地方企業を活かす知財戦略…(2)
知財ベースのアライアンス戦略
一般に、アライアンスとは、異なる企業同士の協力体制といわれています。異業種交流の場合、複数の異企業が共通の目的の下に協力体制を構築することも少なくないため、アライアンスの一形態といえます。
弊所のお客さんの中にも、アライアンス戦略を巧く進めている企業があります。A社は、いわば組立技術を得意とし、組み立てた製品の販売まで行っています。したがって、製品に関係した特許等の知財も独自に保有しています。また、B社は、いわば部品や材料に関する技術を得意とし、A社への納入も行っています。したがって、部品や材料に関係した特許等の知財も独自に保有しています。
A社とB社は、それぞれ独自の企業活動を行っていますが、A社とB社が関係する製品の場合には、それぞれの得意技術を持ち寄り、かつ頻繁に打ち合わせを行うなどの協力関係のもとに高機能を有する製品化を進めています。したがって、このときの製品に関係するアイデア等は共同特許出願等により対応しています。
このように、地方企業や中小企業は、一つのものに特化した技術を保有する場合も少なくないため、複数の企業同士により協力体制を構築すれば、特定の分野においては、実質的に大企業と同等の力を発揮することができます。
特に、ニッチ市場を対象とした製品化を進める場合、決定の柔軟性や進行の迅速性等において、大企業よりも有利に進めることができます。なお、知財ベースのアライアンス戦略を考えた場合、企業間のみならず大学や公的研究機関等を含む、技術を中心にした協力体制が有効に作用します。産学官連携事業等もアライアンス戦略の一形態になろうかと思います。
今の時代、インターネットが様々な方向に進化しているため、地方企業や中小企業を含む各企業同士は、いわば縦方向と横方向の双方において協力しやすくなっており、技術(知財)をベースにしたアライアンス戦略もより構築しやすくなっています。
また、現実をみれば、製造業を中心に、「第4次産業革命」や「IOT(物のインターネット)」が進行し、農業の分野では、「流通革命」や「第6次産業化」が進行するなど、これらのキーワードには、インターネットが介在するアライアンスの概念が大きく関係しています。
これらのキーワードが示す現実と、東芝やシャープ等の大企業が窮地に立たされている現実、さらに、若い人の地方移住が増えている現実などをみると、まさに、時代の転換期を示唆しており、ほんとうの意味で、地方企業や中小企業を生かせる時代が来ていると思っています。