地方企業を活かす知財戦略…(1)
普通の人にとって「特許」は難しい?
「こんな簡単でも特許」として、このコラム欄でもときどきユニークな特許(発明)を紹介するようにしています。発明(特許)は誰にでも簡単にできるものです。
発明などには縁がないと思っている中小企業や地方企業の皆さんは、今回のコラムを見て発明意欲をより高めてほしいと思います。
今回、紹介する発明は、81才の元気なおばあちゃんが考えたアイデアです。この春、特許になりました。上の写真がそうです。つい最近、信濃毎日新聞,テレビ信州,長野朝日放送などでも紹介されたため、ご存じの方も多いかもしれません。
この発明は、一言でいうと、お年寄りが買物等で使う「手押車」と主に若い人が使う「キックボード」を組合わせた内容です。よく見かける手押車では、年寄りぽくっていやだ!というのが発想のきっかけのようです。
写真は「キックボード」に切換えた状態です。そのままキックボードとして使用できます。一方、この「キックボード」から簡単に「手押車」に切換えることができます。この場合、ハンドル(前輪)の角度を180°反転させた後、ハンドルの位置をロックします。また、バスケットを写真の位置から取り外し、キックボードの上にセット(固定)します。これで「キックボード」から「手押車」へに切換が完了です。その写真は載せませんでしたが、上の写真から容易にイメージできると思います。
さらに、このおばあちゃんの凄いところはアイデアだけに止まっていません。自分で機械屋(溶接屋)さんを探し、普通の自転車をカットし、写真のような現物を作ってしまいました。まさに「スーパー老人」の世界です。
このように、「特許」を取れる発明について難しく考える必要はありません。世の中に存在している誰でも知っている「物」と「物」を組合わせた比較的単純な発明でも、十分に特許になる可能性があります。つまり、特許制度は、産業を発展させるという目的を有しているため、対象となる発明は、内容が簡単であるとか複雑であるとかは関係しません。商品として生産できるか否かが重要になってきます。この点が同じ発明であっても大学の論文レベルの発明とは大きく異なります。
したがって、「特許」を手に入れることは、決して難しいことではありません。このような元気なおばあちゃんに倣い、産業の中心にいる中小企業や地方企業の皆さんも「特許」を武器にしながら産業を発展させるという本来の目的に向かって頑張ってほしいと思います。