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下田茂

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下田茂(しもだしげる) / 弁理士

みらい国際特許事務所 長野オフィス

コラム

コロナ禍時代の知的財産 -4-

2021年5月22日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

 最近、メディアで特許(知的財産)に関連する話題性のあるニュースが2件ほどありました。
 一つめは、「バイデン米政権が新型コロナウイルスワクチンの「特許権」(ワクチン特許)の放棄を支持する」と表明したニュース(5月5日付)、
 二つめは、「LINE(ライン)が提供していた“ふるふる”が、フューチャーアイ社の「特許権」を侵害していると認めた判決」に関するニュース(5月19日付)です。
 これら二つのニュースは、それぞれ「特許(特許権)」に関する権利を行使する観点からのニュースになりますが、他方、特許の中身となる「発明」という観点からは、対極に位置するケースになると思っています。
 一つめの「ワクチン特許」については、新興国が特許権放棄をWTO(世界貿易機構)に要請していたことに対して、米国は当初反対していました。しかし、今回、その方針を転換し、放棄を支持する立場を示したものです。理由として「パンデミックを終わらせるため」としています。
 なお、「放棄」の言葉は、少し乱暴な使い方のように見えます。現実的には、「特許」をそのままの状態に維持し、無償の実施権を与えるなどの他の方法も同じ効果を生むことができます。
 一方、これに対し、製薬業界や特許所有者を自国に持つドイツ等の一部の先進国は、放棄に反対を表明しています。
 「ワクチン特許」の場合、製造に伴う品質を確保するためのノウハウも多く、だれでも直ぐに生産できるものではありません。ウイルス分野の専門家の集団が長い年月と莫大なお金を費やしてのみ成立させることができる「発明」になります。
 つまり、原則20年の特許期間が終了し、特許が消滅した後に第三者が実施する「ジェネリック医薬品」のように考えることはできないと思います。
 したがって、ワクチンの供給能力を増やすためには、特許権者に支援金等を投入して生産能力を高めるとともに、他方、特許権による収益は、ある程度、安定的に確保できるようにし、今後、次々に発生する可能性のある変異ウイルス等に対する改善改良に投入したほうが合理的ではないかと思います。
 二つめのニュースは、特許を所有するフューチャーアイ社がLINE側に対して、特許権侵害として、3億円の損害賠償を求めたのに対して、1,500万円の損害賠償の支払いを命じたものです。
 二つめのニュースは、「発明」という観点から「ワクチン特許」に対して対極的な「発明」に位置すると思っています。このため、興味深い側面もあり、このニュースに関しては、次回、両者を対比して書きたいと思います。

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