地方企業を活かす知財戦略…(16)
小規模だからこそ知財戦略
前回、コスト「戦争」に巻き込まれないためにも、実質的な独立型企業に転換し、知財を武器にすることの重要性について書きました。製造業における独立型企業とは、他社にはないオリジナリティのある技術(知財)を所有し、技術力において優位に立てる企業を意味し、開発型企業と言い換えることができます。
ところで、中小企業が多い地方企業が技術面で自立し、知財を活用するといっても、大企業が圧倒的に有利となるビジネスシーンでの戦いはどう対処すればよいのでしょうか。
映画の中では、大群の敵を小人数の戦士が打ち負かすシーンがよく出てきます。この場合、小人数の戦士がいくら強いからといっても、大群に対して正面から戦略のないまま戦いに臨んでも現実的には打ち負かすことは難しいでしょう。したがって、小人数の戦士側には必ずといってよいほど大群に打ち勝つための秘策、つまり、戦略が潜んでいます。
ビジネスでも同じです。特許等(知的財産権)は、法律上与えられる平等な権利です。大企業の所有する特許等であっても中小企業の所有する特許等であっても権利としての強さ(効力)は全く同じです。つまり、同じ銃(特許等)を持つことになります。ところが、現実には、一つの商品に対して、大企業は、何十丁,何百丁もの銃で守ることができますが、中小企業は数丁程度の銃になってしまいます。これでは、正面からまともに戦ってもビジネス上の成功には覚束きません。したがって、大企業以上の、「中小企業だからこそ」の知財戦略が必要になります。
さて、中小企業にとっての知財戦略とは具体的に何を意味するのでしょうか。基本的には、知財を中心に据え、その戦略的な活用を意味しますが、現実には個々の企業が置かれる状況は異なり、個々の企業毎に個別に戦略を立てる必要があります。このため、原則的には、我々弁理士による知財コンサルティングを活用しつつ戦略を練ることが望ましいと思います。
一方、特許等を所有していない中小企業も少なくありません。したがって、所有するだけでも大きな前進につながると思います。この際、特許等は「コスト」の問題ではなく「投資」の問題として捕らえ、その積極的活用に経営戦略上重要な価値があると認識することが重要です。
下のグラフは、中小企業庁発行の中小企業白書2009年度版からの一部引用です。特許の保有企業と非保有企業の従業員一人当たりの営業利益を示しています。
特許の保有企業の方が業績を大きく延ばしています。もし、特許を保有しているにも拘わらず業績に結びついていないとすれば、十分な戦略がとられていないか、或いは重要な何かを見落としている、といったことがあるかもしれません。