特許侵害企業への立入調査
前回の東芝技術流出事件に続いてのニュースの話題です。今、STAP細胞論文問題に日本中(世界中)が注目しています。この論文問題も根底には知的財産に対する認識の度合が大きく関係していると思っています。つまり、同じ価値を有するものであっても目に見える場合と目に見えない場合では、感じ方(認識)に大きな違いを生じます。
例えば、日本に一台しかない未来のスーパーカーが盗まれる事件が発生すれば、大きなニュースとして扱われ、一般の人のコメントも、「大変な事件が起きてしまった。プロの窃盗集団の仕業ではないか。」と興奮ぎみに話すかもしれません。これに対して、そのスーパーカーに関する設計図(データ)が漏洩した事件(技術流出事件)が発生しても同様に扱われるでしょうか? 或いは、この時点でニュースとして扱われないかもしれません。仮に、ニュースになっても、あまりピンと来ないため、「早く解明して解決してほしい。」と他人事のコメントで終わるかもしれません。前者は一台、後者は何万台のスーパーカーが盗まれたに等しいにもかかわらずです。
したがって、今回の論文問題のように、目に見えないからといって正しい認識を怠ると、とんでもない大きな問題に発展します。文章や写真は実際に印刷等すれば、物となりますが、基本的には、データ化が可能なため、目に見えない知財としての位置付けになります。
このため、知財であっても、物と同じ又はそれ以上の「価値」を有していること、他人の知財はその他人の財産であり、勝手に流用することは窃盗に等しいこと、等の正しい認識が必要になります。一方、目に見えないゆえに、簡単にコピペし、流用や加工ができるとともに、わからなければよいだろうという心理が働きやすいのも事実です。結局、知財に対しては、その人の認識というか本質(性格)が如実に現われやすい側面があります。
今回の論文問題は、目に見えないもの、つまり、著作物等の知財に対する認識の甘さ(低さ)が極端に現れた例でもあり、この点を大きな問題の一つとして認識すべきと思っています。しかし、現実には、なんとなくワイドショーレベルの雰囲気もあり、中には、擁護する発言もあるなど、“え~!”と感じる部分も少なくありません。
STAP細胞の存在有無については、今後の検証を待つにしても、今回の論文問題は、目に見えないものに対する認識の低さ或いはいい加減さを世界中に発信したことになり、もし、このような本質的な問題が中途半端に扱われるとしたら、日本の信用に大きなダメージを与えてしまうのではないかと危惧しています。