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東芝技術流出事件

下田茂

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テーマ:ニュース

 3月13日付のニュース報道によれば、「サンディスク」(米国の半導体メーカ)の日本法人元社員が、東芝の所有する「絶縁膜関連のデータ」を不正に持ち出し、韓国企業の半導体メーカ「SKハイニックス」に提供した疑いで警視庁に逮捕されました。容疑は不正競争防止法違反です。
 いわゆる「技術流出」問題が表面化した形です。外国への技術流出問題は、言い換えれば、人材流出問題及びノウハウ流出問題とも言え、不正に行われた場合、その証拠を掴むのは容易ではありません。したがって、水面下では、不正或いは不正すれすれとなる技術流出が相当量発生していると思われ、今回の発覚は、稀なケースと言ってよいかもしれません。今の時代、日本が長い年月をかけ、お金と人的労力を投資して、生み出した貴重な「成果物」が、Eメール等により一瞬に漏れてしまう大変な時代です。
 特に、技術流出問題は病気と同じであり、表に症状として現れるのは、潜伏期間を置いての話であり、症状が出てきたときには、既に手遅れになり、取り返しのつかないことになっている可能性も十分に考えられます。この場合、打てる手は、痛み止め(損害賠償請求)程度であり、対処法は限られます。
 このため、企業秘密となる機密データ(営業秘密)の不正な持ち出しは、物を盗むよりも安易という軽率な判断で行うのではなく、そのことは会社のみならず、日本の国益、更には日本国民全体の不利益になる重大な犯罪であることを十分に認識すべきでしょう。最近のニュースにもあったSTAP細胞論文問題も、もし報道の内容が事実ということであれば、モラルの問題は勿論、その根っこには著作権軽視、つまり、知財を軽視し、正しく認識していないという同様の問題が存在していると思います。
 「知的財産」は、目に見えない故に軽視しがちとなりますが、問題は想像以上に広がる可能性があり、その重要性は物以上にはるかに大きくなります。「不正」に持ち出されるとすれば、退職時に、社員との間で行う「秘密保持契約」等は、一定の抑止効果はあるとしても、決定的な防止策にはなりません。したがって、国は罰則を強化する方向に動いていますが、法律で抑止するには限界があり、企業は、「予防」的観点からの非法律的対策、つまり、法的のみならず物理的及び人的な多方面からの対策も重要になり、特に経営者、更には国も含め、様々な角度から、いち早く情報を共有するとともに、国外への不正な技術流出を未然に「予防」する観点から社員の待遇を高めたり不満を解消するなど、の対策を講じることも必要かと思われます。

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下田茂(弁理士)

みらい国際特許事務所 長野オフィス

個人から企業及び大学発明まで幅広く対応し、高い特許登録率を維持しています。持前の知財センスに基づき、特許権や商標権の取得はもちろんのこと、依頼者に満足して頂けることを第一に、広く深くアドバイスします。

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