電子カルテとドクターズクラーク導入時に気をつけてほしいこと〜その1〜
【院長夫人日々是勉強~クリニック経営のレシピ~】vol.8テーマは【ドクターズクラーク】です。
わがクリニックでは、2012年の4月から診察室にドクターズクラークが配置されています。
読者の皆さんはドクターズクラークという職種はご存知ですか?
ドクターズクラークとは、医師事務作業補助者といわれる業務を担当します。
院長の電子カルテ入力作業を助け、診察がスムースに行われるように、院長のとなりで、カルテに向かって座っています。入院施設をもつ病院の外来では、配置されていることもありますが、クリニックレベルでの配置はまだ少ないと思います。
開業医は院長一人でその業務範囲は膨大です。そこで、少しでも診察中の院長の事務作業を減らし、カルテに向かう時間を少なくすることで、患者さんとの対話の時間を増やす、事務作業がスムースに流れることで、患者さんの待ち時間を減らすことが主なねらいとなります。
院長が、ドクターズクラークを4月にデビューさせると決めてから、人選をしました。
まず、キーボード入力が一定の早さで行える者、治療の流れをある程度理解している者、院長の動きに自分の動きを合わせていきたいと考える者といった視点で考えました。
そして、診療助手として、院長、看護師の業務をそばでいつもみる機会が多かったスタッフと、歯科勤務の経験をもち、人の動きの先を読む力のあるもう一人のスタッフを選びました。
1月中旬から、整形外科外来で症例数の多い疾患のパンフレットを読み合わせて理解できるようにしたり、電子カルテの医師篇のマニュアルをイチカラ、カルテを触りながら読み進めていくといった研修を毎週行いました。
そして、その研修も終わろうかというころ、診療助手の彼女は、他のスタッフとうまくいかなかったり、私が言ったことで気に入らないことがあったりで、辞めたいと言ってきました。そう、原因はこの研修や役割の荷の重さではなかったようです。
私の言ったことが原因のひとつというところは、また別で書くことにしますが……
クリニックの研修にはすべて、時給が発生しているというのに、デビューまでに退職してしまいました。
こんなかたちで、出鼻をくじかれるデビューまでのエピソードもありましたが、もうひとりの彼女が頑張りました。ゴリ押し無理やりデビュー実現です。
1人のパートさんではコマ数がすべてうめられないため、さらに人選をし、おっかけ研修を受けることになったスタッフがいます。
その彼女もすでにデビューを果たし、今は2人でがんばってくれています。
紹介状をはじめ文書関係の処理の速度や初診や初再診患者さんの所見作成にかかる速度の効率化、病名の管理やコストのダブルチェックといった点で、院長の業務をサポートし、患者さんへの待ち時間、満足度などに対しての成果もでていると感じます。
ただ、成果は感じるだけではいけませんので、第三者評価が必要ですが・・・。
ドクターズクラークがデビュー前に期待していなかった効果の一つとして意外だったのは、ナースからの声です。
ドクターズクラークは基本的に院長の診察にピッタリついていますから、ナースは処置やその準備などで診察室を離れても、その間の指示をドクターズクラークに確認できるので院長に同じ指示を何度もだしてもらわなくてすむということが、看護師を楽にするのだということでした。
「奥さん、すごい助かるー」と言ったのは、ナースがもっとも速かったというわけです。
そして、今では院長も「ドクターズクラークのいない診察は考えられない」とドクターズクラークの価値を十二分に感じてくれているようです。
ただ、ぴったり診察につくドクターズクラークには、さまざまな重荷があるようで、院長が第一診察室、第二診察室、処置室三ヶ所から出す指示を拾いながら、さまざまな対処などもしてくれているようで、かなりの力量が必要です。
おまけに、うちの院長の場合、恐ろしく速さを要求するところなどもあり、とても苦労しているようです。
受付と院長の関係は、上司と部下の関係に近いところがありますが、ドクターズクラークは、事務職としてはかなり高い専門性を求められるため、医師とコメディカルの関係になるように思います。
もともとの専門職は院長との専門性による関係になれていますが、受付から選ばれたスタッフはなれていないことが多いので、フォローが必要だと私は思います。
フォローの一環として、ドクターズクラークミーティングを月に一度行い、診察室でのしんどさや、カルテの操作での困りごと、とても便利な機能などを2人が共有し、スタッフから院長へ直接伝えにくい要望は、私から伝えたり、内容によっては直接伝えられる場面を作ったり、「しくみ」で解決できることは「しくみ」を変えたりして工夫しています。
デビューから半年、2人ともなんとか続けてくれていて、ほっとしています。
今後、うちのクリニックではドクターズクラークが活躍できる場をもっと作っていきたいと思いますし、ドクターズクラークという職種の価値を世の中に広めていきたいと考えています。
最後までお読み頂きありがとうございました。感謝!