地方企業を活かす知財戦略…(15)
ビジネスサイクルと知財サイクルは車の両輪
今回は、ビジネスサイクルと知財サイクルの関係、特に、二つのサイクルは車の両輪の関係になり、両サイクルを旨く回転させることが安定した走行につながる点を強調したいと思います。なお、ここでのビジネスサイクルは、商売循環の意味で用いています。
下の図は、ビジネスサイクルと知財サイクルを図式で示したものです。
ビジネスサイクルは、例えば、製造業の場合、だれでも分かるように、「製造」→「販売」→「利益」→「製造」…のサイクルになります。何事もなければこのサイクルが維持されます。しかし、現実には、「販売」の段階で“競争”に晒されます。同じ「商品」であれば、価格やブランド力などの競争になり、資金や信用力、更には広告力など、いわば、力のある方が圧倒的に有利になります。
一方、知財サイクルは、「創造」→「保護」→「活用」→「創造」…のサイクル、より具体的には、投資による「創造」→独占による「保護」→利益を創出する「活用」→再投資による「創造」…のサイクルになります。つまり、知財サイクルでは、「保護」による“独占”が入るため、「販売」時の“競争”が無くなります。
このように、知財サイクルとビジネスサイクルは相互に補う関係となります。「ビジネスサイクル」における競争による負の部分を知財サイクルが補います。他方、知財サイクルの負の部分(投資要素)はビジネスサイクルで補なうことができます。
言ってみれば、業界内の厳しい「競争」を「規制」により緩和するイメージに類似し、二つのサイクルを、車の両輪のように一緒に旨く回すことができれば、安定走行ができる理想的な成長システムを構築できます。
しかし、中小企業や地方企業の場合、多くは現実の問題として、「ビジネス」サイクルが中心となり、「知財」サイクルには目が行きません。現実と理想は違う、という声も聞こえて来そうです。
確かに、現実は理想のようには行きません。ただし、「ビジネスサイクル」と「知財サイクル」を同レベルで考える必要はありません。基本は「ビジネス」優先です。「知財」は、最初10〔%〕程度ビジネスに寄与するだけでもよいと思います。「知財」は投資的要素や累積的要素を有するため、二つのサイクルを旨く回すことにより「知財サイクル」の寄与度を20〔%〕、30〔%〕と徐々に拡大させることが可能です。
そして、このとき重要になるのが戦略です。「知財戦略」は、単に、特許が取れる取れないのレベルではありません。つまり、「1」か「0」かのデジタルマインドではなく、柔軟なアナログマインドが重要になってきます。このため、事業展開における武器として、経営レベルにおいて柔軟に使いこなすことが必要であり、中途半端な「戦略」もどきは、反って、マイナスとなります。武器も上手く使いこなしてこそ活かせるものであり、そこに、我々の出番もあると思っています。