任意後見人として働くまで、あと少し ☆成年後見vol.10⑨☆
こんにちは、司法書士佐井惠子です。
10年ほど前、後見制度がスタートした頃、今の社会を想像できていたでしょうか。
銀行窓口を代表とする様々な手続に、本人確認が厳しくなり、
例えご家族といえども、ご本人に代わって、あるいはご本人として手続ができなくなってきています。
任意後見契約は、
委任者が、受任者に対し、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における
自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の「全部または一部」を委託し、
その委託に関する事務について代理権を付与する委任契約です。
この契約は、将来を心配して、今、締結するものです。
自分が気になっているのは、「このことだけ」。
他は親族でも何とかなるし、何から何まで全部代わってやってもらわなくても良い等と、
そう思っている方がいるかもしれません。
確かに、「一部」を委託する任意後見契約は有効だと言いました。
でも、それは有効ではあっても、不充分です。
任意後見契約では、代理権を広く「全部」をカバーするようにしておくのがポイントです。
その理由は、いざ任意後見人が働く場面で、
代理権の範囲の外の事務をする必要がでてきた場合には、任意後見人では対応できません。
それならばと、法定後見制度を利用するとなると、任意後見契約は効力を失ってしまいます。
任意後見と法定後見は並立しないのです。
せっかく、「このことだけは。」と、本人が契約していたことが叶わなくなってしまいます。
任意後見契約の場合、代理権の範囲を広くとっておいても、
本人の行為能力を制限するものではありません。
つまり、代理権の範囲を広くとっても、それによって、本人のできることが狭められるという心配はありません。
本人もできるし、任意後見人も必要とならば代わってできるということです。
任意後見人が働くような事態とならないことが、ご本人にとって一番幸せですが、
そうなるときが、10年後あるいは15年後となると、
その頃、私たちの想像を超えている社会になっているかもしれません。
任意後見契約を締結するときは、考えられる「全部」を、
1人の任意後見人に、あるいは複数の任意後見人に委託するようしたいものです。
笑顔の和が広がりますように
司法書士佐井惠子
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