15時の鮮度チェックが、売上と生産性と営業利益を大幅にアップさせる! スーパーマーケット重要戦略
店舗レイアウトを改善することによって、販売力や生産性を大きく向上させることが出来ます。
新店舗の開発や既存店のリニューアルは勿論ですが、既存店でも、平台の位置や数、形を変えるだけで、販売実績を向上させることが十分可能です。
また、各部門のバックルームや事務所なども、作業導線や什器備品の設置位置を変更するだけで、生産性を大きく向上させることも出来るのです。
新店舗開発や店舗リニューアルは、数千万円、数億円という非常に大きな投資が必要になりますが、レイアウトに関わる原理原則を勉強していない会社は少なくありません
そして、理解しておきたいことが、レイアウトとデザインは、イコールではないということです。
店舗レイアウトは、通過率や視認率、立寄り率などや移動距離など、科学的な要素を深く持つ一方、店舗デザインは、楽しさや綺麗さや豪華さというような、お客の心理的価値に大きく関わるものです。
全く別物ということではなく、本来レイアウトが、売場づくりの基盤にあると言えるでしょう。
今回は、その細部を解説しながら、あるべき形のポイントを押さえていきます。
■ バックヤードが狭くなれば売り場が広くなる
「君のレイアウトには、広いバックルームが有るじゃないか・・・」
今も忘れられない、日本リテイリングセンターの故・渥美俊一先生から個人面接の時に言われた言葉です。
その当時(20年ほど前)、私は、開発部では有りませんが、標準化推進室という業務改善を推進する部署のリーダーとして、店舗レイアウトの設計担当をしていました。
ペガサスクラブの店舗レイアウト・セミナーの時に、ある新店舗の計画図面を作成して持っていき、渥美先生に見ていただきました。
図面を机の上に広げると、先生はいきなり、「君のレイアウトには、広いバックルームが有るじゃないか・・・」とおっしゃいました。
私は、正直「えらいことを言うな、このおっさん・・・」と思いました。
それは、私が、全く考えてもいないことでした。
しかし、今でもそのことを、はっきりと覚えている理由は、「視点が違う」ということです。
あまりにも勉強不足で、解っているつもりの自分に喝を入れてもらったという思いでした。
地価が高ければ勿論ですし、それが安い地方でも、投資対効果を高めるという意味では、売場を広げるということを絶対的に考えなければいけません。
単純なことなのですが、限られた面積の中で、パックルームの広さは、売り場面積と反比例します。
狭すぎて、生産性を下げるようでは意味が有りませんが、重要な視点であることは言うまでもありません。
また、物流改善やアウトソーシングなどを行い、仕掛り品などの在庫を低減することや、在庫棚の設置を効果的に行い、床から天井までの空間を縦に無駄なく利用するなど、バックルームが狭くても、十分機能する仕組みを構築することも併せて考えなければなりません。
■ 売上を上げやすくする、売場レイアウト設計
売場のレイアウトを考える上で重要な事は、
1.消防条例に関わる主要通路幅や避難路計画などのコンプライアンス
2.機械室と各冷蔵陳列ケースの配置位置による、冷媒配管などの資材費などのイニシャルコスト
など、設計段階で重要な要素です。
そして、売上を上げるという観点からは、
1.物理的に限られた面積の中で、より長い主要客動線をつくる
⇒売場のエントランスからレジまでの距離を長くする
2.主要客動線に効果的にマグネットを配置することとその数を増やす
3.主要客動線に、死に場所を出来るだけ作らない
ということなどを考えることが重要です。
特に、固定型の冷蔵ケースやゴンドラは、設置後簡単には移動できませんし、移動には多くのコストが掛かりますので、計画は慎重に行わなければなりません。
■ 売上を上げるマグネット設定で、結果を出すレイアウトを知る
先ほど述べたように、長い主要客動線を確保することと、その主要客動線に効果的にマグネットを配置することが、『売上を上やすい』売場をつくるための重要なポイントです。
それでは、それとは逆に、勿体ない事例を幾つか紹介し、効果的な修正案を紹介します。
(1)エントランスからの主要客導線の設計ミス
左方向が主要客導線でが、入口を入ってすぐの幅が広すぎて、右の方が死に場所になりやすい状態です。
特に、ショートタイム・ショッピングで、鮮魚や精肉売場に向かうお客の行動を考えれば、売場へ入って、ゆっくり左右に買いまわらせるには、無理があります。
特に果物などの嗜好品については、買上げ率を高める意味から、通過率の高い客導線上に売場を設定することを考えることが重要となります。
<修正前>
<修正後>
(2)長い冷蔵平ケース
