考え方を変えれば、営業利益は簡単に伸ばせる⁉
私は、業務改善のコンサルタントとして、今まで多くの企業の現場を見てきましたが、スーパーマーケット業界では、人時生産性の低い企業が、圧倒的に多いように思います。
逆に言い方をすれば、「人時生産性を大幅にアップさせて、営業利益を拡大出来る」チャンスがあると言えます。
業態を超えた競争。人手不足。賃金の高騰・・・など、経営環境は益々厳しさを増してきています。
この様な経営環境の中で、重要なことは、目先のことに捉われず、生産性を上げることに視点を置いて、改善行動を取ることです。
その中でも、人時生産性のアップは、特に重要なこととなります。
経営資源は、人、物、金、情報と言われますが、それと同様に重要なのが『時間』です。
時間はまた、人、物、金、情報に関わり、重要で公平な資源です。
この時間を、どう考え、どう使うかが、ビジネスの発展に大きな差を生むことになります。
『付加価値業務』 と 『単純作業』 を理解する
チーム全体の業務を、『質を追求する』ものと、『量を追求する』ものとに分けて考えます。
質を追求するものは、その『出来映え』を要求されるもので、
① 各種の計画
② 商談
③ 会議
④ 調査・分析
などの営業活動に対して間接的なものと、
⑤ 営業POP
⑥ 試食販売
など、販売活動に直接かかわるものが有ります。
ここで重要な視点は、会社のコンセプトと独自性の追求(確立)です。
一方、量を追求するものは、その『出来高』を要求されるもので、
① 加工作業
② 補充作業
などの、単位時間当たりの生産量が重要になって来るものです。
ここで重要な視点は、ローコスト・オペレーションです。
この、質、量2つの視点を持って、投入人時をコントロールすることが重要であるのです。
付加価値業務の時間を増やして、利益を上げる‼
付加価値業務の中身としては、大まかに以下の業務を意味します。
① 粗利益や営業利益の拡大に、直接的に関係する業務
基本的には、定時定例で行う、各種の計画、商談、会議、調査・分析などが、これに当たります。
② お客に「美味しい」「楽しい」「安全」「健康」「簡単便利」「安心」などを体験してもらうための業務
陳列演出、POPや試食販売など、お客に対する直接的にアプローチする業務であり、戦略的に
考えて投入人時を拡大することが、競合店に対する差別化を生み、粗利益の拡大に繋がります。
要するに、「お客が喜ぶこと」に、直接的にかかわる業務のことです。
この業務は、「時間が足りなくて出来ない・・・」などとは、言っていられません。
※業務改善と人時生産性向上のイメージ図
商圏内の競争力の優劣を決めるのは、企業規模の大小ではなく、時間配分の大小であることを理解する必要があります。
「楽しいところ」、「自分の役に立つところ」に、お客は集まるのです。
また、会社の粗利益の拡大に大きく貢献する重要な業務です。
戦略的に、付加価値業務の時間を多くとることが重要です。
そのためには、総人時に占める単純作業の時間の割合を下げる必要があります。
単純作業の時間を減らすには・・・?
