「時間的にも余裕がない」
「どう取り組めばいいのか分からない」
という方は、実績を積んでいる専門家の力を借りることを考えるべきです。
このことが、最も投資対効果が高く、将来の成長の確率を高めることになるでしょう。



