インターネットと知的財産権(1)
年が明けたと思っていたら、もう1月の後半です。遅ればせながら本年もよろしくお願いします。
昨年は、新型コロナの渦中にあり、このコラムも「コロナ禍時代の知的財産」をテーマに書いてきました。
一方、今は「新時代のはじまり」です。今年は「新しい時代」をキーワードにして、特許の活かし方を考えてみたいと思います。
…… と思っていたら、今日(1月22日)のYAHOOニュースのトップは、珍しく特許関連の記事になっていました。ニュースのタイトルは、[経済安保法案「特許非公開」違反などに罰則 情報流出防止へ](毎日新聞)です。
そこで、今回は、このニュースをピックアップしたいと思います。
先進国の特許制度は、特許出願から1年6ケ月を経過すれば、出願した発明の内容が、原則として全て公開され、世界中の誰でもその内容を見ることができるようになります。
このため、日本では、以前から海外への技術情報の漏洩が問題になっていました。米国と中国の間でも知的財産権の扱いが問題になっていますが、知的財産権の問題は、米国と中国間のみの問題ではなく、日本と中国の間でも同様の問題が生じます。
ニュースによれば、今後、特定分野の特許出願については、二段階の審査(特許庁の一次審査/安保部門の二次審査)を行い、機微情報(国家機密情報)と判断された場合には、出願を非公開にしたり、外国出願を制限する方向で検討するとのことです。
ところで、特許制度は、そもそも新技術を公開したいわばお礼として、その人や企業に一定期間にわたり独占する権利を与えることが制度の趣旨です。
したがって、現在、AI時代、EV時代と言われる中、重要な先進技術が非公開になった場合、我々日本人自身も見れなくなるということであり、日本の技術進歩が阻害されてしまう心配もあります。
新型コロナ対策ではありませんが、どのような対応策であっても、良い側面と悪い側面が含まれており、今後の流れを注意して見て行きたいと思います。
これからの「新しい時代」では、米中が絡む安全保障問題も、日本にとって、いままで以上に重要な問題として関連してくる可能性があり、特許を活用するための特許戦略も、より多面的に考えていく必要があると思っています。