地方企業を活かす知財戦略…(1)
知的財産のミックス戦略
ミックス戦略とは、「ミックス」の言葉のとおり、色々なものをミックスする戦略です。
分かり易く言えば、例えば、武器を使用して戦う場合、銃だけ所持していても戦うための戦略は限られます。このため、通常は、銃だけでなく、ナイフや手榴弾など、異なる複数の武器を所持することにより、状況等に応じて最も効果的に使用できるように武器を選択したり組合わせます。これは戦いのためのミックス戦略といえます。
知的財産のミックス戦略もこれと同じ考え方になり、特別難しい話ではありません。なお、ここでの知的財産には、ノウハウ等の知的資産も含まれます。
ところで、「知的財産」の体系を見た場合、その中心には、「産業財産権」と「著作権」があり、さらに、「産業財産権」の中には、特許権,実用新案権,意匠権,商標権があります。
そして、「産業財産権」と「著作権」を補うものとして「不正競争防止法」があります。この「不正競争防止法」は、いわば、「産業財産権」と「著作権」から漏れたもの、具体的には、「ノウハウ」や「産地表示」等の「産業財産権」や「著作権」に含まれないものを保護する法律です。
これにより、一つの商品に対して、色々な角度から保護できることになります。下の図(出典:特許庁)は、スマートフォンを「産業財産権」から眺めたものです。スマートフォンのような工業製品から生じる様々なアイデアは、特許権,実用新案権,意匠権,商標権の四つの権利により一通り保護できることが分かります。
このように、新しい商品を創った場合、複数の異なる権利が成立可能なため、これらの権利を組合わせることにより、単一の権利よりも、より適切かつ強力に保護することができます。
ところで、複数の権利を所有することは、中小企業や地方企業にとって大変だといわれるかもしれません。
しかし、ミックス戦略とは、見方を変えれば、選択肢が複数存在することを意味します。例えば、新しい商品ができた場合、「この商品は特許がとれるだろうか」という点にどうしても意識が向いてしまいがちですが、仮に、「特許権」の成立が難しい場合でも、残りの「実用新案権」,「意匠権」,「商標権」、さらには、その他の「知的資産」が選択肢として残ります。
知的財産のミックス戦略は、様々な異なる知的財産(知的資産)を組合わせたり選択する(使い分ける)ことにより、商品や状況等に応じ、総合的な見地から柔軟に戦略を立てることであり、この点が知的財産を効果的に活用する観点からも重要なスタンスになります。