『お客と社員に支持される生産性向上策』 【新連載】      商人舎Magazine3月号・原稿

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットの経営戦略


私は、スーパーマーケットを中心に、業務改善のコンサルティングをさせていただいています。

業務改善というと、今一つピンと来ない方も多くいらっしゃるのではないかと思いまが、平たく言ってしまうと、会社の営業利益を倍増させるためのコンサルティングです。その為の作業改善や会社全体の仕組みの見直しなど、良い結果を出すための『仕事の仕方』を皆さんに教えています。

スーパーマーケット業界は、(一部の優良企業を除き)生産性が低く、営業利益と従業員報酬が低位安定している会社が少なくありません。
また、業務改善や効率化と聞いて、ケチケチ経営をすることと考えている人もいます。また、儲けることが悪いことだと思い込んでいる人もいます。しかし、これらは、全くの間違いです。
ビジネスを遣っている以上、高い利益を継続して出し続けることが、経営者や経営幹部の仕事であり能力です。

会社の利益が高ければ、従業員の報酬アップを実現できます。新規出店や既存店のリニューアル、生産性の高い設備の導入という様な投資が可能となります。
そして、従業員のスキルアップにつながる教育訓練や職場環境の整備も可能です。顧客に対して、更なるサービスの向上のための、商品開発やイベント企画などへの投資も容易になります。
そして、これら日々の活動の結果が、お店に対するお客の支持をさらに高め、会社の利益の向上へと繋がる。という、正しい経営のサイクルを、戦略的に回すことが可能となるのです。
ぶっちゃけ、儲かっていなければ、何も出来ません。何もしなければ、相対的に退化していくことになります。

ただ、業務改善には、前提条件か有ります。それは、『お客様満足』と『従業員満足』の追求です。この2つなくして、会社は継続的な発展は出来ません。


結果を変えるためには、『考え方』と『やり方』を変える


長年、現場で、色々な企業のオペレーションを観て来て気付くことがあります。それは、生産性の低い『作業』と、それを支える『仕組み』の無い企業が多いことです。
もっと、「楽に」「簡単に」「早く」出来る方法があるのに、という、勿体なさです。
目先の売り上げに気を取られ、そのことに“気付いていない”オーナーや経営幹部も多くいます。

私は、その原因は、高度成長期やその後の成功体験が、スーパーマーケットに生産性という概念を、生みにくくしてまったように思います。
ところが現在は、スーパーマーケット同士の競争だけに留まらず、ドラッグストアやコンビニエンスストア、業務スーパーなど、業態を超えて、食品という市場のパイを奪い合う環境になってしまったのです。そして、地方では、過疎化や高齢化が、それを助長します。
「売上が、全ての問題を解決する」といった環境は、もはや地方には有りません。

先ほど、目先の売り上げと申し上げましたが、これは一時的な効果でしかないという意味です。確かなオペレーションや仕組みが、継続的に会社を支えてくれるのです。
これから、スーパーマーケット業態の会社が、成長発展し続けるためには、「生産性を上げる」という方向に舵を取る必要があります。
そして、そのスタートを早く切ることが重要です。


生産性が低いという意味の正しい理解


特にスーパーマーケットは、戦略部門である生鮮4部門を有し、それらが、競合店に対しての差別化要素である反面、人時(実質・総労働時間)を多く必要とする業態です。
企業間の差は有りますが、概ね売上高比10%前後が人件費です。これは、販促費や地代家賃を抑えて断トツに高いものです。ですから、スーパーマーケットの人件費は、生産性を考える上で、非常に重要な要素であり、会社の営業利益に大きな影響を与えます。

事実、売上高が同程度の企業や各部門で、人時売上高や人時生産性が、1~2割程度の開きは、ザラにあります。
ですから、スーパーマーケットに於いては、人時売上高や人時生産性について、深く理解して、戦略的な改善を行う必要があります。そこに、まだまだ大きな可能性が隠れています。
そして、それが、今後の競争優位性へと間違いなく繋がっていくのです。


