任意後見契約の特色と、代理権の範囲 ☆vol.11⑨☆
こんにちは、司法書士佐井惠子です。
事業経営されている方にとって、後見制度は、最も離れた存在と感じておられるでしょう。
後見制度の説明においても、いつも映像は、ご高齢の方ばかりです。
ところが、若い経営者であっても、
事業を継続するためのリスク回避として、検討いただく必要のあるケースがあります。
今日の話が参考になれば幸いです。
事業を経営する方にとって、運転資金の確保は常に考えておかなければならないこと。
金融機関からの融資にあたっては、会社の不動産を担保とされていますか?
あるいは、社長自身の不動産を担保に融資を受けていらっしゃいますか?
中には、先代社長の不動産であったり、親族所有のものを担保に、
銀行から、融資を受けている場合もあると思います。
もし、親族が認知症を発症したとしたら、どうなるでしょう。
事業拡大のため、新たに融資を受けるということになって、
いざ、担保権を設定したり、根抵当権の極度額を増額するとなったときに、
銀行は、判断能力に心配のある方との契約(担保権設定契約)はできないため、
その不動産を担保に、融資を受けるということはできなくなってしまいます。
この場合、あわてて法定後見人を選任したとしても、
その後見人は、代わって担保権の設定や極度額の増額は行うことができません。
なぜなら、法定後見人は、例えご本人がお元気であるなら、先代社長として、
進んで、会社のために自己所有不動産を担保に提供するお考えであろうと思ったとしても、
ご本人の財産を損なう恐れのある行為はできないからです。
ご本人の資産状況にもよりますが、
任意後見契約のいいところは、無制限にというのは難しいと思いますが、
担保提供のルールを決めるなり、限度額を定めておくなり、契約の内容を工夫しておくことで、
任意後見人がご本人に代わって担保提供等の法律行為をする可能性を残すことができるところです。
もちろん、名義を移すことができればいいですが。
中小企業にとって、リスクは自然災害だけではありません。
司法書士佐井惠子
http://sai-shihou.com