第2回 他力本願では店舗は救えない

スタッフが「辞めたい」と相談に来た時、あなたはどう対応しますか? 引き止めたり、理由を聞いて改善を約束したりするのが一般的かもしれません。 しかし、本当に心からのSOSは、言葉ではなく態度に出るものです。そして、それは表面的な会話だけでは解決しません。 第26回は、店長がスタッフ間の「感情のしこり」に気づき、直接ではなく「環境」を変えることでスタッフを救った物語です。
前回、年上の部下との信頼関係を築き、チームの結束を強めた店長。しかし、店舗運営には常に予期せぬトラブルがつきまといます。 ある日、若手のスタッフAさんが、暗い顔で店長のもとを訪れました。「店長……正直、もうこの店で働くのが辛いです。辞めたいです」理由は明確ではありませんでした。「なんとなく、人間関係が」「自分のやりたいことが分からない」といった言葉の裏に、深い悩みを感じました。 店長はAさんを引き止めようとしましたが、上手く言葉が見つからず、面談は平行線のまま終わりました。私は店長に言いました。 「『辞めたい』は結果だ。なぜAさんが追い詰められたのか、その原因を直接本人に聞くだけでは解決しない。スタッフ間の『感情のしこり』に目を向けろ。」
【「間接介入」という解決法】私は店長に、直接的な面談よりも効果的な「間接介入」を提案しました。これは、Aさん本人に働きかけるのではなく、Aさんを取り巻く環境や、関係の悪いスタッフ同士の距離感を変えることです。原因を分析すると、Aさんは特定のベテランスタッフBさんとの業務連携で、強いストレスを感じていることが分かりました。Bさんは仕事熱心ですが、少し口調がきつく、Aさんは萎縮してしまっていたのです。店長はまず、直接Bさんに「Aさんに優しくして」と言うのをやめました。代わりに以下の行動に出ました。
役割の分離: AさんとBさんの業務上の物理的な距離を離した。同じエリアで働く時間を減らし、Aさんが自分のペースで仕事に取り組める時間を作った。
第三者の配置: AさんとBさんの間に、相談しやすい別のスタッフを挟み、連携の潤滑油となるよう配置した。
Bさんへの新たな役割付与: Bさんに対し、Aさんの指導ではなく、売場全体の「整理整頓」という別の重要な役割を与えた。
【感情のしこりを解くのは「距離感」】この「間接介入」によって、Aさんは恐怖心を感じる機会が減り、次第に明るさを取り戻しました。同時に、店長はBさんに対しても、彼女の「仕事熱心さ」を別の形で評価することで、Bさんの不満も解消しました。物理的な距離が離れたことで、AさんとBさんの関係も逆に穏やかになり、以前のようなピリピリした雰囲気はなくなりました。一ヶ月後、Aさんは辞意を撤回しました。 「店長、あの時お話しして以来、働きやすくなって……もう少し、ここで頑張ってみようと思います」店長は、リーダーの本質は「個人の能力を向上させること」だけでなく、「個人の才能が発揮できる環境を作ること」だと深く理解しました。
【コーチの視点】人間関係の悩みは、直接話し合うだけで解決するほど単純ではありません。時には、物理的な距離を置いたり、役割を変えたりする「介入」が必要です。 スタッフが悩んでいる時、その原因はどこにあるのか。直接的な解決ではなく、環境を変えることで感情を解きほぐす、リーダーの知恵を磨きましょう。
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