人は感情で物を買う。   「売れてしまう仕組みを作る」大事な仕事をしなさい・・・!

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの営業戦略

先日、私のクライアントの売場を見ていた時、野菜売場で四方竹を売っているのを見た。
高知県特産で、この秋に出てくる珍しいたけのこ、四方竹だ。

私はそれを見た時に、「買ってみるか・・・」「天ぷら美味しいな・・・」と、一人で勝手に想像していた。

しかし、お客の中で、この四方竹を知っている人は、どれくらいいるだろうか。
売場では、産地が作成したであろうPOPに、商品の特徴を書いているだけで、食べ方も使い方も書いていない。文字も小さいので、そもそも老眼の人はまず読めないだろう。

形や物珍しさもあって、目を止める人、立ち止まる人は、いるかもしれない。
でも、この売場で四方竹を見て、買おうと思う人が、どれぐらいいるだろうか。

商品は良い。しかし、価値を伝える実践的マーケティングの仕掛けが、この売場にはない。

「良い商品」の価値は伝わっているか?

「商品が良ければ売れる」と思っている生産者は多い。
そして、それは、販売者も同じだ。

「良い商品なのに売れなかった」という経験をしている人は多いと思う。

お客は、自分にとってのベネフィット(得られる価値、ご利益)を感じなければ、簡単には買ってくれない。
商品を買うことではなく、その商品を買うことで得られる何かに対して、お金を使う。

四方竹を食べたことがある人は、「また食べたいな」「天ぷら美味しいなあ・・・」と思うかもしれない。
しかし、そもそも四方竹を全く見たことのない、知らない人にとっては、わけがわからない。
ましてや、「これで料理を作ってみようか」というチャレンジャーは決して多くないと思う。

「これはもう、天ぷら最高ですよ!」「うん、塩で食べたら最高!」と言うように、POPにキャッチコピーを書き、そして、「今が旬で、秋だけに採れる・・・」と本文を付け足して書いたものを掲示したらどうなるだろう。

そして、それがとても美味しければ、感動もするかもしれないし、「もう一度買ってみよう」という人も出てくるだろう。
そして、仲の良い友達に四方竹を調理して、美味しく食べた経験を、口コミで紹介してくれるかもしれない。

ただ四方竹を売場に並べて、プライスカードを付けただけの売場。
一方、お客に、美味しい食べ方を案内して、全国的にも珍しい、秋の今が旬のたけのこ。とお客に価値情報を伝えている売場。
どれくらいの売上の差になるだろうか・・・。

あなたの売場では、お客に価値を伝える努力をしているか・・

この四方竹の事例を考えても、売る側が遣らなければならないことは、何なのか理解してもらえると思う。

「競争が厳しい」「毎年お客が減っている」と、多くのスーパーマーケットの経営者から悩みの声が聞こえてくるが、こういう厳しい商環境の中で、今まで通りに、ただ商品を並べて、プライスカードを付けているだけで、売上はアップするだろうか。

ましてや、ネット社会の現在、お客が情報を簡単に手にすることが出来る環境で、お客が簡単に店を選択できるのに、今までの様なやり方を続けているだけで、売上をアップすることが出来るだろうか。

今までの売り方を続けて何も変えなければ、この先、売上は下がっても上がることはないと思う。
客単価や来店頻度を上げるための一つの方法として、「商品持つ価値をお客に伝える」ための努力をすることが、非常に重要な時代になっていると思う。

価値が分からないから、いくら良い物でもお客は買ってくれない。
「楽しいこと」「美味しいこと」「面白いこと」を、体感させてくれる何かが分からないから、商品を実際に手に取っても、買い物かごに入れてくれないのだ。
これが、何の提案も無い現場で、日々起こっている事実だ。

コモディティー商品は、確実に単価が下がる

実践的マーケティングの努力をしないままに、「売れない」だとか、「競合が厳しい」とか、「インフレだ」とか言っている場合ではない。

そういうことを言っているだけで、行動しないお店は、時間の経過とともに間違いなくジリ貧になる。
当然、競合が頑張れば頑張るだけ、利益も売上も落ちていく。
もしかしたら、経営の継続もできなくなるかもしれない。

今一度、あなたの売場を確認してもらいたい。
「商品だけを売っていだけ」「物珍しさもないような当たり前の商品を売っているだけ」では無いだろうか。

誰もが知っている商品(コモディティー)の価格は、下がる方向にしか向かわない。
お客は、価格だけにしか目がいかないようになってしまう。

価値を探す。伝える。 ・・・これがバイヤーの仕事。

販売担当者もバイヤーも、商品の持っている(価格以外の)価値を探す努力をするべきだ。
それが、バイヤーの大事な仕事だ。
それが、お客様の生活を豊かにするということだ。

結果、お客様の期待値を超える売場が出来上がる。
そして、それにお客さんが納得してお金を払うことに繋がる。

この簡単な理屈を、売場で作り上げないといけない。
仕組みにしないといけない。
もし、あなたの売場が、プライスカードだけの売場であれば、そこには大きなチャンスがあると、前向きに考えよう。

当然今まで売ったことのないような、身体(健康)に良い物。簡単便利。美味しい。そういう商品を仕入れる。そして、その価値を十分に伝えることに努める。

そして、商品自体の持つ価値の他にも、メニュー提案や使い方提案など、価値を添加するをすることも、簡単なことだ。
それも、販売力だし、スーパーには多くの女性のパートさんが働いている。
その女性の方々は、美味しい料理を作るためのアイデアを数多く持っているだろう。
その手を借りない手はない。

「お客は感情で物を買っている」のだから、その感情を少しだけ刺激する、その行動を取れば、売上は、間違いなく変化する。

私はこれまで、こだわり品と称して商品を導入し、値引きロスを出している売場を多く見てきた。そのほとんどは、お客に価値が伝わっていない。
陳列にこだわっているが、商品の価値が分からない売場も然りだ。


もう一度、あなたの売場を見てもらいたい。
本当に、価値は伝わっているだろうか・・・。
お客が、感情を動かされ、買いたくなるような売場になっているだろうか・・・。
自己満足で終わっていないだろうか。

ただただ、売れない言い訳をしていないだろうか・・・。

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングと作業改善、そしてコスト削減。他では教えてくれない理論と実地指導で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

新谷千里プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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