第35回 カットフルーツ毎日展開を阻む「作業の壁」

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



魅力的な商品は思いつくけれど、いざ現場で実現しようとすると「手間がかかる」「人手が足りない」と断念してしまうことはありませんか? 魅力的な商品展開と、日々のルーティンワークは、往々にして対立します。 第35回は、カットフルーツの毎日展開という課題を通じて、店長が仕入れと在庫管理の精度を上げ、オペレーションの壁を突破したお話です。

前回、こだわりの食材をおにぎりにすることで付加価値を付け、高利益を生み出した店長。チームの自信はさらに深まっていました。 しかし、利益向上を目指す中で、新たな壁にぶつかりました。それは、「カットフルーツの毎日展開」です。見た目が華やかで顧客からも人気のあるカットフルーツですが、時間が経つと変色し、ロスが出やすい商品です。店長は以前、これを毎日展開しようとしましたが、準備の手間がかかりすぎ、スタッフから反対されて断念した経緯がありました。「アイデアは良いのですが、今のスタッフの人数と時間では、毎日新鮮なカットフルーツを作るのは無理です。手間がかかりすぎて、他の業務が疎かになってしまいます」スタッフの言うことはもっともでした。しかし、私は店長に言いました。 「『手間がかかる』というのは、業務のやり方が古いままということだ。仕入れの精度を上げ、作業工程を分解すれば、必ず解決策は見つかる。」

【「仕入れ」と「作業」を分離して考える】私は店長に、カットフルーツの展開を「仕入れ・在庫管理」と「製造作業」に分けて分析するよう指導しました。

仕入れ精度の向上(予測): 「毎日作る」のではなく、「何曜日の、どの時間帯に、何パック売れるか」を徹底的にデータで分析した。これにより、無駄な仕入れを減らし、必要な分だけを準備する環境を作った。

作業工程の最適化(仕組み): スタッフが一人でカットからパック詰めまで行うのではなく、朝の比較的余裕がある時間帯に、集中して作業を行う体制を作った。また、専用のカット器具を導入し、作業時間を半減させた。

【「やらない理由」を「やるための工夫」に変える】店長は、この新しいやり方をスタッフに提案する際、ただ命令するのではなく、「どうすれば楽に、かつロスなく展開できるか」をスタッフと一緒に話し合いました。「朝の〇〇さんの作業を分担すれば、15分でカットが終わるんじゃないか?」 「フルーツのカットを動画でマニュアル化して、誰でも早くできるようにしよう!」スタッフから前向きなアイデアが出てくるようになり、「手間」は「工夫」へと変わっていきました。

【限界を突破した先にある成長】新しい体制でカットフルーツを毎日展開すると、懸念されていたロスは最小限に抑えられ、売上は大幅に向上しました。何より、スタッフが「自分たちの工夫で新しい商品が売れた」という成功体験を得たことが最大の収穫でした。「『作業の壁』は、スタッフを信頼し、仕組みを整えれば突破できる。今回の経験で、店舗の可能性はさらに広がりました」店長は、日々のルーティンワークの中に、いかに付加価値を組み込むかの限界を突破しました。

【コーチの視点】「人手がないからできない」は、リーダーの思考停止です。 本当に魅力的な商品なら、手間をかける価値があります。その手間を最小化し、利益を最大化する仕組みを考えることこそが、リーダーの仕事です。 あなたの店舗に眠っている「手間がかかる魅力的な商品」を、今の仕組みで見直してみませんか?

次回は、「定量的視点と、定性的視点のバランス」です。

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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