第34回 「新潟産鮭」と「おにぎり」が教えてくれたこだわり

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



高利益率の商品を売りたいけれど、価格競争に巻き込まれてしまう。「安くしないと売れない」という思い込みは、顧客がその商品の本当の価値を知らないだけかもしれません。 第34回は、店長がこだわりの食材である「新潟産鮭」を、あえて「おにぎり」にして販売するというアイデアで、高単価かつ高利益なアイテムを育て上げたエピソードです。

前回、現場の細部に宿る顧客の声を見逃さず、愛着を持って接客する姿勢をスタッフに浸透させた店長。売場は活気づき、スタッフ一人ひとりが商品に対して自信を持ち始めていました。そんな中、店長は次の利益改善策として、以前から仕入れているこだわりの食材「新潟産の天然鮭」の売上を伸ばしたいと考えていました。しかし、この鮭は非常に美味しいものの、価格が高く、切り身として売るだけでは「高い」という理由で敬遠されがちでした。「この鮭の美味しさを、もっと多くの人に知ってもらいたい。切り身としての販売数には限界があるんです……」店長が悩んでいると、私は以前の会話を思い出させました。 「第32回で話した『新潟産鮭を地元の味として伝える』という目的を思い出そう。切り身で売ることにこだわらず、その美味しさを最大化して届ける方法を考えるんだ。」

【高利益の源泉は「ストーリー」にある】そこで私たちは、この鮭を使った「おにぎり」を店舗で製造・販売するというアイデアを形にしました。

価値の転換: ただの「高い切り身」から、「贅沢なこだわり鮭の入ったおにぎり」へ。顧客が支払う価格を、「食材の値段」から「食べる体験の価値」へと変えた。

こだわりを言語化する: おにぎりのPOPには、「新潟から直送された天然鮭を使用」「鮭の旨味を引き立てるこだわりの塩」「ふっくら炊き上げた地元産米」といったストーリーを記載した。

利益率の最大化: 切り身では価格競争になるが、おにぎりにすれば、「手間」という付加価値が上乗せされ、価格が高くても顧客は納得して購入する。利益率は格段に向上した。

【スタッフが作る「こだわり」の物語】店長は、このおにぎり作りをスタッフに一任しました。スタッフは「どうすれば鮭が一番美味しく見えるか」「どんなパッケージなら特別感が出るか」を自分たちで考え、愛着を持って製造に取り組みました。当初は「おにぎりにしては高すぎるのでは?」という懸念もありましたが、試食を出すと顧客は一口でその違いに気づき、次々と購入していきました。「ただ商品を右から左へ売るのではなく、素材の価値を引き出し、付加価値を付けることが商売の面白さなんですね」 店長は、高利益アイテムを育てる勘所を掴みました。

【コーチの視点】価格競争を避ける方法は一つです。それは、その商品でしか得られない「体験」を提供することです。 あなたが扱っている商品に、どんな「物語」がありますか? それをスタッフと共に語り、顧客に伝える努力をしてください。物語が乗った商品は、価格に関わらず顧客から愛されます。

次回は、「第35回 カットフルーツ毎日展開を阻む「作業の壁」」です。

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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