農業と知的財産(3)
今回は、スタートアップ企業に関して、知的財産(知財)の基本的な側面から見てみたいと思います。
知財に対する基本の考え方は、例えば、新しい技術の場合、形のない無体財産を他人に真似されないように、法律により権利として「保護」するとともに、その権利を「活用」できるようにするための制度です。
つまり、「保護」と「活用」の二つが大きな柱となっています。「特許が取れた」と喜んでいても、それは「保護」という側面の一つの機能です。したがって、この段階で、何もしなければ何の利益も生まれません。
様々な面での資金が必要となるスタートアップ企業にとっては、最悪な見方をすれば、「余計なお金がかかってしまった」ということになり、「コスト」の話で終わってしまいます。
一方、「知財」には、上述した「活用」という、もう一つの側面があります。また、「活用」には、権利自体を利用するハード的な側面と、権利から派生する様々な機能を利用するソフト的な側面があり、これらの二つの側面はそれぞれ独立して、或いは個別に利用することができます。
ソフト的な側面としては、例えば、特許が認められたとして、カタログ等でPRに利用することが良い例かと思います。
このように、「保護」と「活用」の両方を機能させることにより、初めて利益につなげることができます。
また、その利益は売上が上がるという単純加算的な利益ではなく、「活用」の仕方によっては、利益を、二倍、三倍、と増大させることができます。
例えば、商標権(ブランド)の場合、商品にユニークなネーミングを付けることにより、売上が、何倍も増えるなどのエピソードはよくある話です。
「保護」と「活用」の両方を上手に機能させれば、この時点での知財の捉え方は、「コスト」ではなく「投資」の考え方になります。
株を100万円で買い、時間の経過とともに200万円に増やす「投資」の考え方と同じになります。
スタートアップ企業の場合、知財を単に「コスト」と捕らえれば先に進めません。知財を「投資」として考え、何年か先には、何倍にも成長させて回収する観点から見てほしいと思います。
特に、現在は、インターネット、更にはHPによる発信やSNS等の普及により、「活用」の有効性や重要性が増しており、スタートアップ企業では、「保護」と「活用」の双方を上手に利用して、売上げや企業の成長につなげてほしいと思います。