成年後見人の「身上監護」とは ☆成年後見vol.9⑫☆

佐井惠子

佐井惠子

テーマ:成年後見と資格制限




こんにちは、司法書士佐井惠子です。
成年後見人の仕事は、ご本人の「財産管理」と「身上監護」です。
この「身上監護」の意味がわかりにくい。
「後見人自ら看護するのですか?大変ですね。」と、言っていだくことがあります。
「看護」と、「監護」ちょっと違います。もちろん、「介護」でもありません。
今日は、「身上監護」についてお話しします。

ある介護老人保健施設(「老健」と言っています。)に、ご本人に付き添って入所したときでした。
車いすに座ったご本人に、「さあ、お部屋にご案内しましょう。」と、事務の方が話しかけて、
私に、車椅子を押すようにと促しましたが、
「私は、車椅子を押す訓練はしていません。どなたか、施設の方に押してもらいたいのですが・・・。」
と、お願いしました。

誤解を恐れないで申せば、そう言ったのは、実は、訓練の有無ではなく、
車椅子を押すことは、後見人の仕事ではないからでした。
仕事でないことでも、手を出すことはいくらでもありますが、
ご本人に怪我をさせる可能性のあることは、緊急でない限りは控えるようにしています。
そこが、自分の親に対するのとは違うところです。
施設内ですので、人手はあります。介護士さんが車椅子を押してくださいました。
事務の方も、押せないこととなっていたのですね。

長くなりましたが、「身上監護」とは、自分が手を差し伸べるというよりは、
ご本人が「快適に、楽しく生活する環境を整えること」だと思っていただいていいと思います。

具体的には、
①医療に関する契約や医療費のお支払。病院に対して、ご本人に代わって要望を出したりもします。
差額ベッド代について、交渉をすることもあります。

②介護に関する契約もあります。要介護度の認定請求や不服申立。介護サービス契約や介護事業者の選定。
介護費の支払いもあります。

③住居に関する契約
 日常生活を送るのに、問題はないのか。必要があれば、手すりをつけたりといったリフォーム契約も含まれます。

④施設の入所に関する契約や、施設への支払い。カンファレンスにも出席します。
 施設内クラブ活動も、施設の方に相談に乗ってもらいながら選定します。

⑤全額自費で、お散歩やリクレーションの契約をして、楽しく活気のある生活ができるようにするのも、含まれます。
 費用の支払いや契約の締結、何をしてもらうかの相談もあります。

「身上監護」では、ご本人の代弁者として、注意して見守ります。
そして、あくまでも裏方に徹します。
笑顔の輪が広がりますように。

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