組織にAIを根付かせる3つの仕組み|旗振り役・共有の場・人事評価で社内に浸透させる
仮に、社員を集めてAIの研修を開いたとします。その日は全員が手を動かし、「これなら使えそう」という声も出ました。ところが翌週、それぞれが普段の仕事に戻ると、研修で使ったAIを、誰も開いていません。
研修の中身が悪かったとは限りません。覚えたことを自分の仕事で試さないまま日がたつと、元のやり方に戻りやすいのだと思います。
結論から書きます。AI研修の効果を社内に残すなら、研修のあとの1週間は、新しいことを足すより、研修で覚えたことを自分の仕事で1回使ってもらうことに絞ります。そのために、研修の終わりと、1週間後に、短い時間を取ります。研修がもう終わっている会社でも、明日の朝に10分取れば、下の1から同じ順で始められます。外の講座に1人で行った人なら、戻った翌日に「明日やる1つ」を書き、1週間後に自分で振り返ります。
1. 研修の最後に「明日やる1つ」を書いてもらう
研修の最後の10分で、一人ずつ、自分の仕事の中から、明日AIに頼む仕事を1つ書いてもらいます。「何かに使う」ではなく、「明日の朝いちばんに、今日の打ち合わせのメモを3行にまとめてもらう」のように、いつ、何を頼むかまで書きます。
選ぶときの分かれ目は、間違えても困らない仕事かどうかです。お客様に出す文や金額の計算からではなく、自分だけが読むメモや、人が直してから使う下書きから始めます。お客様の名前など、AIに入れてはいけないと会社で決めたものは、メモから外してから頼みます。
書く先は、共有のフォルダに置いた1つのファイルにして、一人1行ずつ書き足してもらいます。
2. その場で、ふだんのパソコンやスマホからAIに1回頼んでみる
会場のパソコンや、研修のために用意したアカウントで練習すると、翌日、自分の席では開けないことがあります。ログインのパスワードが分からない、会社のパソコンでは使えない設定になっている、といった理由です。
研修の最後に、ふだん仕事で使うパソコンかスマホで、会社が使ってよいと決めたAIを開き、いま書いた「1つ」を、明日の練習として1回だけ頼んでみるところまでやっておきます。開けなかった人には、その場で、誰に聞けば使えるようになるかを伝えます。
研修でAIに打ち込んだ頼みの文(たとえば「次のメモを3行にまとめてください」)も、共有のフォルダのファイルに置いておきます。翌日、何も書かれていない入力欄の前で手が止まったら、その文を写して、自分の仕事に合わせて直せば始められます。
3. 1週間後に、使えなかった理由を聞く
研修から1週間たったら、朝礼のあとなどに短い時間を取り、書いた「1つ」を使えたかどうかを、一人ずつ一言ずつ聞きます。聞くのは、研修を開いた人か、社内でAIの質問を受ける人です。
大事なのは、使えなかった人に理由を聞くことです。時間がなかったのか、頼み方が分からなかったのか、開けなかったのか。理由によって、次にやることが変わります。時間がなかったなら、試す時間を予定に入れます。頼み方が分からなかったなら、その人の仕事で、もう一度一緒に頼んでみます。開けなかったなら、その場で一緒に開いて、ログインまで済ませます。
使えなかったことは責めません。責められると、次からは「使えました」としか言わなくなり、どこでつまずいたのかが見えなくなります。
4. 合わなかった仕事は、別の仕事に替える
1週間使ってみて、「自分で書いたほうが早かった」という仕事もあると思います。そのときは、1週間後に話を聞くその場で、「1つ」を別の仕事に書き換えてもらいます。合わない仕事にまでAIを使う必要はありません。合わなかったことも、ファイルの同じ行に書き足しておきます。
研修のあとも使い続けてもらうには、社内でAIの旗振り役を決める、使ってうまくいったことと失敗したことを話す場を作って記録に残す、周りの仕事を楽にしたことを人事評価に入れる(使った回数は数えない)、の3つの仕組みが役に立ちます。この1週間に書いた「1つ」と、使えたかどうかは、そのまま最初の記録として共有のフォルダに残しておけます。詳しくは以前のコラム「組織にAIを根付かせる3つの仕組み|旗振り役・共有の場・人事評価で社内に浸透させる」に書きました。
まとめ
- 研修の最後に、自分の仕事で明日頼む1つを書いてもらう
- その場で、ふだんのパソコンやスマホからAIに1回頼んでみる
- 1週間後に使えなかった理由を聞き、合わなかった仕事は別の仕事に替える
研修の日に「使えそう」と言った人が、翌週も自分の仕事で使っているか。研修の効果は、そこで見ればよいと思います。


