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地方企業を活かす知財戦略…(10)

下田茂

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テーマ:地方企業と知的財産

知財のオープン・クローズ戦略

 今年の始め、トヨタ自動車(株)は、自社の保有する5,600件あまりにのぼる燃料電池関連の特許(出願中を含む)について、「無償」で実施権を付与すると発表しました。この影響もあり、現在、知財に関するオープン・クローズ戦略が注目されています。
 オープン戦略は、他社に自社技術の使用を許すことであり、「技術の標準化(規格化)」,「無償実施による事実上の標準化」,「特許ライセンス(低額/高額/クロス)」等が基本になります。
 トヨタ自動車(株)による特許の無償開放は、まさに、このオープン戦略になります。
 一方、クローズ戦略は、独自技術などの秘匿化(ノウハウ)や知財の占有化を行うものであり、「特許の独占実施」,「権利侵害差し止め」等が基本になります。
 このクローズ戦略としては、コカコーラカンパニーによるコカコーラの製法が有名です。この製法は、秘匿化され、上層部のほんの一部の人達のみが知っているといわれています。
 ところで、これらの例は、大企業の戦略であって、そもそも中小企業や地方企業においては、オープン・クローズ戦略を企てるための選択できる技術を所有していないといわれるかもしれません。しかし、コカコーラは、一つのコア技術を元に、クローズ戦略により世界企業に成長したとも云え、技術の数量に左右されるものではありません。一つの技術であってもオープン・クローズ戦略を企てることができます。
 このように、オープン・クローズ戦略は、平たく言えば、自社の所有する技術を、他社にも使わせるか又は自社のみで使うかの選択です。
 ただし、単純に、オープン戦略又はクローズ戦略を選択するというものでもありません。オープン戦略とクローズ戦略を巧みに組合わせる戦略も成り立ちます。例えば、何かの装置を開発した場合、その中心技術(コア技術)をクローズとする一方、周辺技術はオープンとする戦略です。
 一方、上の例で挙げた、トヨタ自動車(株)のオープン戦略は、燃料電池自動車の成長を加速させようとする戦略です。また、コカコーラカンパニーのクローズ戦略は、自社の成長を加速させようとする戦略です。
 実際にオープン・クローズ戦略を立てる際には、技術の内容、つまり、ノウハウに該当する技術であるか否か、特許として成立する可能性が高い技術であるか否かなどの慎重な判断を必要としますが、オープン・クローズ戦略は、巧みに使いこなせば、中小企業や地方企業にとっての加速的な成長手段になり得ることを示しています。

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専門家

下田茂(弁理士)

みらい国際特許事務所 長野オフィス

個人から企業及び大学発明まで幅広く対応し、高い特許登録率を維持しています。持前の知財センスに基づき、特許権や商標権の取得はもちろんのこと、依頼者に満足して頂けることを第一に、広く深くアドバイスします。

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