業績を飛躍的に拡大させるために、原理原則を学べ!
流通業界では、人件費の高騰や、求人難などの問題で苦しんでいる企業も多いようですが、時間管理や数量管理など、数字を正しく理解した行動が取れれば、企業によっては、まだまだ十分な余裕を持っていることに気付くことが出来るかもしれません。
計画を立てる。検証を行う。というような時にも、『現場の数値』を深く正しく理解していれば、成功の確率の高いプロセスを実践して、大きな成果へと繋げることが出来ます。
私は、スーパーマーケットなどの業務改善のコンサルティングをさせていただいていますが、それぞれの現場でよく感じることが、経営者、経営幹部、店長など、各チームのリーダーが、「重要な数値を正しく理解していない」ことや、「使っていない」ということです。
数値管理に知らない(弱い)ということは、それだけ戦略の幅を縮めることになります。
また、今後益々厳しさを増す経営環境の中で、確実に押さえておきたい経営数値である『部門別損益管理』については、意味と戦略的活用について、次号1月号で、詳しく解説をしていきたいと思います。
■ 最大経費(投資)である人件費の生産性を上げる
損益計算書を覗くとわかるように、固定経費の中で最大のものが人件費です。
ですから、人に関わる生産性の数値を理解するということは、リーダーとして、優先すべき重要責務であると言えます。
特に、スーパーマーケット企業においては、他業態との競争も考えれば、今後の競争優位性の上から、業務改善の重要性が求められます。
ところが、多くの企業において、このことが正しく理解されていません。
特に大事なことは、人件費という費用の前に、日々のプロセス管理として、
人時売上高(売上高÷投入人時)と人時生産性(粗利益高÷投入人時)を正しく理解し、改善を加える必要が有ります。
人時売上高を上げるには、
1.各担当者の作業スキル訓練
2.作業手順の見直し
3.道具の見直し
4.作業指示書の活用
5.カートなどの道具の効果的活用
などを行うことによって、各作業の処理スピードを早めることが出来ます。
また、
1.不要在庫の削減
2.アウトソーシング
などによって、店内作業の種類と工数自体を削減することも重要な要点となります。
人時売上高は、同じ部門でも、企業、店舗によって、1~2割程度の差はザラにあります。
この差を埋めることが出来れば、大きな生産性の向上に繋がり、人手不足の解消効果が期待できます。
人時売上高は、企業の競争力に大きく関わる数値であるため、外部利害関係者も含めた作業(業務)全体と仕組みの見直しを行い、人時売上高の向上をはかる努力を継続的に行うことが重要です。
一方、人時生産性ですが、営業戦略や部門特性に大きく関わる数値です。
高い低いという単純な数値判断は危険です。
簡単に言うと、特に付加価値を生まない作業であれば、投入人時を削減する方向を考えます。
仮に粗利益率が低くても、それに関わる投入人時が低ければ、人時生産性は高くなります。
部門でいうと、加工作業の無いグロサリー部門がこれに当たります。
逆に、他社(店)との差別化をはかる上から、『手作り』、『出来立て』、『作りたて』などにこだわり、商品の付加価値を高めたい惣菜部門などでの場合、投入人時を多くしても、その分商品の値入率を高くできれば、人時生産性を向上させることが出来ます。
差別化戦略として、独自性を打ち出したい場合など重要なポイントです。
しっかり押さえておきたいところです。
只、言うまでもなく、値入率が高くすることが出来ない場合や、値入率が高くてもロスが多く、結果的に粗利益が低い場合は、人時生産性は低位になってしまいます。実行の有無の見極めが重要です。
重要なことは、人時売上高は投入人時と『処理量(出来高)』の関係であり、人時生産性は、投入人時と『付加価値(出来栄え)』との関係だということを理解し、戦略と改善の方向を間違えないようにしなければなりません。
■ 在庫に関わる数値
生産性に大きく関わり、スーパーマーケットの営業戦略上、重要な数値になります。
以上のことから、無視してはいけない重要なものが『不要在庫』です。
店舗運営上、在庫管理で念頭に置くべきことは、
1.お客に高鮮度の商品を届けるというコンセプト
2.店内作業の無駄を省く(作業工数を削減する)という生産性との関係
