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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

使われる空き家バンク・使われない空き家バンク

2021年10月14日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくり空き家対策空地 活用

「空き家バンク」という名前を聞かれたことがあるでしょうか。
今回は、空き家バンクとは何か、期待する機能を果たしているか、課題はどこにあるか、そして住まいの終活への利用可能性を考えてみます。

空き家バンクとは、自治体が、空き家の賃貸や売買を希望する所有者から提供された情報を集約し、それらを利用・活用したい者に紹介する制度です。自治体は仲介業務ができないため、宅建業者等と連携するケースもあります。また、自治体独自の特典、補助金、税制優遇等の施策が行われたりもします。

国土交通省の「全国版 空き家・空き地バンク」のモデル事業に採択された「L【ホームズ】空き家バンク | 地方移住・田舎暮らし向けの物件情報 (homes.co.jp)」や「全国の 空き家バンク から物件を検索【アットホーム 空き家バンク】 (akiya-athome.jp)」は、全国の自治体が管理する空き家・空き地の情報が閲覧できます。

国交省と総務省が全国の自治体に実施した調査(「地方公共団体における空家等対策に関する取組状況調査(2014))によると、空き家バンクの利用状況は次の通りです。
1位:「実施・構築・設置しておらす、今後も予定はない」が55.0%(970自治体)
2位:「準備中または今後実施・構築・設置予定」が11.6%(204自治体)
3位;「実施・構築・設置済」の33.4%(590自治体)

一方で、空き家バンクを設置したものの、開設から累計の成約件数が10件以下と十分に機能しているとは言い難い空き家バンクが半数近くあります(「『空き家バンク』を活用した移住・交流促進自治体調査報告書」移住・交流推進機構(2014))。

同報告書では、実績を残している空き家バンクの特徴が書かれています。
一つ目は、物件の収集方法に次のような積極姿勢が見られます。この差が実績の違いに繋がっているとも言えます。
・地元不動産業者が蓄積している物件情報を活用するなど、地元企業・団体と積極的に連携を図っている。
・空き家バンクの運営主体の職員が地元地域の協力員と連携して、地元地域の巡回や所有者へ問合せをするなど積極的に情報収集している。

二つ目は、地元への受け入れ体制の整備です。空き家バンクに問い合わせがあれば、物件案内だけに留まらず、生活や仕事面の相談に応じるなどきめ細やかな対応をしている点が特徴です。具体例は以下の通りです。
・行政や地元住民、民間企業、団体、NPO等が参画する推進協議会の設置
・交流プログラムの作成等による民間人材や地域外人材の起用
・移住・交流者の生活支援等を行う地元サポーターの設置
・児餅住民・各種団体の意識啓発
・「もてなし」意識の醸成等の行政職員の育成

空き家バンクと住まいの終活の関係を考えた時に、出口戦略での利用です。自宅の売却や賃貸はスムーズに進むとは限りません。寧ろ、そこで時間を要する物件の方が多いかもしれません。そこで空き家バンクも一つのチャネルになってきます。その場合は、上記のような特徴を備えているかどうかを事前に調べておくことをお勧めします。

空き家バンクに登録される物件は、市場流通性に劣る物件が多く、そのため不動産業者も積極的に手を出したがらない傾向があります。需要は少なく売却には時間を要します。いわゆる難易度が高い不動産と言えます。

だからこそ、空き家バンクの利用にあたっては、「どこと連携してどのような情報収集や情報発信をしているか」、「地域外の購入者への受け入れ体制がどこまで整備されているか」といった実績をしっかりと見極めることも大切なことです。

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