第16回 その「フィードバック」は、相手を動かしているか?

数字の目標を追いかけるあまり、スタッフから笑顔や活気が消えていませんか? あるいは、良い雰囲気を作ることに集中しすぎて、利益目標が達成できていないでしょうか。 店舗運営の成功は、数字(定量)と感情(定性)の両輪をいかにバランスよく回せるかにかかっています。 第36回は、店長が数字とスタッフのモチベーションを両立させ、組織全体が健康的に成長したプロセスをお話しします。
前回、仕組みの改善によってカットフルーツの毎日展開を成功させ、利益を向上させた店長。売上の数字は確実に上がってきていました。 しかし、数字を追いかける中で、店長は一つの違和感に気づいていました。「売上目標は達成できているのですが、スタッフの表情が心なしか硬い気がします。昔のような活気が少し減ったというか、みんな目標達成のプレッシャーを感じているようです……」店長は、利益を重視するあまり、スタッフの感情や「働きがい」という定性的な側面を見落としそうになっていました。 私は店長に言いました。 「数字は『結果』であり、スタッフの『活気』が原因だ。定量的視点と定性的視点は、どちらも欠かすことのできない両輪だ。」
【数字と感情のメカニズムを理解する】私は店長に、二つの視点がどのように連動しているかを図式化して説明しました。
定量的視点(数字): 売上、利益、客数、ロス率など。経営の状態を客観的に示す。
定性的視点(感情): スタッフの笑顔、挨拶の元気さ、チームワーク、顧客の満足度など。数字を生み出すエネルギー源。
「数字ばかりを追うとスタッフは疲弊し、結果としてパフォーマンスが落ちて数字が悪化する。逆に、雰囲気ばかりを重視して数字を追わないと、経営が立ち行かなくなる。」
【数字をスタッフのエネルギーに変えるコミュニケーション】店長は、毎日の朝礼で数字を発表する際、その数字を必ず「スタッフの動き」と紐付けて話すようにしました。
× 数字だけの報告: 「昨日の売上は目標比105%でした。今日も頑張りましょう。」
〇 ストーリーのある報告: 「昨日の売上は目標比105%でした。これは、〇〇さんがカットフルーツをきれいに陳列してくれたことと、Aさんがお客様に笑顔で声をかけてくれたお陰です。今日も、その活気を続けていきましょう!」
この方法により、スタッフは数字を「ノルマ」としてではなく、自分たちの頑張りが目に見える形になった「成果」として捉えるようになりました。数字とモチベーションが初めてリンクしたのです。
【健康的な店舗が最強のブランドを作る】スタッフが自信を持って動くようになると、顧客は店舗の活気を感じ取り、来店頻度が増えました。そして、それがさらに売上という数字に繋がる、健康的なサイクルが生まれました。「数字と現場の活気が両立した時、スタッフは働く楽しさを感じ、結果としてお客様も喜んでくれる。これこそが私の求めていた店舗の姿でした」店長は、リーダーとしての総合的なバランス感覚を身につけました。
【コーチの視点】数字は店舗の「健康診断の結果」です。その結果を良くするためには、日々の栄養(スタッフのモチベーション)が必要です。 今、あなたの店舗は数字ばかりを見て、スタッフの栄養失調を見落としていませんか? 数字を達成した時、スタッフが誇りを感じられているか。それを常に問いかけ、数字と感情のバランスを維持しましょう。
次回は、「第37回 「時間が取れない」は、効率の定義を間違えている」です。


