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労働時間の自己申告方式の落とし穴

2020年11月15日 公開 / 2020年11月17日更新

テーマ:労務管理

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 労務管理過重労働社労士 相談

過重労働撲滅特別対策班(通称:「かとく」)とは?


パトカー

2015年4月に東京と大阪の労働局に
過重労働撲滅特別特別対策班
(以下「かとく」という)が設けられ
(翌年には本省に設置)されたことは
記憶に新しいと思います。


これまでの違法残業の取り締まりに
よって7企業が書類送検されています。


通常、労働基準監督署で扱う司法事件は、
労働基準監督官が担当する例が多い。

しかし、「かとく」は経験豊富かつ
優秀な人材で構成されチームであり、
その結束と協力によって迅速かつ的確な
捜査が行われている。


あらゆる行政資源に基づき広域的に
特に長時間労働について情報収集を
行っている。

また、司法事件に着手する場合は、
検察庁と連携して多くの人員を動員
して、強制捜査やデータ解析を行う
など、高度で大規模な捜査を実施
する。

捜査手法の要「デジタル・フォレンジック」とは?


デジタル解析


中でも、デジタル・フォレンジックを
活用した捜査が注目される。


この聞き慣れないデジタル・フォレン
ジックとは、電子機器に蓄積された
デジタルデータを取得・調査・解析
・証拠化する手法を言う。


実際、長時間労働が疑われる場合、
長時間労働の実態を隠すために、
記録改ざんや、実態通り付けない
ように従業員に仕向けるといった
悪質な事例が見受けられる。

このような場合、「かとく」としても
実際の勤務実態を把握する必要がある。
ただ、通常の調査や捜査手法では限界
があるのも事実だ


そこで、対象企業からパソコンや
スマートフォンを押収し、専門機器で
これらに蓄積されたデートを取得し、
必要があれば復元も行い、調査・解析
して、従業員の実際の稼働状況を証拠
化する。


この例からも、今後は、勤務記録のみ
ならず、電子機器に蓄積されたデジタル
データも対象に調査・捜査が行われる
ことを前提に時間管理体制を構築する
必要に迫られるということだ。

中小企業は、「かとく」の捜査対象にはならないのか!?


家宅捜査

冒頭で、7つの送検事例があったと
いったが、それらは比較的大規模で、
全国的に事業展開している事業が多い。


だからといって、中小企業は「かとく」
の捜査対象にならないとは言い切れない。

特に、過労死等を発生させた企業に
対しては厳格に対処する方針と厚労省は
掲げている。


ということは、たとえ全国的に複数の
事業所を有していなくても、過労死等で
社会問題化した事例の場合、「かとく」
が労基署を指揮して関与することは
想像に難くない。


それは、仮に三六協定上、形式的には
違反が生じていなくても、従業員の告発
や過労死等の労災認定を端緒として、
司法事件の対象となり得る可能性も十分に
考えられる。


企業において、法律上長時間労働規制を
強く推し進めれば推し進めるほど、
労働時間の過少申告が生じやすい可能性
を否定できない。

労働時間の自己申告方式には要注意


証拠

とくに、勤怠管理として自己申告方式を
採用している企業には特に注意を促したい。

なぜなら、この方式では、各々の従業員の
判断に任されることによって、労働時間の
申告がなされるため、従業員間における
バラツキが発生しがちだ。

ましてや、複数の事業拠点がある場合、
その数に比例して、統一的な管理は
決して容易ではない。

結果として、複数の事業拠点における
36協定違反を招いてしまいかねない。



「かとく」の調査・捜査対象とされれば、
デジタル・フォレンジックによる高度で
大規模な捜査が行われる。

それを踏まえれば、各事業拠点から報告
される勤怠記録の確認だけに留まらず、
実態において、長時間労働や36協定
違反が生じていないか確認・検証する
仕組みの構築することが急務だ。


いずれにせよ、リスクが顕在化する前の
労働時間管理体制の整備が重要なことは
言うまでもない。

【参考】:労働新聞 送検・監督のリスク管理
第3280号

この記事を書いたプロ

内布誠

会社中をワクワクさせる人材育成(研修)のプロ

内布誠(ウチヌノ人事戦略事務所)

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