交通事故は慰謝料の増額より,後遺障害の認定の上積みが弁護士の力の見せどころ
自転車の事故に限らず,未成年者が加害者となった場合,誰か責任を負うのかが問題となります。
それは事案により,結論が異なる場合がありますので,今回は非常に身近である自転車事故につき,説明します。
自転車ですから,小さい方でしたら,幼稚園程度の子どもですから,乗られる場合はあると思います。
そして,小学生でしたら,ほとんどの方が,自分専用の自転車を所有し,一人で出かけたりする場合もあるでしょう。
小学生はもちろん,幼稚園の子どもであっても,高齢者等にぶつかれば怪我をさせることもあります。
また,物にぶつかったりして,物を壊してしまうこともありえます。
原則として,行為を行った本人が責任を負うのは当然であることは皆さんご存知だと思います。
一方で,「責任能力」という概念があり,行為者であっても「責任能力がない」と判断された場合は,「責任がない」とされる場合があり,その場合は,「行為者に代わり,指導監督する義務を負う者が責任を負う」可能性があることも,ある程度,ご存知の方も多いと思います。
そして,「責任能力がない」場合の一例が「未成年者」であり,「未成年者に責任がない場合,監督義務を負うのは多くの場合,親である」と漠然と理解されていると思います。
この認識は,間違いではないのですが,正確でもありません。
まず,「責任能力がない」という場合の「責任」には,「国から処罰を受ける可能性がある」という意味での「責任」(「刑事責任」といいます)と,「被害者等に対し,損害賠償支払義務を負う」という意味での「責任」(「民事責任」)があり,両者は区別して考えないといけません。
そして,刑事責任の場合は,「行為者のみが責任を負う」ということがより徹底されており,未成年者等本人に責任能力がないとされるケースがあったとしても,監督義務者(親等)が責任を負うことは,原則としてありません。
一方,民事責任の場合は,逆に,「責任能力がない者が他人に損害を与えた場合は,監督義務者(親等)が原則として,その責任を負う」ということになります。
つまり,刑事と民事では,原則が逆転しています。
この点が正確に理解されていないことも原因となっているのでしょうか,本来なら,刑事責任の全くない親等が,刑事的にも罪を犯したような取り扱いがされているように感じるケースがよくあります。
この点は,区別して判断することが必要ということはひとつ理解しておかれればよいと思います。
今回はここで終了し,次回は,自転車事故における責任につき,説明します。