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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

空き家管理と利活用

2023年3月7日

テーマ:空き家と住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

(はじめに)
今回は、空き家の管理と利活用における注意点として、「空き家所有者の意識と実状」「空き家管理の注意点」「空き家利活用の注意点」を取り上げます。

(空き家所有者の意向)
㈱クラッソーネが昨年10月、空き家所有者を対象に実施した空き家の利活用に関する調査によると、約半数は利活用したい意向があり、30~50代のミドル世代では別荘やセカンドハウスとして利用したい意向が高まっています。

一方で現状はと言えば、期間5年以上の空き家が全体の40%近くを占め、特になにもしていないという者が75%にも及んでいます(国交省調査)。空き家所有者には利活用の意向はあるものの、思うように進んでいない様子が窺われます。

(空き家の保有コスト)
空き家の利活用が必要な理由の一つに、空き家を保有するコストの回収や低減があります。居住者がいなくても、次のような費用が発生し長期間に及べば家計を圧迫してしまいます。地価水準にもよりますが、固定資産税と電気代・水道代だけで、少なくとも年間20万円程度は発生すると思われます。
(費用の例)固定資産税、電気代・水道代、建物等の維持修繕費、交通費等、火災保険料、管理委託費(外部委託)、管理費・修繕積立金(マンション)、建物解体費用など

更に空き家の老朽化が進めば、屋根や外壁材の飛散や落下、家屋の倒壊、不審火、不審者の侵入、犯罪発生、ゴミの不法投棄、雑草の繁茂などによる景観・防犯・防災の悪化・低下を招くなど、いわゆる外部不経済が生じます。そして所有者責任が追及されかねません。

具体例を次に示します。
約24年間管理不全状態だった空き家が不審火により夜間に出火し、空き家を含めて3棟が全焼し、他に1棟がほぼ全焼。更に、道路を隔てた4棟の火元側の壁一面が焼け焦げるなどの被害が発生。
約30数年間管理不全状態だった空き家の屋根が爆弾低気圧により飛散、建物が倒壊し、前面道路を閉塞。自治体は危険排除のために屋根を撤去し、解体。撤去等の工事期間を含めて3日間道路を通行止め。

2.空き家の管理
(目的と水準)
空き家管理の目的は、大きくは次の三点になります。
建物の経年劣化を遅らせ、資産価値の毀損を防止する
リスクを未然に回避し、外部不経済の発生を防止する
利活用の方向が決まるまで、現状を維持する
求める管理水準も目的に応じて、資産価値の維持及び向上か、資産価値の低下の緩和か、あるいは外部不経済の回避なのかと変わってきます。
とりわけ空き家の管理においては、建物や敷地の状態を継続的に観察し、その変化を見落とさないようにすることが大切です。
建物や植栽においては、「倒壊、屋根や外壁の破損や剥落や飛散等の危険がないか」「植栽の繁茂や落ち葉が堆積して飛散等の危険はないか」「ミの放置や不法投棄などがないか」といった点です。また、敷地内にごみの不法投棄や犬猫などの糞尿が放置されたままになっていないか、庭の陥没や水たまりなどがないかも確認して下さい。

(具体的に何をするか)
まずは家財等の整理です。大量の残置物は、時として利活用の妨げになります。地震時の落下や床に置いた物につまづいて転倒にも繋がりかねません。そして、親が大切にしているもの、していたものを理解しながら、「捨てる」ではなく「減らす」という意識が必要かもしれません。
また、近隣との良好な関係は是非維持しておいて下さい。近隣居住者からの情報や目が空家管理の手助けになることもあります。そのためにも挨拶や緊急連絡先を知らせするといったことも大切です。

3.空き家の利活用
(活用方法)
空き家の活用方法には、用途に着目したところ、次のように分類できます。
住宅として利用:自宅、セカンドハウス、別荘、賃貸住宅など
住宅を用途変更して利用:シャアハウス、ゲストハウス、店舗など
解体して新地として利用:駐車場、農園・菜園など

(利活用する際の主な注意点)
◆資金収支計画
・必要な資金は自己資金か借入金か、初期投資は何年で回収できるか
・賃料はいくらまで取れるか
・ランニングコストはどんな費用がいくら必要か
  (公租公課、管理委託料、火災保険料、修繕費(経常修繕、退去時)
◆法令チェック
・用途地域と禁止用途の確認
◆賃貸方法
・サブリースの注意点、普通借家と定期借家のメリットとデメリット、DIY賃貸
◆解体
・固定資産税等が増税になることがある(住宅用地特例の適用除外)
・再建築できないことがある(建築基準法)
・建物が共有の場合は、共有者全員の合意が必要になる
・長屋(連棟建物)の場合、耐震性の低下や、無接道になったり、隣接建物所有者の承諾の必要や解体後の修復費用の負担、筆界の確認等が必要になる
◆補助金利用の可否


以上

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菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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