という概念と視点が、重要になります。
特に、実地棚卸し在庫の総額だけを見て、良し悪しを判断することは非常に危険です。
在庫は、棚卸し日の金額よりも、日々の在庫量とその質が重要であり、実地棚卸し日の帳簿上の在庫金額や、そこから導き出される在庫日数や回転率などは、店舗運営(戦略)上ほとんど役に立ちません。
具体的に言うと、バックルームの停滞在庫は、不要であり全く必要ありません。
売場の在庫については、日々の販売数の多い回転率が高い単品の陳列在庫を多くして、回転率の低い在庫が低位に保たれていることが重要です。
■ 在庫は、『金額』より『質』と『数量』を管理することが意味を
生鮮部門では、売場でボリューム陳列した後の売場の陳列在庫の金額を知ることが重要です。
そして、「お客に高鮮度品を届ける」という観点から、各単品の在庫量が重要です。
蒸散作用が活発な葉物野菜や土物野菜というように、商品特性や日々の販売量などに対して、陳列量が適正かが重要なポイントです。
閉店後や、在庫を減らした後の棚卸し金額などは、財務上も、営業上も、あまり意味のない数値と言えます。
例えば、野菜など、相場が高騰すれば、当然のことながら、在庫金額は高くなる傾向にあります。土曜日が棚卸し日であれば、日曜日分の在庫を余分に持つ必要がある企業がほとんどでしょう。
また、実地棚卸し日だけに在庫を減らすということは、『お客様の視点』と『営業管理上』、絶対にやってはいけません。
売れ筋商品の欠品を起こし、チャンスロスを発生させ、何といっても、お客の不満のもとになります。
当然、人時売上高も、人時生産性も、売上高や粗利益も低下させてしまいます。
在庫は、減らすということではなく、単品ごとに「適正に保つ」ということが重要なのです。
「お客様に、地域一番の高鮮度品をお届けする」という、コンセプトを持って、そのために必要な仕組みを構築して、日々の管理を行うことです。
また、商品の仕入れ原価を気にする人は多いのですが、無駄な在庫によって、実質的に商品原価を押し上げていることを理解している人は少ないように思います。
不必要な在庫は、商品移動や在庫確認などの管理作業に多くの人時を投入することになりますし、汚損や破損、日付切れ等の商品ロスを発生させてしまう可能性も高くなります。
無駄な在庫は、保管する場所の家賃も掛かります。
このように、管理経費の増大を招き結果的に商品原価を押し上げることになります。
在庫予算は、鮮度や量、作業状況など、現場の状態をよく確認して、適正値を設定することが重要です。
■ 商品ライフサイクルと重点商品の“戦略的売り込み”
商品を管理し、戦略的に売上を向上させるために押さえておきたいことが、『商品ライフサイクル』です。
上手に活用すれば、大きな利益に繋げることが出来ます。
具体的には、下のグラフをご覧ください。
これは、野菜の主要アイテムの月単位で捉えた、年間のライフサイクル表です。
特に、トマトや胡瓜の売上が特出していることがわかります。
そして、月毎(季節毎)の変動や、時季的に強い時期と弱い時期などが有ることが読み取れます。
商品ライフサイクル効果的な活用方法としては、
①売上の高いアイテムを集中的に管理して、月単位で売上高(粗利益高)を伸ばす
②各アイテムの上昇期(導入期、成長期)に集中して、 〃
③①②のために、それをマグネットで展開して、視認率を上げて売場展開する
④各アイテムの、上昇期や下降期を理解して、優先順位をつけて売場展開する
など、戦略的に売場展開することで、確実に大きな成果に繋げることが出来ます。
■ PI値の戦略的活用
PI値は、来店購買客1000人当たりの、販売点数と売上金額のことです。
例えば、来店客数が3000人で、販売点数が20個で、売上金額4,400円の場合、
数量PI値は、20÷3000×1000で、6.6品、
金額PI値は、4,400÷3000×1000で、1,466円ということになります。
金額PI値の高いものについては、
①フェイシング拡大する
②陳列位置の変更などによる販売促進策を取る
などを行い、支持率の高い商品の拡売をはかります。
数量PI値の高いものについては、
フェイシング拡大する
陳列位置の変更などによる販売促進策を取る
陳列量を増やし商品回転率を落とし、売場管理のための人時(工数)を減らす
