民法(相続法改正)その2
耕作放棄地の現状と課題
「耕作放棄地」とは、農林業センサスにおいて「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義されている統計上の用語です。
耕作放棄地の多くは、営農者が高齢で後継者がいない場合や、先祖の農地を相続したものの、相続人が都会に居住していたり、会社勤めであったりする、いわゆる「土地持ち非農家」です。
地方税に基づき市町村は毎年、土地の利用実態を調べて宅地、田、畑、雑種地等土地の種類を定めます。その種類に沿って市町村が土地の評価額と固定資産税額を決めます。売買や転用に制限のある農地は評価額が宅地や雑種地より低いため税金が安くなります。
この毎年の調査を実施しているかを耕作放棄地の面積が大きい100の市町村に聞き取り調査をしたところ毎年現況を確認している市町村は13市、現況を確認しているが頻度は3年に1度程度の市町村は56市、ほとんど現況確認をしていない市町村は31市でした。
毎年現況確認ができない理由として、費用や人手不足、面積の広い市町村を端から端まで確認するのは不可能ということが挙げられています。
現況確認がおざなりになると、耕作をやめた土地も農地として格安の税金で持ち続けられます。
そこで、農林水産省と総務省が耕作放棄地だけに適用する新税の検討に入りました。年末までに与党の議論も経て税額や導入時期などを決めたい考えです。農業に意欲がある担い手に貸し出せば非課税にする優遇策と組み合わせ、耕作放棄地の集積を目指します。最終局面を迎える環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉も見据え、農地利用を活性化して農業の生産性向上と競争力強化を進めたい考えです。
また、政府が検討する耕作放棄地への新税は、農地として再生を見込めない土地にはかけない見通しです。地方の中山間地にある木が生い茂って林のようになった放棄地などは課税の対象外となりそうです。
優良な農地に再生できる放棄地に的を絞るとともに「放棄すれば増税」というけん制効果で新たな放棄地の発生を抑えることに軸足を置くようです。
なお、徴収する市町村の準備に時間がかかるため、導入は数年後になりそうです。