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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

空き家の発生予防行動期から習慣期へ移行する規定因について~住まいの終活シリーズ⑫~

2022年12月21日

テーマ:空き家と住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

(習慣期への規定因)
本節では(今回は)、空き家の発生予防に向けた行動をする「行動期」から、そのことが習慣になっていく「習慣期」へ移行するための規定因を考察していく。ここまで繰り返し述べてきたように、住宅所有者は空き家の発生を予防した場合の長期的な利益は理解しながらも、ついつい目の前の損得を優先する傾向が強い。しかも自宅を空き家にしないという目標を達成するには、通常長期間を要するため、どうやって三日坊主で終わらせずに行動改善を継続することが重要となる。

その習慣期へ移行する規定因として、次のようなことが考えられる。
・行動を通じて利得感が増してくる。
・行動の有効性が理解でき納得感が増してくる。
・空き家に伴う損失を回避したい気持ちが強まってくる、など。

ここでは、住宅所有者が属するコミュニティとの関係からみた「コミットメント」の効果を中心に、習慣化を促進させていく因子を分析する。

(コミットメント効果)
行動を継続していくために第三者との関係は意外と重要だ。途中で挫折しかねない行動特性を念頭に置き、いかに第三者の協力や影響を上手く利用しながら、無理なく実行できるようになることが期待される。そのうち責任を持って空き家予防対策に関わっていくことを対外的に明言し、責任を伴う約束をする「コミットメント」の効果を考える。

現在の自宅を空き家にしないという意思を他者に宣言すると、言った以上は引き下がれない、周囲の目が気になり信頼を失いたくない心理になりやすい。また、真剣にやり抜こうという意思が強まる一貫性の法則も働きやすくなる。つまり、何かしらの意思を誰かに宣言することで実現しやすくなる効果が発現する。これを心理学的には「コミットメント効果」と呼ぶ。

具体的には、次のようなコミットメントが考えられる。
・自治会などのメンバーと一緒に、空き家予防に向けた取組みに参加し、情報を共有する。
・家族会議のなかで、住まいの終活の着手に合意する。
・空き家予防への着手をSNSなどで情報発信する。
このようなコミットメントをすれば、具体的な仕組みづくりへと繋がることも期待できる。

(習慣化の促進)習慣化とは、同じ状況の下で繰り返し行われた行動が定着し、意思とは関係なく自動化された状態を指す。予め実行する時間や場所を決め、その実践を繰り返すことで、無意識のうちに行動が続く慣性効果が期待できる。その結果、心理的負担や先送りが抑制されやすくなる。

空き家予防対策を習慣化という視点で捉えた場合、それは毎日あるいは定期的に実践するものではない。また、家族などの関係者がいるため住宅所有者の一存では決められない。更には少なくない費用負担を伴うこともある。一生のうちに何度も行うわけではないため、習慣化の促進にあたり、このような事情は配慮しなければならない。

多くの住宅所有者にとって、空き家予防の経験値は少ないため、ペースメーカーであり相談相手になるような存在が望まれる。今すること、この先にすることといった方向性が示されれば、行動のタイミングや手順をその都度、調べて確認する手間は省ける。その意味では行動が自動化されるとも言える。また、家族等が集まりやすいお盆や正月といったライフイベントに絡めて家族会議を開くといった工夫も効果的であろう。

そして、共に行動するメンバーからの影響は少なくない。定期的にミーティングを開催し情報交換ができれば、既述したコミットメント効果とも相まって、行動を中断せずに持続してやろうという動機づけにも繋がりやすい。

(まとめ)
行動の習慣化は簡単ではない。空き家の発生予防は同じ行動を繰り返しではない。それを習慣化するには、次に何をするかを知っていることが前提になる。そうでなければ、当然ながらスムーズに次のステップに移行することができない。

そこでは専門家などのコーディネートによる伴走サービスが求められる。どのような専門家が、どのような役割を担っているか。サービス提供にはコストが伴うが、誰が負担しているか。次回からは、このような観点から空き家予防に取り組んでいる事例を見ていく。


以上

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菊池浩史

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菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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