〃 、チャンスロスを防止する
など、売上(粗利益)高アップと、人時削減をはかるための具体的行動を行い、売場の生産性を向上させます。
具体的な品目としては、ビール関係やペットボトル飲料などは、ドライ・グロサリーの中でも金額、数量PI値ともに高いカテゴリーになります。コーナー全体の売場尺数の拡大を行います。
また、POSデータのベストレポートを活用して、カテゴリー(コーナー)別の販売数量(金額)順で、ランク分けを行い、
①プライスカードに、ランク別に色分けシールなどを貼付して目印を付ける
②電子棚札の場合は、ABCなど暗号表示を行う
ことなどによって、販売数量(金額)の『見える化』を行い、棚割り変更などを行う。
また、これらのことにより発注精度の向上や発注作業のスピードアップを実現することが可能となります。
この様に、売場を科学して管理することにより、欠品削減や人時削減など、大幅な生産性向上をはかるとともに、担当者の心理的、体力的負担を軽減することも可能となります。
前述した、人手(人時)不足対策にも大いに貢献することが出来ます。
■ 売上を上げる『たった3つの数値』
売上を上げる方法は、
1.客数を増やす
2.単価を増やす
3.来店(購買)頻度を増やす
しかないのです。
どの様なビジネスにも例外なく言えることです。
簡単な話、この3つ数値の向上のために、日々如何に多くの時間を使って、無駄なく正しく具体的に行動することで、売上高(儲け)アップを確実にします。
言われてみれば、当たり前のことなのですが、本当にその考え方とその行動を取る努力をしているかが、未来の売上高の差になってくると言えます。
『客数アップ』については、新規客を増やすことや、休眠顧客を再来店に促す活動をすることです。
①新聞折り込み広告による、集客のための低価格の特売品の提示
②トレンドや希少性のある商品、各種人気企画のお知らせ
などによって、商圏内の潜在顧客の来店を促す仕掛けを戦略にすることです。
『客単価アップ』については、来店してくれている顧客に、
①あと一品買ってもらう
②単価の高い商品を進めて買ってもらう
ことなどです。
あと一品買ってもらうには、
関連購買、想起購買、衝動購買、条件購買を理解した売場づくりが効果的です。
関連購買は、広告掲載アイテムや重点管理アイテム、メニュー提案などに関連して、部門を超えた用途(メニュー)関連陳列を徹底して行います。
このことによって、単品の大幅な販売量拡大に繋がります。
想起購買は、関連陳列を行うことや主要通路への露出度を高めることによって視認率を高めて、お客の『買い逃し』を無くさせることを目的に行います。
衝動購買は、特に嗜好性の高いものや、トレンド品などを衝動買いしてもらうことです。
お客が、目的の商品を籠に入れ、レジに向かう途中の主通路に売場展開すると効果的です。ターゲットである女性が好む、和洋スイーツの売場展開などがこれに当たります。
条件購買は、「本日限り」「100個限定」「○○を買った人に・・・」「○○に予約してもらうと・・・」など、条件をクリアすることによって、お客が特典を受けられるというような仕掛けで、購買に繋げてもらうことです。
これらのことを理解した、単品ごとの計画的な売場展開が、買上げ点数アップに繋がります。
また、単価の高い商品を進めて買ってもらうには、
営業POPや有人試食(推奨)販売などによって、お客の購買決定の背中を押す直接的な活動が、大きな効果を生むことになります。セルフサービスだからと高をくくっていてはいけません。
そして、ここで覚えておいてほしいことが、フロントエンドとバックエンドです。
フロントエンドは、『集客』のための活動を徹底的にやることです。
バックエンドは、来店したお客に、「美味しい」「楽しい」「面白い」「健康」「簡単便利」など、お客に『嬉しい良い体験』を実感してもらえるような売場づくりやイベントを行う活動をすることによってということです。
このことによって、来店したお客の買い上げアップに繋がり、粗利益のアップにもつながります。
そして、そのお客の『嬉しい良い経験』が、次の再来店と繋がるのです。
これが、マーケティングの原則です。
■ 門の売上高をアップさせる重要数値
部門の売上高を数式に直すと、
店舗客数×支持率×一客点数×一品単価ということになります。
