第10回 成功体験を「仕組み」に変えて、組織を自走させる

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



「たまたま上手くいった」で終わらせてはいませんか? 個人の頑張りや、その場の雰囲気で生まれた成果は、放っておけばすぐに消えてしまいます。 リーダーの真の役割は、一度生み出した成果を、誰がやっても再現できる「仕組み」へと昇華させることです。 第10回は、ロス削減の成功を足掛かりに、店舗を「自走する組織」へと変えていくプロセスをお話しします。

前回、バックヤードへの「張り紙」一つで、ロス率を劇的に3ポイント改善させたエピソードをお伝えしました。店長にとっては、リーダーとして初めて「自分の言葉でスタッフを動かし、明確な数字を変えた」という、大きな、大きな成功体験となりました。しかし、私のコーチングはここで手を緩めることはありません。 「成果が出たのは素晴らしい。では、その成果を来月も、再来月も、あなたがいない時でも継続させるにはどうすればいい?」店長は一瞬考え込みました。これまでの彼は、成果が出ると「良かった」と安堵して終わってしまう傾向がありました。しかし、それでは「店長が頑張っている間だけ数字が良い店」から脱却できません。私は、リーダーに必要な「仕組み化」の視点を伝えました。

【「マインド」を「ルール」に落とし込む】今回の成功のきっかけは、スタッフの「マインド(意識)」の変化でした。しかし、人間の意識には波があります。忙しさに追われれば、張り紙の記憶は薄れていきます。 そこで、今回上手くいった「具体的な行動」をルールとして定着させる必要があります。

いつ: 毎日の品出し時と、夕方の鮮度チェック時

誰が: 各部門の担当者全員

何を: 商品の日付管理の徹底と、早めの値引き判断

どうする: 実施した内容をチェックシートに記録する

このように、誰が担当になっても同じ精度でロス管理ができる状態を作ること。これが「仕組み化」です。 店長は、このプロセスを通じて、リーダーシップには2つの側面があることを学びました。

1.情熱で動かす: 目標を示し、スタッフのやる気に火をつける(マインドアップ)。2.仕組みで支える: 誰でも実行できるルールを作り、習慣化させる(システム化)。

【人に影響を与える力の正体】店長は、備品管理や他の業務についても、この「マインドへの働きかけ」と「仕組み化」のセットで進めていく決意をしました。「これまでは、自分でやった方が早いと思っていましたが、こうしてスタッフが動き、結果が出るのを見ると、これが本当の店長の仕事だと実感できました」彼の表情からは、以前のような「迷い」が消え、組織を動かすプロフェッショナルとしての自覚が漂い始めていました。 コーチング開始から数ヶ月。バラバラだったピースが、ようやく一つの形になり始めました。

【コーチの視点】リーダーの不在こそが、組織の真の価値を証明します。 あなたが店にいない時、スタッフは変わらず高い基準で仕事をしていますか? 「あの人がいないから適当でいいや」と思わせるのではなく、「あの人がいなくても、このルールがあるから大丈夫」と思わせる。 それこそが、リーダーが残せる最高の遺産です。

次回は、「第11回 新人スタッフに「負けている」店長の正体」です。

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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