生産性と部門特性を理解する


例えば、人時売上高ですが、個人個人の『作業スキル』とそれらを支える『仕組み』の出来不出来が会社の数値を作り上げます。一方人時生産性ですが、こちらは、1人時当たりにアウトプットされる『付加価値(粗利益額)』のことです。

人時売上高も人時生産性も、部門の特質や営業戦略に沿った考え方が、正しく社内で共有されていることが重要です。
例えば、グロサリー部門は、人時売上高追求型部門と言えます。競走上、NB商品を中心に低値入を余儀なくされます。しかし、粗利益が20%でも、オペレーション全般の改善を行い、人時売上高5万円であれば、人時生産性は、1万円を上げることができます。
一方、惣菜部門は、人時生産性追求型部門です。お客に出来立てを提供する場合、インストア調理の比率が高まります。そして、それに関わる作業工数が増え、人時売上高が、5~6000円のお店も多くあります。付加価値を上げて、値入を追求し、粗利益を50%にしても人時生産性は、3000円程です。これらが部門特性です。

ですから、部門特性をよく理解して、戦略を組む必要があります。どちらにしても、各数値の持つ意味を正しく理解して、改善作業の方向性を誤ることのないように注意する必要があります。


部門別損益を考える


「あなたの会社(店舗)では、どの部門が一番、儲かっていますか?」と聞くと、全く答えが返ってこなかったり、的外れな答えが返ってきたりします。

売上だけを追っている会社と、営業利益を追っている会社とでは、日々の活動の中身が違ってきます。
極端に言うと、売上を上げるだけなら、粗利益率が低くても、人件費や販促費等の経費が少しぐらい高くても問題はありません。また、粗利益率を上げるだけなら、人件費など多少高くなることは、問題ではありません。
しかし、営業利益を上げる(儲ける)ためには、そうはいきません。当然のこととして、費用対効果を考える必要があります。

中小零細のスーパーマーケット企業の中には、店舗の損益表が現場に示されていない会社も多くあります。そして、部門の損益表に至っては、算出されている会社はとても少ないと言えます。
そして、店舗の損益表が出ていても、その改善活動を遣っている会社も少なく、改善の方法が分からない場合が多いと言えます。

部門損益が出ていれば、会社の弱みと強みもハッキリします。営業戦略を科学的に積み上げやすくもなるのです。


業務改善から得られた事実


業務改善の実績事例を一部紹介させてもらおうと思います。

・月、620万円の営業利益を向上させた、高級スーパーの店長


・経常利益を2倍にした、片田舎のスーパーの部門チーフ
・営業利益を6倍にした片田舎のスーパーのオーナー
・年間、3億円の営業利益を向上させた、リージョナル・チェーンの部門長

この様に、業務改善によって、記録的な業績を達成した多くのリーダーがいます。これらの方々は皆、『考え方』を学び、『仕事の仕方』(行動)を変えたのです。
彼らは、仕事の量を2倍にした、とか、重労働をこなした訳ではありません。むしろ、全く逆です。不必要なことをやめて、遣るべきことをやったのです。念のためですが、皆さん特別な資質や能力を持っていた訳でもありません。素直に理解し、行動してもらっただけなのです。
そして、大きな金銭的投資をした訳でもありません。投入人時も全体として、大幅に削減しています。

『考え方』をどうすればいいのか。『やり方』をどう変えればいいのか。具体的には、オペレーションや仕組みに至るまで、事例を交えながら、今後の記事で紹介していきます。


【コンセプト、原理原則を伝える・・・経営者、経営幹部の必読書】
商人舎Magazine 3月号


【お役立ち:関連記事の紹介】
人手不足ではない! 生産性が低く過ぎる!
従業員満足のための業務改善が、『高い生産性』を生む!
生産性の向上に舵をとれ!
会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (前編)



★★★★★『スーパーの経営戦略』 その他の参考記事★★★★★

■ 参考記事はこちらから、ご覧ください ⇒ スーパーの経営戦略 


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新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングと作業改善、そしてコスト削減。他では教えてくれない理論と実地指導で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

新谷千里プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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