限られた時間の中から、付加価値業務の時間を拡大するためには、単純作業の時間を減らすことを考えなければなりません。
ですから、単純作業の作業種、作業工数の削減が必要になってきます。
具体的には、加工や補充、掃除など、単純作業の時間を出来るだけ圧縮するように、工夫をしなければなりません。
方法としては、
① 月間稼働計画を立てて、人時を減らす予算を決める
② 作業割当て表を作成して、適材適所で担当者を設定する
③ 作業指示書を活用して、作業の優先順位を付けて無駄を無くす
④ 作業段取りの改善を行い、処理スピードを上げる
⑤ マテ・ハン(商品の移動に関わる技術)に磨きをかけて、疲労軽減と処理スピードアップをはかる
⑥ 道具(什器備品)を生産性の高いものに見直す
⑦ 科学的レイアウトの構築を行い、無駄な移動を減らす
⑧ 各種システム改善(物流・情報など)を行い、全体としての処理スピードを上げる
などが、考えられます。
また、
① ピッキング(小ロット分け)
② プリパッケージ(商品加工)
③ 仕様書発注による商品化
④ 事務処理
などの外注化をはかり、自店内の作業工数を減らして、必要人時を削減します。
チェーンストアのディストリビューションセンターやコミッサリー(セントラルキッチン)などは、この目的で作り稼働させます。
中小・零細企業でも、地域業者の持っている資産を活用して、外注化を行うことも十分可能であり、初期投資を抑えることが出来て効率的です。
単純作業を自社内で抱え込むと、その分、付加価値業務の時間を減らしてしまうことになります。
特に、スーパーマーケットの場合、他の業態に比べて、単純作業の比率が高い業態です。
現状、人時当たりの生産高が低い状態であれば、野菜の相場低下時の作業量の拡大や、パート社員の時給アップなどの影響を受け、生産性は確実に低下してしまうことになります。
人時売上高の低い企業は、今までのやり方を、根本的に見直す必要があります。
“経費” と “投資” を理解する⁉
付加価値業務(出来映え業務)に使う人時(人件費)は、『投資』と考えます。
一方、単純作業(出来高業務)に使う人時(人件費)は、『経費』と考えます。
このように考えると、取るべき方向性が鮮明になり、行動の無駄が少なくなります。
どちらも、単なる経費(人時)と考えてしまうと、戦略を見誤ることになります。
コンセプトや独自性の追求のためには、
① 実行計画
② こだわった商品等の仕入れのための商談
③ 各種商品開発
④ 打合せや会議
⑤ 市場調査や分析
などといった、戦略立案と実行のための時間が必要です。
これらは、今後得られる売上や粗利益を拡大するための投資です。
投資の質が高ければ、リターンも大きいものになる可能性が高くなるでしょう。
一方、単純作業は、時間当たりの処理量を追求するのですが、逆の言い方をすれば、処理すべき作業量に対して、「如何に少ない人時で済ませるか」という、ローコスト・オペレーションの考え方と、そのための行動が重要なポイントになります。
例えば、ゴンドラの中の定番商品の補充品出しは、先入先出し(日付管理)をして、フェイスアップをします。
決められた目標レベル(ルール)を守り、少ない人時でやり遂げるのです。
そのためには、担当者に対して、
① 補充カートやモップなど道具の使い方
② 手順や要領
などの教育訓練を行い、
③ フェイスアップ
④ 処理時間(スピード)
などの目標レベルを伝えておくことが重要となります。
更に、物流システム全体として、センターでの積み込みの要領、荷受け場での振り分けの要領なども、現場の単純作業の工数を減らし、担当者の負担を軽減して、トータル人時の削減をはかります。
「楽に・・・」
「早く・・・」
「簡単に・・・」
そして、トータル経費を、
「安く・・・」
が、単純作業の改善ポイントです。
戦略的に、人時生産性をアップさせる
営業活動で生み出した粗利益高÷投入人時が、人時生産性です。
そして、高い人時生産性を達成することが出来れば、時間(活動期間)の経過と共に、営業利益は、確実に高くなります。
値入率の低い、NB商品が多いグロサリー部門でも、時間当たりの処理量を高く出来れば、商品全体の値入率高は高くなります。
結果として、人時生産性は、高くなります。
時間当たりの処理量を上げるためには、
上記①から⑦のような、仕組みの構築を行う等、改善を重ねて、作業の処理スピードを高めていくことに加えて、アウトソーシングが効果的です。
多くの場合、専門業者には、熟練した高い技術を持ったスタッフが揃っているため、処理能力が高いと言えます。
そして、
① 納品時間
② 納品ロット
③ 納品形態
④ 完全ソースマーキング(バーコードの貼付)
