知財雑感 … 「人マネ」はどこまで許されるか!
先月、特許庁からIoT関連発明に対する審査基準等の適用についての指針が公表されました。
◇ IoT(Internet of Things)は、字のとおり物のインターネットです。物のインターネットといっても普通にある話では?と思うかもしれませんが、AI(人工知能)やビッグデータ等と組合わさることにより、革命的な変化をもたらします。
例えば、自動車の自動運転技術は、個々の自動車における制御技術によりある程度実現することが可能です。しかし、限界があるため、IoTと結びつき、中央管理センター等により各自動車の相互間データを含めて制御するようにすれば、完璧な自動運転社会を実現する可能性が出てきます。
一方、利便性が飛躍的に向上する反面、多くの産業において「人」が要らなくなる可能性も心配です。したがって、このような進歩が我々にとってほんとうによいことかどうかは難しい話ですが、第四次産業革命と呼ばれるほどの大きな時代の変化が目の前で確実に進んでいることは受け入れざるを得ません。
◇ 特許の審査基準では、既に、コンピュータソフトウェア関連発明に関するガイドライン(ハンドブック)が出来ています。
IoT関連発明も、多くはこのガイドラインがベースになり、ビジネスモデル関連発明とほぼ同じ位置づけになると思っています。
特許に関する指針では、「IoT関連発明」について、具体的に、このような発明が特許になりますよ、この程度の発明では特許になりませんよ、という基準となる具体例を公表しています。
◇ ところで、IoT関連発明は、多くの産業分野に関連してくるため、あるシステムにおいて如何に早く標準化を進めるかが重要になってきます。
以前、パナソニックとソニー陣営のブルーレイディスク規格と東芝陣営のHD-DVD規格が争い、この結果、ブルーレイディスク規格が標準化されました。規格化の勝ち負けは、その後の展開に大きく影響します。東芝の現状はごらんのとおりですが、この辺りにも東芝の体質が現れていたようにも思います。
一方、IoT関連発明(特許)の標準化問題は、国家レベルの話になります。日本が外国に敗北すれば、特許料を支払って外国の規格を採用しなければならない事態にもなりかねません。日本の弱体化につながるなど、日本の国力にも影響する重要な問題となります。