15時の鮮度チェックが、売上と生産性と営業利益を大幅にアップさせる! スーパーマーケット重要戦略
SMのオペレーションの問題は、何より、人時生産性が低いことです。
それは、生産性に対する意識、勉強が足りないことが原因です。
そのもとは、営業利益高に対する経営者の意識が薄いことにあります。
どの様なビジネスでも、目的は儲けること(営業利益の拡大)です。そのことによって会社は、あらゆる投資を可能にして、成長発展を実現し、従業員の報酬や雇用環境のレベルを上げることが可能になります。
そして、ビジネスの成功のカギは、顧客の創造です。お客の問題解決です。マンネリ化や価格、時間や手間など、お客の不満や要望を的確に察知して対応すること、そして、独自の価値の提供によって、企業は大きな利益に繋げることができるのです。
ですから、これらのことに、優先的且つ戦略的に時間とお金を投資して、自社の競争優位性を確立しなくてはいけません。
このことをよく理解して日々のオペレーションを改善していかないと、代り映えしない売場は、お客の支持を失い、生産性は低下してしまうことになります。
SMの店舗オペレーションが抱える課題、構造的な問題点
SMは、生鮮部門を持つことで、加工作業を必要とします。ドラッグストアなど他業態と比べて作業種、作業工数が多くなり、結果として多くの人時投入を必要とするのです。
生鮮品は、その強さが他業態に対して差別化要素である反面、過剰在庫や作業改善が進まず効率の悪い現場では、数々のムダが発生して、生産性を低下させてしまいます。
言い換えると、そのムダが、FLコストを高めて、商品の売価を押し上げてしまうことになり、価格競争力を低下させてしまいます。
また、過剰在庫は、生鮮品の鮮度を低下させ、商品ロスを高め、同時に、作り過ぎ、出しすぎ、移動、値引き、廃棄など、副次的な多くのムダを発生させてしまいます。
当然、これらの多くのムダな作業に日々人時を投入し、会社は、人件費を払い続けています。
以上のことに加え、200種以上あると言われるSMの店内作業の処理能力、それを支える各種の仕組みの出来不出来が、企業の生産性を大きく左右することになります。
店舗オペレーション効率化を図るうえで設定すべきゴール
効率化を図るうえで、設定すべき戦略的ゴールとは、競争に打ち勝つことのできる営業戦略の実現することです。
そして、経営的ゴールは、高い生産性を実現して、高い営業利益(率)を実現することです。
【事例:2020年・3月~12月/地方SM・3店舗】
売上103.7%、粗利益105.1%、人件費94.4%
営業利益(前年対)増益額 7848万円
また、生産性の高い店舗オペレーションの実現より、業界標準以上の人時生産性を実現することが目標となります。
例えば、ディスカウト・ストアの場合、ムダを徹底して省いて、ローコストオペレーションを実現することにより、値入れ(粗利益率)を低く設定(ロープライス)できます。高い人時売上高を実現することで、粗利益率が低くても人時生産性の高いオペレーションの仕組みを作ることができます。
一方、価値追求型の店舗は、商品開発や売場づくり、接客やサービスなどの充実をはかることによって、お客の体験価値を高めます。結果的に、人時売上高は低くても、高値入(高粗利)を実現して、人時生産性の高いオペレーションの仕組みを作ることを実現します。
そして、作業全般を、単純作業と付加価値作業(業務)に分けて考えると、戦略的な視点を持てるようになります。
単純作業とは、加工や補充、事務など、新入社員でも一週間から一か月程度でその技術を習得して、ある程度の成果(量とスピード)を達成できるものです。
一方、付加価値業務は、売上や利益に直結するような業務のことを言います。
具体的に言うと、単純作業は、作業者の訓練や手順や段取りの変更、作業指示など仕組みの改善など、作業処理スピードを速めることで作業時間を短くすることができます。
また、単純作業のアウトソーシングによって、店内の作業種や工数を根本的に削減することも重要です。これらのことによって、人時売上高を高めるのです。
そして、その分、付加価値業務に、戦略的に人時を振り向けるのです。
具体的には、付加価値(粗利益高)を高めるための、マーケティングや商品開発、調査や分析などの時間を増やすこととその精度を高めることで、人時生産性(粗利益高)を高めるのです。
特に付加価値(粗利益高)を高めるためには、実践的マーケティングの実践スキルを上げることが重要になってきます。
限られた総労働時間を、ムダ無く効率よく、且つ戦略的に使うかが、未来に得られる成果に大きな差を生むことになります。
店舗オペレーションにメスを入れるうえでまず取り組むべきこと
先ずは、在庫(バックルーム、売場)、作業スキル、データ活用度など、現場のあらゆるムダ(問題)を発見することです。
スピード感を持って、現場の問題を発見して、改善課題を設定するためには、実績を持った専門家に現場をみてもらうことをお奨めします。
私の経験上、自社のオペレーションの細部に対して、その問題に気付いている会社は決して多くありません。社内に業務改善チームがある場合でも、効果を出せていない事例も少なくないのです。
問題に気付き、課題を設定して、何処に焦点を当て、優先順位を設定し、改善方法を決められるか…。このことによって、近い将来の成果が大きく変わるのです。
考え方が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わるのです。
そして、改善のスタート時期と改善スピードが、飛躍的な成果の差を生むことになります。
注目すべき取り組みやテクノロジー
セルフレジ、キャッシュレス決済、さらにチラシやレジのデジタル化やアプリの活用など、ITの導入が進んでいます。
作業の効率化と、コロナ禍においては、混雑や接触を抑えて、感染リスクを低減することや、お客が効率的な買物ができることにも繋がります。
その他、電子棚札やデジタル表示版、AI(人工知能)を活用した自動発注システムなど、デジタル技術を使うことで、作業時間の短縮や精度アップをはかることができます。
これらことは、作業の時間短縮と、余った時間を、より戦略的な業務に振り分けることを可能にして、さらに店舗の価値や魅力度を上げていくことに繋がります。
当然コストが掛かりますが、中小企業においては、公的な補助金を活用することも可能ですので、積極的に検討すべきでしょう。
「今後景気が悪化し、節約志向が高まって価格競争になる」とみる向き多いのですが、その対応ばかりに明け暮れていては、生産性の高いオペレーションを構築することはできません。
価格以外の価値にフォーカスして、独自の方法でそれを提供し、「お客の日々の生活を楽しいものにする」というコンセプトを持って売場づくりを実現し、「価値提供によって粗利益を高める」努力が絶対的に必要です。
「コストを下げる」こと、そして、「粗利益を拡大する」こと。
日々改善を加え、確実にその「スタンダード・レベルを上げていく」という、いたって当たり前の行動が生産性の高いオペレーションを実現して、競争力を確実に高めていくのです。
今まさに、好業績によって得た利益を、今後の成長のための人材育成や業務改善など、戦略的投資を確実に行うことが重要であるのです。
■月刊商人舎[電子版]の連載記事は、下をクリックするとご覧になれます
⇒ 月刊商人舎 新谷千里の「お客と社員に支持される生産性向上策」