サービス業と知的財産(1)
最近、農業が大きく変化しているように感じます。高齢化などによる農業人口の減少というマイナスの側面もありますが、一方において、農業そのものに魅力を感じる若い人や地方移住に伴う農業家族など、何か新しい息吹のようなプラスの側面も感じます。
また、各自治体も地域間競争や海外展開等を考慮し、様々な工夫を凝らして、地域ブランドの育成に力を入れています。
表現がよくないかもしれませんが、生きていくための地味な農業から新しい価値感に基づくオシャレな農業に変化しているようにも感じます。
農業がこのように変化していくと、農業における知的財産も重要なツールになってきます。農業にとって最も関連のある重要な知的財産といえば、「ブランド力」です。
例えば、お店に、「(普通の)メロン」と「夕張メロン」が並んでおり、その見た目と値段がほぼ同じであれば、大方の人は、「夕張メロン」を選択するのではないかと思います。この差がブランド力となります。
この「ブランド力」を保護する観点から農業の知的財産について見てみたいと思います。
「夕張メロン」のような地域ブランド(産地名+産品名)は、商標権を得るために個人が商標出願しても登録は認められません。このような場合、地場産業に位置付けるために活動している生産組合や商工会議所等の団体が商標出願すれば、一定の条件を満たすことにより、地域ブランド(地域団体商標:商標権)として登録されます。これにより、その組合員や商工会議所等の許諾を受けた人のみが使用でき、他の人たちは使用できません。
ところで、組合員や許諾を受けた人は地域ブランドを使用できますが、その品質までは保証されません。このため、平成27年からGIマーク制度(地理的表示保護制度)が始まっています。
上に示したGIマークが付された産品は、品質まで保証されていることを表します。また、各自治体単位でも、地場産品を保護し、育成するため、様々な認定制度を実施しています。
一方、現在のように、インターネットが発達し、個人が、SNSを通して様々な情報を発信できる時代になると、個人売買も簡単に行うことができ、まさに究極の産地直送ビジネスも可能になります。しかも、これによる産品の評価は、瞬く間に世界中に広がります。
したがって、産地直送ビジネスや最終製品まで加工して販売する第6次産業ビジネスなどを考えた場合、個人農業も、ある意味、これからの夢のあるビジネスになる可能性を秘めています。このように、個人レベルにおいても、自身の「ブランド(商標)」を育成し、育成した自身の商標権の保護及び利用を図っていくことは、農業における重要な要素の一つになると思っています。