自転車事故における未成年者の責任,親の責任(2)~「主に刑事責任について」~
自転車事故を起こし,こちら側に非がある場合は,被害を受けた相手に対し,損害賠償義務を負う。
これを「民事(上の)責任」といい,「刑事責任」とは区別されるということは前回までに述べたとおりです。
今回は,未成年者が事故を起こした場合に誰が責任を負うのかにつき,説明します。
1 12歳前後までの未成年者(おおむね小学生まで)の場合
原則として,未成年者は責任を負わず,未成年者に代わって親等の監督義務者が責任を負います。
なお,監督義務者の責任を規定した民放714条では,「監督義務者がその職務を怠らなかったとき,又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」は,監督義務者は責任を負わないとされており,例外的に,監督義務者に責任がない場合はあります。
ただ,自転車事故の場合は,親等の監督義務者は,子どもに対し,自転車の運転や取り扱いにつき,安全運転を指導する義務があることは明らかで,事故の発生につき,子どもに非が認められるような場合に,監督義務者が「義務を怠らなかった」と認定されることは,ほぼ皆無と言ってよいと思います。
結論を簡潔にいうと,小学生までの子どもが自転車事故を起こした場合は,親が責任を負い,莫大な賠償義務を親が負う可能性があるということです。
2 13歳から19歳の未成年者の場合
原則として,未成年者本人が責任を負います。
ですので,未成年者に「代わって」,親等の監督義務者が責任を負うことはありません。
なぜなら,「代わって」ということは,行為者本人に責任がないことが前提ですから,行為者本人に責任がある場合には,「代わって」ということが発生しえないのです。
ただ,この場合でも,親が責任を負う場合はあります。
つまり,未成年者の子どもに「代わって」ではなく,「親自身の責任」が認められるケースです。
具体的に言うと,未成年者の子どもが,事故を起こす前に,交通ルールを無視するような乱暴な運転を繰り返し,さらに,前に事故を何度も起こしたりしていた。
にもかかわらず,親は,子どもに対し,適切な指導をしたり,あるいは,運転を控えるような措置をとらず,その結果,次の事故が発生したというような場合です。
このような場合は,親本人が負う注意義務(正確てばありませんが,簡単に言うと,子どもが第三者に迷惑をかけないように指導する義務)を果たしていないということで,親自身の責任として,被害者に民事上の責任を負う場合はあります。
ただ,この事例は,極めて極限的な事例であり,自転車事故で,親の責任が独自に認められるケースはほとんどないと言ってよいと思います。
一方で,例えば,原付バイクで未成年者が事故を起こした場合等で,未成年者が無免許運転や違反運転を繰り返していた場合などは,親に上記のような独自の責任が発生するケースはあると思います。
ここまでで,簡単に結論を言うと,中学生以上になると親ではなく,子ども(未成年者)本人の責任となる。
この場合は,学生の身分である子どもから賠償を受けることはかなり難しいケースもあり得るということです。
3 自転車事故でも,弁護士に相談を
以上のように,自転車事故と言っても,大きな問題が発生することは多数あります。
ここまで,できるだけ簡明に説明したつもりですが,具体的なケースに当てはめてみないとわからないことが多数あると思います。
ここまで加害者の責任につき,説明しましたが,これらは,被害者として,加害者に請求する時にも参考になると思って説明しています。
自転車事故が発生した場合,被害者の方も,「自転車事故だから」というふうに簡単に考えられることなく,弁護士に一度,ご相談されることをお勧めします。