地方企業を活かす知財戦略…(2)
知的財産権の利用の仕方[Ⅱ]…ソフト的利用(ⅰ)
前回、知的財産権の利用の仕方としてハード的利用について書きました。今回はソフト的利用についてです。ソフト的利用については、書きたいことがたくさんあるため、今回と次回に分けて書きたいと思います。
コンピュータでは、ソフトウェアが、ハードウェアを利用して具体的な価値ある働きをさせています。したがって、特許におけるソフト的利用は、特許を利用して具体的な価値のある働きをさせることになり、前回のハード的利用以外の様々な利用の態様が含まれると解釈してよいと思います。
中でも、最も一般的なソフト的利用としては、特許の対象になっている商品やサービスの付加価値を高めること、を挙げることができます。これにより、「技術力」、「独創力」、「信用力」などの様々な派生的な効果を付加することができます。
下の写真は、戸隠にあるマルセイ塚田工務店さんが、最近、新聞に入れたチラシの紙面です。
(※画面クリックで拡大)
塚田工務店さんは、住宅に関する独自の建築工法を生み出し、この建築工法について特許を取得しました。この建築工法は、木造住宅における特に地震に弱いとされる中間の壁部分に着目し、胴差を利用した四角枠の中に、厚さ2~4cmの杉板とX形筋違いを組み込んで中核壁とし、これを中間の壁部分に配列させています。これにより、地震に強い木造住宅を建てることができ、この部分に特許が認められました。
さて、ここで本題の話になりますが、このようなソフト的利用では、ハード的利用のように、権利行使を行うなど、「特許自体」を直接利用するものではありません。したがって、特許としての「強さ」や「広さ」はあまり関係しません。言い換えれば、「特許が認められたこと自体」を利用(アピール)するものであり、大企業よりも地方企業や中小企業にとって有利に働くと思います。つまり、結果的に特許を十分に利用することができます。
現実の問題として、通常、「大企業」の○○○ホームと「地方企業(中小企業)」の○○○工務店が、営業において競合し、仮に、同じ内容で同じ価格であれば、どうしても大企業の方が有利になってしまいます。
しかし、地方企業(中小企業)が特許を取得し、ソフト的に有効に利用できれば、十分に互角の勝負ができると思います。もちろん品質確保等は前提ですが、例えば、「この工法には、どこも真似できない当社の独自技術を採用し、特許も認められています。」というセールストークも可能になります。
なお、特許は、出願した日から20年間の長期にわたり維持することができます。したがって、40才で特許出願をし、この特許が認められれば、60才まで維持できることになります。
特許等の知的財産権制度は、むしろ、中小企業や地方企業のための制度であると言え、地方企業や中小企業の皆さんには、もっと「特許」を身近に感じてほしいと思います。