主要通路に、大型の冷蔵平ケースや平台を設置している状態です。
この場合、冷蔵平ケースの裏側と、ゴンドラ・エンドは、完全に通過率と視認率が落ちて、マグネット売場としての効果が大幅に低下してしまいます。
<修正前>
<修正後>
基本的には、生鮮品や日配品とゴンドラ・エンドのゾーニングを考え用途関連の陳列を行い、関連購買による買い上げ単価アップを促すようにします。
また、マグネットの死に場所を少なくすることによって、売場効率を高めます。
(3)ゴンドラ・エンドの設定ミス
やってはいけない極端な事例です。
ゴンドラ・エンドが、お客の順路から見て正面を向いていない状態です。
この場合、お客は振り返らなければ、ゴンドラ・エンドの正面を確認できません。これでは、折角の強いマグネットの効果を発揮できません。
客導線上の視認率を確実に上げるためには、ゴンドラの向きを全体に修正する必要が有ります。
<修正前>
<修正後>
(4)レジ位置で主導線の長さが決まる
主導線の長さが長くなると、マグネットを増やすことが可能になります。
下の図のレイアウトの場合、レジの位置が左側(入口方向)に移動すると必然的に、客導線が長くなります。
同時に、移動したレジの後に、通過率の高い非常に強いマグネットが出来ることを理解していただけると思います。
たった一つのマグネットで、年間相当な売上と粗利益を叩き出すことが可能となります。
■ グロサリーの定番の通過率は低い
グロサリーの定番売場は、お客が「あれが欲しい」という『目的買い』の売場です。
主通路に比べて、通過率が極端に低いことを良く理解しなければなりません。
ですから、
1.お客が、見つけやすく、選びやすい売場を作る
2.想起購買や関連購買によって客単価を伸ばす売場を作る
ということを、原理原則として理解しておいてください。
商品を見つけやすいように、コーナー化と用途関連を徹底して行う必要が有ります。
ですから、ゴンドラの連結が短いと、その用途関連の売場を完成して作ることが出来ません。適正な連結台数を確保することが必要です。
それと、現場で時々見かけるのが、中通路のゴンドラ・エンドに、定番売場を設置しているケースを見かけますが、はっきり言って感心しません。お客は、商品を探すのに苦労します。
先ほど申し上げたように、通常の定番で用途関連を徹底して、商品を探しやすい売場を作ることを心がけましょう。
上記の事例程度であれば、中通路を取らずに、通路全体の関連を徹底すべきです。
■ 生産性を向上させる、バックヤード・レイアウト
バックヤード・レイアウトの設計で重要なことは、生産性です。
そして、生産性を上げる上で考えなければない重要なポイントは、『物流』と『作業効率』です。
スーパーマーケットは、小売りやサービスだけに留まらず、生産や物流などの側面を持っています。
生産者から、末端の消費者に商品を流すという技術は、無駄なく、短時間で、より鮮度のいい状態で、ということを考えなければなりません。
全体の物流の中で、最終お客様に商品をお届けする最終段階を担当するのが、店舗の役目です。
特に店内では、作業導線を科学するという概念が必要になってきます。
バックヤード・レイアウトで重要な概念は、
1.納品から陳列までの運搬のための移動距離を短くする
2.切付け⇒盛付け⇒包装⇒値付けと、積込み⇒陳列(売場)の作業導線を短くする
3.1.2.に関わる荷受け場の位置、通路幅や経路、設備などを科学的に配置する
ことなどです。
特に、最初のこれらの設定を誤ると、長年無駄で非効率な店内作業を繰り返すことになり、投資効果を低下させ、作業効率の低下を招きます。
バックルームレイアウトは、限られた条件や制約の中で、最高のレイアウト設計を考えなければなりません。
■ 実地検証を行う
レイアウトの効果を高める意味で、マグネットの効果測定を定期的に実施することも重要です。
方法としては、POシステムを活用した、販売金額や数量を確認することです。(定量データ)
各エンドや平台などの陳列商品をグルーピングして、ストコンに登録して、定期的に売上データをチェックするのです。
また、開店時間中に売場に出て、お客の買い回り状況を確認することで、『通過率』や『立寄り率』『視認率』などを目視して確認します。
特に、通過率や立寄り率の悪い売場については、平台などの移動を行うなどして、修正を加えることをします。
マグネットの数と質(通過率と視認率が高い状態)は、売場のレイアトでは、非常に重要なことなのです。
上記の検証から、必要であれば、適宜修正を加えることが、効果的です。
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