第20回 リーダーの「自己承認」が、チームの限界を突破する

年上のスタッフを指導するのは、多くのリーダーにとって心理的な壁が高いものです。 「自分が正しいことを言っても、相手は経験があるから聞き入れてくれない」「気を遣ってしまって、言いたいことが言えない」。 しかし、リーダーの役割は年齢に関係なく、チームの成果に責任を持つことです。 第25回は、店長が「年上のスタッフ」に対するアプローチを変え、尊敬と信頼の相互関係を築き上げたエピソードをお伝えします。
前回、行動の背景にある「意図」を伝えることで、スタッフの主体性を引き出した店長。チーム全体が活気づいてきましたが、彼にはまだ解決できていない個人的な課題がありました。 それは、自分よりも一回り以上年上で、店舗での勤務経験も長いスタッフ、田中さん(仮名)との関係です。「田中さんは仕事は丁寧なんですが、私の指示に対して『それは前はうまくいかなかった』と、いつも経験則だけで反論するんです。年下だから舐められている気がして、どう接していいか分かりません」店長は、田中さんの年齢や経験に引け目を感じていました。その緊張感は田中さんにも伝わり、対立を生んでいました。私は店長に伝えました。 「田中さんの『経験』を敵に回すな。むしろ、君の『若さと視点』と彼女の『経験』を組み合わせれば、最強のチームになる。」
【尊敬に基づいた「承認」の技術】年上のスタッフを動かす鍵は「承認」です。それは相手を立てるだけのぺこぺこした態度ではなく、相手の「貢献」を認め、その上でこちらの「視点」を共有するアプローチです。私は店長に、3つの手順を提案しました。
相手の経験を「具体的に」褒める: 挨拶代わりに「田中さんのあの商品についての知識は本当にすごい」と、具体的に尊敬の念を示す。
意見を求める: 「この新しい企画について、田中さんのこれまでの経験から懸念点があれば教えてほしい」と、彼女の経験を判断材料の一部として活用する。
チームの目的で繋がる: 最後に「この店舗を地域で一番愛される店にするために、ぜひ田中さんの力が必要だ」と、目的を共有する。
【対立が信頼へ変わる】店長は勇気を出して、田中さんと向き合いました。 これまでは「上から指示する」スタンスでしたが、「彼女の知恵を借りる」スタンスに変えたのです。「田中さんがこれまで築いてくれた顧客との信頼関係のおかげで、この店は成り立っています。その信頼を、これからの新しい施策でさらに大きくしたいんです。協力してもらえませんか?」そう真摯に伝えた時、田中さんの表情はこれまでで最も柔らかくなりました。彼女は初めて、店長を「若造」ではなく「尊敬できるリーダー」として認識したのです。それ以降、田中さんは店長の指示を二つ返事で聞き入れ、さらには店長が気づかない細かな部分までフォローしてくれるようになりました。 ある日のミーティング後、田中さんは店長に言いました。 「最初は心配していたけれど……あなた、ずいぶんと成長したね」その言葉を聞いた瞬間、店長は肩の荷が下りたと同時に、本当の意味での「チームのリーダー」になれたことを実感しました。
【コーチの視点】年上の部下を持つことは、リーダーにとって自己成長の絶好の機会です。 相手の年齢や経験に怯えるのではなく、それを組織の資産として取り込む器を持ちましょう。 リーダーが相手をリスペクトすれば、必ずそれは信頼となって返ってきます。
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