部門の管理数値として、週単位または月単位で推移表にし、カルテとして活用することを強くお薦めします。
支持率を向上させるためには、スーパーマーケットの基本である鮮度や品質、低価格(相対価格)などを重点的、継続的に高位に保つことが重要です。
特に、支持率が2週続けて低下した場合などは、現場の鮮度レベルや品揃え、価格設定や競合店の状況などを即時確認し、必要に応じてスピードを持って改善を行う癖付けが必要です。
一客点数は、一品単価と相反しやすい数値です。
野菜など、相場高の時は、お客の買い控えから一客点数が低くなる傾向が有ります。
対応としては、『使い切りサイズ』などで売価を下げて、買い易い状況を作ることが効果的です。
1客点数を上げるには、100円均一などで、買いやすさを打ち出した企画などが効果的です。また、支持率と同じように、日々の鮮度や品質に対する絶対的な信用が高いことが数値を引き上げることは言うまでもありません。
そして、開店時や夕方などの欠品を無くす対策は、即効性が有ります。
一品単価は、冬場の土物など大容量のSKUを増やすことや、ギフト企画など内食以外の消費を促すことによってアップさせることが可能です。
基本的には、お客にその品質に納得して貰えるような品質の高い商品を仕入れて、他店や自店の他の商品との違いを明確に打ち出して、販売すると効果的です。
その場合、付加価値の高さを、POPや試食販売などで、お客に情報を伝える活動を積極的に行うことが重要です。
ここで、弊社がマーケティング力をアップするための重点アイテム(企画)管理の実績数値が有りますので紹介します。
野菜の最重点管理アイテムである、トマト(売上高年間1位)の売上を伸ばすための売場展開やプロモーションを行った事例です。
①第一平台のマグネットで展開
②付加価値の高いものを重点販売
③試食販売を強化
④関連販売、メニュー提案の徹底
➄相場高の中でも、支持率が確実に上昇
⑥トマトの売上高・前年対比は、170%前後で推移
この様に、お客の支持(ニーズ)の高いアイテムを伸ばすことによって、売り場全体の数値を押し上げることに繋がるのです。
■売場に関わる数値
先月の記事で、レイアウトのことを取り上げましたが、主要通路の長さと質(量)が重要な数値になってきます。
具体的には、
①各マグネットの評価順位
②視認率
③通過率
④立寄り率
⑤接触率
⑥買上げ率
などですが、実際に実店舗で調査をして、時間的、金銭的に数値化することは難しいと言えます。
しかし、これらの数値をイメージして、各マグネットの売上高、陳列演出、効果的POPの掲示などを意識して、売場づくりを行うことが、確実に成果を生むことに繋がります。
特に、売上の低い主通路のマグネット売場は、売場のマンネリ化と費用対効果を考えて、早急に改善すべきです。
■ ゴール設定と目標設定と評価
売上高と粗利益高だけの目標設定では、人時管理や人件費管理、在庫高管理などが甘くなってしまいます。
これでは、競争の厳しい中で、中長期的に営業利益を出し続けることが年々難しくなってきます。
次回の記事では、部門損益管理について述べますが、
何を目標にして日々活動するか。中長期には、ゴールをどこのレベルに設定するのかによって、現場の行動プロセスは必然的に変わります。
ビジネスの目的である、営業利益を、部門、店舗の目標として、
①営業利益目標(予算)とそのための取るべき行動の確認する
②目標達成のための各プロセスの目標管理数値を設定する
③実績データと目標のギャップを定期的に確認し共有する
④適宜、週単位、月単位で、各プロセスの修正を加える
ことを仕組みとしていくことが必要です。
そして、結果だけを観るのではなく、改善活動の各プロセスの実行状況を現場で確認して、公正な成果報酬へと繋げる人事考課制度(仕組み)が、より良い結果へと結びつけることになると考えます。
⇒ 商人舎Magazine12月号・WEB版
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■ 『スーパーの営業戦略』 その他の参考記事
参考記事はこちらから、ご覧ください ⇒ スーパーの営業戦略
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