などのルール設定を行うことで、更に店内の作業工数は、削減されることになります。
そのためには、信用のできるパートナー企業を見つけること、また、育てることが重要になります。
その他、投資は必要になってきますが、自動発注や先進の発注システムなど、ITの導入により、発注の精度アップや作業工数の削減などが可能で、人時生産性をアップさせることになります。
一方、付加価値業務の『生み出す質を高めること』とは、他社との差別化を生み、価格決定を容易にして、高い値入率を実現できることになります。
価格以外の、価値に焦点を当て高い値入率を実現するためには、
お店のコンセプトを基に、
① 「競合他社が遣っていない、商品やサービスを提供する」
② 「商品の持つ価値情報を、お客に確実に伝える」
ことに対して、計画的に人時を投入することです。
「美味しい」
「楽しい」
「安全」
「健康」
「簡単・便利」
「安心」
「温か・明るく・元気・・・」
など、『独自の売り』をお客に提供して、体感してもらうのです。
そのためには、売場において、営業POPの掲示や試食販売などで、お客にダイレクトに訴えるプロモーション(売れる仕組みをつくる)が、重要となります。
1.単純作業は、時間当たり『処理量』を上げる
2.付加価値業務は、『生み出す質』を高める
ことの実現性が高くなれば、人時生産性はアップして、営業利益が確実にアップすることになります。
※人時生産性と営業利益の向上のイメージ図
高い目標設定が重要‼
日本リテイリングセンターの故渥美俊一先生は、チェーンストアとしての『作業システム改革原理』の中で、
⇒ 到達すべきゴールは、人時生産性5,000円(店舗段階で6,000円)があるべき形
⇒ 労働生産性では、1,000万円(店舗段階で1,200万円)(年間総労働時間2,000時間)
そして、やらなければならないことは、
⇒ その収益モデル作り
であるとおっしゃいました。
重要なことは、遣って来た行動の結果が、「どれくらいの生産性アップに繋がったか」ということです。(売上ではありません)
売場の表層的なもの、他所の遣っていることを真似した程度では、生産性はアップしません。
コンセプトや戦略、そして、生産性を理解できていれば、
☛ 遣るべきこと
☛ 遣ってはいけないこと
が、容易に判断できるようになります。
従業員のため、お客のため、そして、会社のために、
一歩ずつ、高い目標を目指して、業務改善を行うことです。
時給を上げる
人手不足が問題であるという人が多くいますが、重要なことは、本当に人手不足であるかを、自社の現場で確認(実地検証)することです。
そもそも、現場のオペレーション(作業と仕組み)のレベルを確認出来ていなければなりません。これについては、外部の専門家に診てもらうことも有効的でしょう。
今までいた社員の頭数に対して、頭数が減ったことが人手不足とは限りません。
事実、私は多くの現場でそのことを確認してきましたし、人を補充しなくても、簡単に人手不足を改善した事例は数多くあります。
特に、スーパーマーケットの場合、多くの作業人時を要する加工や補充など、単純作業の作業改善を行うことが有効的です。
目指すべきは、生産性を上げて、従業員の時給を上げることです。
時給が上がれば、定着率も上がり、優秀な人材も募集しやすくなります。
「人手不足にならないように」という護りの姿勢ではなく、従業員の成長を後押しして、
① スキルアップ計画
② 評価制度
③ 報酬アップ
の仕組みをつくり、正しいサイクルに繋げるという様な、攻めの考え方が重要です。
高い生産性は、規模の大小ではない⁉
人時生産性の高さは、企業規模の大小ではありません。
「戦略分野への時間配分の大小が、商圏内の競争力の優劣を決める」ということを理解する必要があります。
IT技術など、高額なシステムへの投資は、企業規模が大きいほうが優位であるでしょう。
しかし、オペレーションの改善や、マーケティングに関しては、企業規模が小さいほうが柔軟にスピードをもって対応できると思います。
重要なことは、「何を目標にしているか」ということです。
目先の枝葉末節的なものに気を取られていたら、根幹の部分を見余ることになりかねません。
競争の厳しい中で、人時生産性を確実に高めるためには、
① 独自性を確立する
☛ 付加価値業務に人時を投入して、粗利益高を高めること
② オペレーションの無駄を削ぎ落とす
☛ 各種単純作業の投入人時を削減する
ことです。
もう一度言います。生産性のアップは、企業規模の大小で決まるものではないのです。
■商人舎magazine5月号
■ 『スーパーの業務改善』 その他の参考記事
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